【小説】複数の傷痕
ある夜、新宿の雑居ビルの7階から一人の女性が投身自殺した。
非常階段の飛び降りた場所には揃えられた靴と遺書が残されていた。
女性の遺体には手首を切って血を流した痕があった。
私は妻子持ちの既婚男性に5年間欺かれてきました。
結果として不倫関係になってしまった事は奥様にもお子さんにも申し訳ないと思っています。
知ってしまったきっかけは些細な偶然でした。
この生命を持って皆さまにお詫び申し上げます。
死因は頭部強打による失血死であった。
飛び降りる前にもかなり自傷したのだろう。
左の手首には深い傷が複数刻まれていた。
その現場をみて、ほくそ笑んで去って行った一人の中年男性の姿があった。
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