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“ヤンヤン 夏の想い出” エドワード・ヤン

"Strange. Why are we afraid of the first time? 
Every day in life is a first time. Every morning is new.
We never live the same day twice.
We're never afraid of getting up every morning.
Why?"
 
『不思議です。なぜ私たちは”初めて”を恐れるのか。
だって人生は毎日が”初めて”です。毎朝が新しい。
同じ日が来ることは二度とないんです。
それなのに、私たちは毎朝恐れることなく布団から出て一日を始める。
なぜ?』

−子供の頃、僕の家はとても貧乏でした
でも、音楽が教えてくれたんです
人生の素晴らしさを 
 
−うちの父は音楽好きでしたが、僕は大嫌いでした

−ほう、それで?

−あれは15歳の時だった 
恋をしたんです
そしたら、突然音楽が大好きになった
彼女は去ったけど、音楽は今でも残っている

−駄目じゃないか、あんなふうに人をじろじろ見るもんじゃない
相手に怒られたらどうするんだ
 
−なんで悲しんでるのか、知りたかったんだ
でも、後ろからじゃ分からなかったから 
ねぇパパ、自分に見えてるものが相手には見えてないとしたら、どうやってそれをお互いに教え合うの?
 
−難しいが、いい質問だな
だから、カメラがあるんだろうな
写真に撮ってあげたらどうだ?
 
−ねぇパパ、”本当のことの半分だけしか知らない”ってこと、あるよね?
 
−どういうこと?
 
−前は見ることができても、後ろを見ることはできないでしょ
それじゃ、自分では本当の姿の半分しか分からないってことだよね?

−嬉しいこともあれば、悲しいこともあるのが人生だからね
映画というのは、人生を写す鏡なんだ
 
−別に映画を見なくても、人生を味わいたいなら自分の人生を好きに生きれば十分よ
 
−叔父さんがこう言ってた
『映画が発明されて、ひとは3倍の人生を生きられるようになった』
 
−どういうこと?
 
−つまり映画によって、普通の人生にさらに2倍の経験がプラスされるんだ
たとえば殺人、実際に人を殺した経験はなくても、殺人がどんなものかは分かってるだろ?それは映画によって擬似体験したからさ
 
−殺人なんて、そんな恐ろしい経験する必要ないわ
だって、優しくすれば優しさは返ってくる
人を殺す理由なんてないはずよ
 
−殺人というのはただの一例で、ほかにもある
たとえば
『どんな雲も、どんな木も、みな美しい。人間も同じはずだ』
この言葉に感動して、物の見方が変わったんだ
 
−あなたが言うと、なんだか悲しい言葉に聞こえる
もっと明るい言葉はないの?

おばあちゃん、なぜ現実はこんなにも夢と違うの?
目が覚めてから見た世界は、前と変わらなかった?
私は、ずっと目を閉じていたい
夢の中で見る世界は、美しいから

あそこは、うちに居るときと大して変わらなかったわ
うちでお母さんに毎日話を聞いてもらうのとね
ただ、役割がちがうだけ
あそこではわたしがお母さんの役で、彼らがわたしの役なの
毎日みんなが、代わる代わる同じ話をしてくる
一日に何度も…

それでわたし、やっと気づいたの
物事は複雑じゃない
ただ、複雑に見えるだけ

君がいない間、ぼくは青春をやり直すチャンスにめぐり会った
最初は、やり直せばきっと、昔とは違う結果になるんじゃないかと思ってた
でも、結果はまた同じ
 
それで気づいたんだ
人生をやり直すチャンスなんて、いらない
人生は一度きりのものだ
それで十分さ 

おばあちゃんは、遠くに行ったんだよね
どこに行くかを僕に教えてくれなかったのは、その場所がどこか、僕はもう知ってると思ったからでしょ
でもね、僕はまだそこまで物知りじゃないよ
 
だから、僕は大きくなったら物知りになろうと思うんだ
みんなが知らないことを教えてあげたり、みんなが見たことないものを見せてあげたり、きっと毎日すごく楽しいと思うよ
そしたら、いつかはおばあちゃんが言った場所を見つけられるかな
見つけたら、みんなにも教えてあげる
みんなでそこに遊びに行くね

『ヤンヤン 夏の想い出』エドワード・ヤン

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