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設計事務所つれづれ~もう新築の時代ではない~

ご無沙汰しています。DesignLab.Merzです。

世界的なコロナ禍による、社会の大きな変化に皆さんは戸惑っているかもしれません。私も、設計事務所を経営しながら「これからの、自分自身の役割」を考えながら日々過ごしています。

明らかに建築業界も流れが変わってきています。

今日は、私の思う「これからの建築」について書いてみようと思います。

1.社会における建築の役割とは

気付けば私は20年以上、建築業界に携わってきました。

最初は現場監督に始まり、20歳を超えたあたりで設計事務所に飛び込み、ただただ自分の自身のみでここまでやってきました。

設計事務所に飛び込んだ時期、ちょうど阪神大震災復興の最中の神戸でした。経済も影響があり、多くの銀行が統合され、街も大きく変わりました。

今回の世界的な新型コロナウイルスによる影響は、ほぼ全業種に想像を超える影響を及ぼしています。これからが経済に関しては大きな影響が出てくるでしょう。建築については、社会的にも遅れて経済不況はやってきます。

建築は、どのような形態でも「大きな費用がかかる」業種です。

特に住宅業界は、快適性と建築に関する作業効率化を推し進めてきた結果、工業製品化が著しく、製品としての品質は向上したものの、それはあくまで「新築」することに対しての効率化であり、住宅自体が「販売商品」となってしまった結果でもあります。

自動車でも家電でも、購入し使用していくと壊れます。その都度、メンテナンスや買い替えを行います。壊れたままで使用できるはずもなく、どちらも生活と生命に関わるから、費用をかけて修理したり買い替えたりします。

住宅も同様です。自動車や家電製品と変わりなく、壊れます。

外壁の塗装や屋根、防水やその他使用されている材料は必ず劣化します。

しかし、自動車や家電製品のように一生のうち何度も交換はできません。

建築業界も不況の波は来ます。資材が売れなくなった場合、製造会社や商社はどうするでしょう。そうです。値上げを行います。

実際に、7月あたりから建築資材の単価上昇は起こっており、今後も今までの単価では施工できない状態が起こります。当然ながら、販売住宅の価格は上がります。注文建築でも同じ事態になります。

そういった世の中の流れの中、すでに住宅を所持されている方に重くのしかかってくるのが「メンテナンス」です。建築では、新築より存在する建物をメンテナンスするほうが技術力を必要とし、難しい工事が発生する場合が多いです。

なぜか?簡単な話です。新築は「まだ何もない土地に順序良く新しいものを作っていく」からです。すでにある住宅のメンテナンスが難しくなるのは「一つの修繕を行うために、周囲の一部解体や補修工事も含み、まして見えない部分を予測する知識と技術が必要となる」からです。

社会における建築の役割は、想像以上に重く関係します。しかし、その点を気にしている人が少ないことを危惧しています。

皆さんが耳にしたことがある「空き家」が生まれてきている原因は、商品化された住宅が「いずれ売れるだろう」という思惑から外れ、想像していた手放し方ができなくなった結果ですから。

2.なぜ「無理をしてでもローンを組んで新築を目指す」のか?

現在の社会状況でも、のんきに住宅メーカーはこぞって販売促進のためのCMを出しています。なんとも悲しい現状です。

友人からもよく相談を受けますが「賃貸マンションで家賃を支払っているより、住宅ローンを組んでいる方が安いから、購入した方がお得だろ?」という意見が圧倒的に大きく、この国のお金と建築の学習を怠った結果だと毎回感じます。

ローン(=融資)を受けるということは、銀行にしてみれば、借主に対する投資です。お金をくれるわけでなく、その人の成長を考え、投資を行うわけです。銀行も企業ですから、投資した人が成長していくにつれ「金利」として貸したお金と共に返済を受けていきます。

企業や事業主は「経営」を行うことにより利益を増やします。そして利子を含め返済を行います。融資されたお金を元に、お金を増やす「投資」を繰り返して経済を回します。

では住宅ローンはどうでしょう?

