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天然とはどう違う?「養殖サバ」を深読みサバしてみる。 【読みサバ】9尾目

 周囲を海で囲まれた島国・ニッポン。近海でさまざまなおいしい魚が獲れ、われわれ魚好きは日々その恩恵に預かっているワケですが、実は、天然魚の漁獲のみならず養殖も各地で盛んに行われています。
 たとえば、高級魚だったり天然ものが激減していたりするフグや鰻などを僕でもたまに食べられるのは養殖のおかげ。近年では、近畿大学の養殖マグロも話題になりましたね。変わったところでは珍味と言われる「フジツボ」も、養殖フジツボというのがあるというから驚きです。
 われらがサバも、水揚量が多い魚種であるものの養殖もされており、各地でブランド化も進められているのをご存知ですか? そこには、サバならではの事情というものもあります。

 そう、サバ喰いには避けて通れない「アニー」こと寄生虫アニサキスの問題です。
 実は、現在ブランド化されている養殖サバは、刺身など生食を“売り”にしたサバがとても多いのです。
 元々サバはアニサキスによる食中毒を避けるべく、太平洋側を中心に生食はされてきませんでした。しかし、アニサキスの種類が異なるため食中毒を起こしにくいとされる日本海側をはじめ九州、四国の一部では、天然サバの生食は一般的に行われてきました。
 必然的に、養殖ブランドサバも生食圏内の九州に多い傾向があります。それが今では東京をはじめとした太平洋側の消費地にも出荷され、サバの刺身を食べられる飲食店も少しずつ増えている印象です。

 干物ラバーのサバやしはかつて「“魚といえば刺身”なんてタダの固定観念さ。生食じゃなくとも旨い食べ方はたくさんあるぜっ」と思っていました。しかし、サバの刺身って旨いんですよねぇ(と目覚めた九州サバ旅@松浦の話はまた別の機会に)。今では立派な?生サバLover、養殖サバ万歳!です。

 いくつか養殖ブランドサバをご紹介します。

・長崎県松浦市、佐世保市「長崎ハーブ鯖」
・佐賀県唐津市「唐津Qサバ」
・長崎県雲仙市「雲仙ニボサバ」
・宮崎県延岡市北浦町「ひむか本サバ」
・鹿児島県長島町「むじょかさば」
・福井県小浜市「小浜よっぱらいサバ」
・兵庫県姫路市「ぼうぜ鯖」
・愛媛県西予市「柑橘サバ」
・鳥取県岩美町「お嬢サバ」、2024年にその妹分として「さばみちゃん」も登場!

などなど、上記以外にも色々あります。

 こうして並べると、天然のブランドサバに比べてネーミングがユニークですよね。天然サバにもブランドサバとして有名なものが数多くありますが、それに負けじと養殖サバもブランドイメージの確立を強く意識しているのがわかります。
 また、ご当地の名物とのコラボや餌にこだわって付加価値を上げたもの(愛媛県西予市の「柑橘サバ」、長崎県松浦市・佐世保市の「長崎ハーブ鯖」など)、いずれも産地や開発に関わった方々のこだわりが感じられます。(どんな味なんだろう?)と全てを食べ比べてみたくなりませんか?なりますよねっ?!
 ここでは長くなっちゃうので個々には触れませんが、サバやしが食べたり産地の方と関わったりした養殖ブランドサバについては、今後このnoteで順次熱く語っていこう(笑)と思っています。

 さて、ここでサバの養殖の手法についてちょっとだけ触れておきます。 ざっくり分けると、種苗と呼ばれる小さな天然サバを生簀(いけす)で蓄養する方法と、人工孵化させ種苗を得る完全養殖と呼ばれる方法があります。やはり完全養殖はハードルが高く、今のところ出荷ベースで実現しているのは「唐津Qサバ」のみとなっています。

 と、ここまで主に養殖サバのいいところを紹介してきましたが、悲しいお知らせもあるんですよ。
「ちょっとお高いんだよね…」という…。
 養殖には技術開発にかかる莫大な費用や施設・設備の初期投資に加え、種苗代、電気代や人件費などのランニングコストといった金額までがかかってくるので、一朝一夕にお手頃価格のサバが出来上がって流通しまくる、というわけにはいかないんでしょうね。

 それでも、養殖サバは絶対に必要だし、これからも進化し続けてほしい!とサバやしは願っています。
 近年、地球温暖化による海水温の上昇などにより、日本の近海でも天然の魚の漁獲量にさまざまな変化が現れているそうです。
 昨年の秋、サンマの漁獲量が過去最低になったニュースを覚えているでしょうか。実は昨年は天然サバの漁獲量も同じく激減しています。今後の回復が期待されていますが…。今でも市場の半分を占めるのはノルウェーからの輸入サバなので、すぐに「サバが食べられない…」という事態にはならないにしても、昨今の世界情勢ではそれも希望的観測にすぎませんよね…。
 なので、僕も気に入った養殖ブランドサバがあれば財布のヒモを緩めて微力ながら応援し、今後の技術開発に期待したいと思っています。

 いかがでしたか? 
 サバに限らず魚というと天然がありがたがられるイメージがまだまだあるかもしれませんが、養殖も天然に引けを取らず旨い。ということをおわかりいただけたら嬉しいです。皆さん、魚自慢の居酒屋などで「養殖ブランドサバ」を見つけたら、ぜひ食べてみてください!

 因みに㈳鯖協会では、「鯖サミット」や「鯖ナイト」などで、複数の養殖ブランドサバの食べ比べと題した限定イベントも実施しています。次回開催が決まったらこのnoteでも告知しますので、お楽しみに!

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