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小説家見習いが考えるペンネーム論

どうも、講談社が炎上したせいでメフィスト賞への応募を躊躇している卯月綺華(カツペソ)です。

「ミステリの講談社」が「ミステリの講談社」と言われる所以である2大新人賞のうち、江戸川乱歩賞の講評がなぜか炎上しているらしいです。ちなみに2大新人賞とは江戸川乱歩賞とメフィスト賞です。これぐらいは常識っすね。

炎上した講評は第70回江戸川乱歩賞における『彼女が時計を奪わなければ』(がにまた)の講評です。

ミステリとして大きな穴はないが、過去の出来事の謎を現在から振り返って解明する構成を含め、設定がどうしても浅倉秋成の『六人の嘘つきな大学生』を連想させてしまうので損をしている。ネタバレと言っていい題名、真面目につけたとは思えないペンネーム、ともに減点対象。

〈結果発表〉第70回江戸川乱歩賞 最終候補作と2次予選通過作品の講評 | tree

真面目につけたとは思えないペンネーム、ともに減点対象。

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そもそもの話

江戸川乱歩の本名は平井太郎。これはミステリ好きの常識です。そして名前の由来が怪奇小説家の「エドガー・アラン・ポー」のもじりであることも常識です。(乱歩の初期作自体がポーの影響を受けているのは言うまでもない)
そんな江戸川乱歩の名を冠する新人賞で「ふざけたペンネームだから減点」っておかしくないですか??? 私の感性がズレてるんでしょうか???
そんなことを言ってしまったら江戸川乱歩や二葉亭四迷に失礼だと思います。ちなみに武者小路実篤はこれでも本名です。

ついでに言えば海外の方に目を向けてみると「エラリー・クイーン」(フレデリック・ダネイとマンフレッド・ベニントン・リーの共同名義)なんか海外ミステリふざけた名前No.1だと思います。

天下の講談社でそれはないだろ!

講談社のミステリ新人賞で最右翼が江戸川乱歩賞だとしたら最左翼はもちろんメフィスト賞です。メフィスト賞といえば京極夏彦の『姑獲鳥の夏』が発端となって生まれた新人賞であり、森博嗣や新堂冬樹、辻村深月などを輩出したことで知られています。最近だと周木律や五十嵐律人なんかが売れてますね。

そんなメフィスト賞の2人目の受賞者の名前は清涼院流水。あの清涼院流水です。誰がどう考えても清涼飲料水のもじりです。
もちろん、この流れは他の小説家にも続きます。西尾維新や秋保水菓といった「ローマ字で鏡文字系」、舞城王太郎や早坂吝のような「確実に狙っただろ!系」、井上真偽や須藤古都離のような「正統派だけど何かがおかしい系」など……まさに「ふざけたペンネーム」の見本市です。
そんな講談社が「ふざけたペンネーム」を理由として減点対象にするなんておかしいじゃないですか。

確かに江戸川乱歩賞は講談社の中でもエンタメ小説を中心に扱う文芸第二出版部が担当していますが、メフィスト賞は「コレを本当に商業で出していいかどうかわかんないぶっ飛び系小説」を中心に扱う文芸第三出版部が担当しているので正直「ペンネームは二の次」といった印象が強いと思っています。
それでも、エドガー・アラン・ポーが名前の由来となっている小説家の新人賞で「ペンネームを理由に減点」するなんてあり得ないと思います。多分乱歩は天国で泣いているんじゃないのかな? というか、講談社における看板ミステリ作家の1人である有栖川有栖なんかふざけたペンネームの筆頭株だと思ってますからね。

ボツにしたペンネーム色々

小説における私のペンネームは「卯月絢華」です。由来は4月生まれ+自分の本名の漢字を変えただけという超シンプルなモノです。
でも、色々な公募へ応募するに当たってペンネームを付けるのは苦労しました。

最初はハンドルネームである「カツペソ」で出そうと思ったがあまりにもアレなのでボツ。
次にカシオ計算機(思い入れのあるガラケーを作ってた会社)から取って「樫尾亭彩花」にしようと思ったがコレもボツ。
ヤケクソになった私は思い切って「名無しの権兵衛」の意味を持つ「ジョン・ドゥ」をもじって「ジョン・ドゥ・アズ・インフィニティ」にしてやろうと思ったけどバカすぎてボツ。結果的に今のペンネームに落ち着いたのは言うまでもないです。

全くの余談

最初に「エラリー・クイーンは海外ミステリふざけた名前No.1」と書きましたが、拙作『阪急京都線コネクション』(第45回横溝正史ミステリ&ホラー大賞応募作)の主人公である江成球院はエラリー・クイーンからもじった名前をつけてやりました。理由は特になかったんですけど本棚に転がってた『ローマ帽子の秘密』(角川文庫版)を読んでたら閃いたんです。丁度語り手としてもピッタリだったし。

とはいえエラリー・クイーンに引きずられつつ中身は江戸川乱歩ですからね。明智善太郎という探偵と小林仁美というヒロインがいるということはそういうことです。

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