同じく銀行からすると「投資」です。ただ、個人ですので、経営を行っている人だけでなく、大半の方は「従業員」であり、サラリー(=給与)をもらって生活していく中で、住宅ローンの支払いを行います。しかし、銀行からすると投資であり、投資に対しては先ほどと同様に「成長」の予測を行い融資額が決定します。

個人の成長とは何でしょうか?勤めている企業の成長と共に、その方の役職も成長し、給与が増えていくことを指します。残念なことに住宅ローンが組めない方は、勤めている会社の問題や勤務歴(転職したばかりなど)が影響し、きつい言い方ですが銀行側(投資側)としては「成長の見込めない人にはお金を融資=投資できない」ことになります。

通常の企業にお勤めの方は、ほぼ問題なく融資が受けられるでしょう。しかし投資する側としては保証を持っておきたい。それが連帯保証であったり、土地などの担保です。何かあった場合(=投資額を回収できなくなった場合)の保証として担保とした土地などを競売などにかけ、少しでも負債の回収とするためです。

見かけだけの「家賃とローン額の比較」は避けてください。建築を設計監理しているものからすると、人はなぜに「35年ものローンを組んで10~15年程度しか住めない家を購入するんだろう?」と思う建物はたくさんあります。

少なくとも、10~15年後には大規模な修繕工事が待っているわけですから、そのためにも最初の「資金計画」は最低限行っておく必要があります。しかし、ほとんどの方はその計画を怠っています。この根拠として、定期的に発表される「預貯金額調査」の結果に出ています。若い方程貯蓄額はほとんどなく、しかし、若い方の住宅取得率が高かったりします。

経済が順調に成長している中であれば、この問題は関係ないかもしれません。いざとなれば不動産=住宅を売却してしまえばよいわけですから。不動産も経済成長に応じて価値は上がります。

しかし、今の状況やこれからの世界的な社会経済を考えますと「売ってしまえばよい」という考えは通用しなくなります。所有している限り、維持し続けなければなりません。

自分の世代だけで解決できますか?お子さんたちにその負債を背負わせますか?売却したくてもできない社会(空き家がすでにあふれている社会で)になっていることに気づいていますか?

3.目先の費用負担を甘く見ないで

これまでに書いてきたことはすでに起こっています。身の回りでこのような話がないだけに気づけないだけで、私がいます建築業界では、すでに実例として起こっている話です。

これまでの社会は「何か起こってから専門家に相談する」ことでもなんとか対処はできました。

これからの社会は「何か起こる前に専門家に相談する」ことが重要です。

私たち設計事務所は、建築士という国家資格の元に運営しています。建築の法律の専門家であり、建築する技術者であり、資金計画など必要な費用の試算などを行うことが職務です。

当然ながら相談依頼には費用が発生します。無料相談程怖いものはありませんから(笑)必要とされる情報の整理と、想像する住まいなど建築物を法律も照らし合わせ実現化していく建築の専門家です。

ほとんどの方は、私たちのような専門家に費用を支払うことはためらいます。仕方ありません。まだ先の「予測の世界」に対し費用を投資することはもったいないと感じます。

がしかし、現在の社会はその部分を怠ってきたために取り返しのつかない状況が生まれつつあります。住まいだけでなく、資金計画できていないがためにお子さんのことも考えられなくなり、お子さんの生涯費用を考えると、必然と少子化に向かう世の中です。今後は、さらに加速していくでしょう。

次の世界を引き継ぐ子供たちがいないことは、国の経済を考えても危機的な状況だと考えます。私も子供が3人います。すでに子供たちが生きていく社会の厳しさを説明しています。

お金の話もしています。お金は投資していくものであり、すべては信用による取引であることは常々話をしています。ほとんどの方は、ローンなどで伝えられる「金額の額面」に浮足立ち、目の前に見たこともない多額の権利を自分のものになったと勘違いして、その先に失敗をします。繰り返しますが、住宅ローンも「信用による成長予測に対する投資」ということを忘れないでください。

4.まとめ

これから社会が想像できない時代と変わります。企業は当然ながら、自社存続のためにありとあらゆる手段で、世間の皆さんから資金を集めようとします。需要と供給のバランスが崩れていく中で、コストダウンは必ず起こります。命を預けるために、生涯をかけて資金準備し、投資する住まいは新築でないといけないのでしょうか?

私は設計事務所ながら「今は新築には手を出さない方がよい」と考えます。

設計事務所ですから、新築が無くなれば会社がつぶれる??と思う方もおられるかと思いますが、そうではありません。実際に、業務での新築数は圧倒的に減少していますが、建築の専門家として経営しているため、新築以外のご相談が急増していることは確かな事実です。

あくまで私的な見解での内容です。新築を目指す方がおられましたら全力で応援しますし、そうでない方に対しても「命を守る場所」を考えることを行っていきます。

皆さんで、これからの新しい社会を作り上げていきましょう。

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