推しの芸人が売れたあの日
2021年10月2日。
推しの芸人が、売れた。
「2021年10月2日」とは、忘れもしない「キングオブコント2021」決勝の放送日である。
ここ数年はもっぱら、お笑いを中心に四季が巡る。
大阪で活動する芸人の東京進出で春を、
キングオブコントの予選の開始で夏を、
相次ぐコンビの解散で秋を、
M-1グランプリで冬を感じる。
2021年も例に漏れず、お笑いとともに春夏秋冬を感じた。
「あっ、今年は名前間違えられてない」
「あのチクベスニット、今年も着るのかな」
そんなことを思っていた矢先、「男性ブランコ」がキングオブコント2021の決勝進出を決めた。
発表の日は確か、職場のトイレでこっそりスマホを確認、四方を壁に囲まれた状態で一人、拳を突き上げた記憶がある。
いち素人が定義するのが烏滸がましいのは重々承知の上、苦杯を嘗めた何年もの期間の中で、この決勝進出は彼らにとってはもちろんファンにとっても悲願であったに違いない。
男性ブランコのコントは、ストーリー性や登場人物のキャラクター性に厚みがあり、そこから発せられる言葉の面白さやハートフルな描写に特徴がある。
私は彼らがつくり出す緻密で繊細で、かつ人間味のあふれるコント、そして「元卓球部」と呼ぶに相応しい風貌・醸し出す雰囲気、その全てに惹かれてファンになった。
しかし、こと賞レースにおいては、ボケの数の多さや爆発力、規定時間内での展開の面白さが重視される傾向にあるため、ストーリー性を重視することは「勝負がしづらい」ものとされている。
そうした情勢の中、彼らは勝つために毎月単独ライブを行い(ここではサラッと書いているが常人の所業ではない)、数多の舞台に立ち続けた。
ただ、血の滲むような努力とは裏腹に、単独ライブを開催する毎に減る集客。そんな状況に「このパターンではダメか」と心が折れ、“ガチで賞レースに勝ちに行く” ほうへ舵を切った彼ら。
そこで光を放ったのが、キングオブコント2021で彼らが1本目に披露した「ボトルメール」のネタだった。
私はテレビの前でリアルタイムでキングオブコントを観ていたのだが、男性ブランコがこのネタを披露した時、「これは、いったかもしれない」と率直に感じた。
ボケが繰り出されるとともに、拍手笑いが起こるスタジオ。どんどん大きくなっていく笑い声を聞いて、私は心の中で「行け!もっと行け!!」と、例えはアレだが競馬や競艇でのギャラリーのように胸を高鳴らせていた。
そして気づけば涙を流して笑っていた。
正直、それ以降は空気階段が上裸になっていたこと以外あまりはっきりとした記憶が無い。
そして結果は準優勝。
優勝を目指していた彼らにとっては悔しい結果だったのだろうが、私は心からのバカデカ拍手を贈りたいほど喜ばしい出来事だった。
準優勝となったその日、彼らはそれぞれTwitterを更新。
私は、まさに「飛ばす」という表現そのもののように、140字をあっという間に有り余る熱と賞賛で埋め、初めて彼らに長文のリプライを飛ばした。
できるのならば、これからも彼らのコントが観たい。そう強く思った夜だった。
それからというもの、彼らはメディア露出を大幅に、素麺からきしめんくらい大幅に増やし、今まで以上の人気を得ていった。
先で書いた彼らの苦労を賞レース後に知るのも、ある意味売れた証とも言えるのだろう。
また、よくある「遠くに行ってしまった」という感覚は不思議と無く、ただただ嬉しかった。その感情を抱けていることもまた嬉しい。
生涯の中で、彼らのコントに出会えたこと
これは間違いなく、私の誇りである。
しかし、私がこうして熱く語ったところで、もちろん本人様、そしてこれを読んでくださっている皆様の人生には何の影響も及ぼさない。
ただ、「好きなものを追い続ける・応援し続けることは、私達の思っている以上に尊いこと」だというのが少しでも伝わっていたら嬉しく思う。
ちなみに、男性ブランコのネタやその他もろもろは、公式YouTubeにしこたまアップされているので是非見て欲しい。(ここで布教)
そして、彼らはなんと今年の「M-1グランプリ2022」の決勝進出を決めている。コントだけではなく漫才もイケちゃう人達なのである。
あぁ、好きだなぁ。
今日も私は、テレビの前でリアルタイムで彼らの勇姿を見届ける。
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