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授業研を終えて

「授業記録を全部とる」ことの大切さを感じました。

なぜなら,「無意識を意識化」することができるからです。
これまでの私の授業記録と言えば,
自分が印象に残った場面,発問や子どもの発言でした。
しかし,それらはあくまで自分の主観でしかありません。

「全部とる」ということは,
主観を排し,客観的に物事を捉えることになります。
(すべてをメモできるわけではないので,
メモ自体にも無意識の取捨選択が含まれてしまうのですが…)

そうすることで,自分がこれまで無意識下であった部分を自覚したり,
考えてこなかった部分に焦点を当てたりすることができました。

また,メモを見ながら授業をふり返る中で,
自分なりの考えをもてたり,
授業中は気にも留めなかった疑問に気付いたりすることができました。

それらを改めてまとめてみると,
主に3つの気付きがあったように思います。


1つ目は,「教師のコーディネート」についてです。
子どもたちは,本時のめあて・課題や教師からの発問に対して
発言していきます。

これまでの私は子どもたちの発言に対して
「問い返す」ことができませんでした。

多くの先生方の「問い返し」をメモしていくと,
教師と子どもの1対1にならないような工夫に気付くことができました。

例えば,
「今の○○さんの気持ち分かる?」
「言いたいこと伝わった?」
「今いくつのこと言っていた?」
など,本人に問い返すのではなく,全体に問い返すやり方です。
クラス全体で学習をしていると自覚させることになり,
なかなか発表できない・発表に自信がもてない子どもたちも
反応することができます。

また,一通り子どもたちの発言が終わった後に,
「ちょっとここ整理するよ」と言って,
「さっき○○ちゃんなんて言っていたかな…?」
と教師が問い返すことでも,
友だちの意見を大事にする風土をつくることが可能になります。


2つ目は,「教師の見とりと声かけ」についてです。
できる範囲で教師の発言も子どもの発言も全部記録してきました。
子どもはわかる範囲で,名前も書いていきます。
どの子がどのような発言をし,
どのように変容していったかが分かるようにするためです。

その記録を繰り返していくと,
「大事な発言はいつもあの子から始まっている」
ということに気付き,
「あの子の発言の裏にはどんな思考があるのか」
ということが気になってきました。
そうなってくると,
今度はその発言に対する教師の対応に目が向きます。
そこに,「授業記録を全部とる」ことの価値がありました。

すべてを記録し,
その子がどのように感じ
どのように考えたかが少しでも見えるようになると,
声かけの価値や意味も少しずつ見えてきました。
あの子の状況に合わせて反応したり,
学習の流れに応じて拾ったりする教師のコーディネートが
際立って見えてくるようになりました。
おそらく,
私が新任から3年間初任校で進んでいた研究は,
このような気付きを得るためだったのだと思います。
(当時は何も学べませんでしたが…)


3つ目は,「授業の流れと子どもの思考の流れ」についてです。
授業が上手だと思える先生方の授業は,
子どもたちの思考の流れに沿った
自然な授業展開であることに気付きました。

例えば,4年生の算数の「面積」の学習では,
「広い」という言葉を共有するところから始めました。
これまでの自分なら無駄な時間だと思っていたのですが,
子どもたちは「広さ」についても様々な概念をもっています。
その概念を可視化することで,子どもたちの思考を共有していきます。

まず,片道一車線の道路と高速道路を比べて,
「道幅が広い」という言葉を引き出します。
次に,公衆電話と犬小屋を比べて,
「横幅と縦幅で比べる」という考え方を引き出します。

そして,google mapの写真を使い,
学校の大プールと小プールを比べます。
子どもたちは生活経験とこれまでの流れから,
どちらが広いかを「縦幅」や「横幅」といった言葉で比べていきます。

そこで,教科書にのっているような長方形と正方形を提示します。
子どもたちは,それまでの流れから,どちらが広いかを考え出します。
長方形の「縦の長さが3で横の長さが5」,
正方形の「一辺の長さが4」であると提示すると,
「縦幅と横幅を足したらどちらも8だから同じ大きさになる」
という考えの子が大多数を占め,
正方形の方が長いという子はクラスでたった一人でした。

このように「広さ」の感覚を耕した上で授業を進めていくと,
先取り学習をしている子と初めて出合う子との差をなくすことが
できると実感しました。

実際に紙を渡して確かめさせると,
こどもたちから
「あっ違う」
「うわっこっちのほうが大きい」といった感動が生まれていました。
教え込むことで早く理解させることもできるように思いますが,
実感を伴った理解には早さ以上の深さがあります。
「子どもの思考の流れ」に培う授業展開を考える必要があると
再認識することができました。


今もひしひしと感じているのは,
自分には守破離の「守」がないということです。
思いつきの授業やセミナー等で学んだパッチワークの授業を
ただ流しているだけでした。
これまでの自分になかった気付きを
【知識】で終わらせることなく
【技能】にするためには,今後の在り方が大変重要です。
たくさんの授業記録をとり,
また自分の授業実践を繰り返す中で,
授業における確固たる「守」を見出していきたいと考えています。

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