【ポケモンSV】ナンバープレートを考察

ポケモンSVの舞台パルデア地方はイベリア半島、すなわちスペインとポルトガルがモチーフであり、DLCは剣盾の流れを汲んでバレアレス諸島かカナリア諸島、またはアゾレス諸島やマデイラ諸島が有力かと思っていただけに、ザ・和風の前編とガラパゴス諸島(エクアドル領)を想起させながら海底ドームの後編というのは正直驚きだった。

ブルーベリー学園についてはイッシュ地方と明言されていることもあり、かつてスペインが植民地化し、現在でもスペイン語が話されているアメリカ大陸に相当する場所にあることが容易に推定される。

一方でキタカミの里については「パルデアの東方」とされるのみで具体的な場所の言及に乏しい。
モチーフは岩手県ないしは東北北部、文化的にヒスイ地方・シンオウ地方との関わりが深く、地理的にも比較的狭い海を挟んで隣接した地域であることは他の考察勢の方々の指摘通りまず間違いないが、プレイしていて一点だけ気になった点がある。

それがナンバープレートだ。

ポケモン界のナンバープレートは情報が乏しく、いまいち世界観としてつかめてはいないもの、アニメまで含めれば(画像検索で見た限りでは)アローラは横長のヨーロッパ方式(現実のハワイ=アメリカとは異なる)、ガラルは正方形に近いアメリカ方式で、横長でリアだけ黄色いというイギリスの特徴は有しておらず、制作陣がそこまで気を遣っていないことも伺われる。

とはいえ、パルデアのナンバーはセルクルタウン付近などで確認できるように横長で左に青のストライプが入ったヨーロッパ方式(スペインやポルトガルが現行で採用しているものに酷似したデザイン)が採られており、明確にスペインという舞台が意識されているといえる。

パルデア・フロントプレート
パルデア・リアプレート

アニメとゲームの世界観を同一視するのは禁物で、剣盾以前のゲーム内でナンバープレートを確認するのが難しいこともあるが、これらを見る限り地方ごとにナンバーのデザインが異なっているようだ。

仮にガラルのナンバーが横に短く前後とも白であるとするなら、ポケモン世界にヨーロッパという括りはなく、現実世界ではヨーロッパ共通のスタンダードとなっている左青の横長プレートは、ポケモン界ではパルデアに固有のデザインだということができる。
ただし、スイスやアンドラのような例外があるため、ヨーロッパなら一概に横長というのは現実世界においても完全な法則ではない。ガラル地方はたまたまそれに該当する(イギリスのEU離脱も記憶に新しい)だけなのかもしれないが、とにかくこのデザインは現時点ではパルデアのみで確認されたものであることには違いない。

ここで問題となるのはキタカミのナンバープレートだ。

キタカミ・フロントプレート
キタカミ・リアプレート

リアに関してはパルデアと全く同じデザインでありながら、フロントは形状は同じながら左のストライプが赤色になっていて、この地域がパルデアの本土とは別の行政が敷かれていることが示されている。

しかし、ここで注意すべきは、このような赤色のストライプは現実世界においてもキルギス、アルバニア(ただし古いもの)、マン島といった地域で用いられているという点であり、このことを踏まえれば基本的な意匠はパルデアのそれに準じたものと認めることができる。

マン島などと異なり、フロントだけ違うというのは気になる点だが、キタカミとパルデアの政治的・歴史的あるいは行政的な繋がりを示唆する事実として非常に興味深い。少なくとも現実世界における日本のものとは明らかに寸法からデザインまでが違う。

前述のように、パルデアのナンバーが現実世界と同様「ヨーロッパ」の標準的なものに準じたものであるかどうかははっきりと断定できない。
カロス地方のナンバーがはっきりと確認できればさらなることが言えそうだが、たとえばポケモン世界のヨーロッパでこのデザインが標準化されているのであれば、シンオウ地方が地理的にそこに近い、あるいはトルコのように政治的にその地域に含まれようとしている可能性が否定できなくなる。

そもそもシンオウ地方のナンバーがパルデアと同じデザインである、少なくともアローラと同様の横長である可能性も否定できない以上、単に形状だけをもってキタカミの特異性やヨーロッパとのつながりを指摘したことにはならないことに注意しなければならない。

まとめると、ナンバープレートからみたキタカミとパルデアの関係としては

・キタカミが何らかの理由でパルデアのデザインを模倣している
・パルデアのデザインは「ヨーロッパ」共通のものであり、キタカミおよびシンオウ地方が「ヨーロッパ」かその周辺に位置している
・そもそもパルデアとシンオウの関係が現実世界以上に深い
・形状やデザインに現実世界にあるような地理的な標準はなく、キタカミのもともとのデザインがそれであったという偶然の一致

などの可能性が考えられるだろう。

いずれも憶測の段階を出ないが、筆者個人の意見としては、これほどのデザインの一致が見られるには、現実世界における欧州連合のような地理的共同体の意識か、連合王国とマン島の行政上の関係のようなものが、少なくともパルデアとシンオウの間には想定されてしかるべきと考える。

そして、シンオウとキタカミがガチグマが泳いで渡れる程度には近接しているのに対し、パルデアとキタカミの文化は全く異なっており、文字体系も違うなど地理的な近さはほとんど感じられない。

もっとも、スペインとイランほど離れていても共通の標準形が使われているくらいなので、パルデアのデザインが「ヨーロッパ」共通のものである可能性が捨てきれるわけではないが、この辺りはシンオウ地方やカロス地方を始めとした各地のナンバーが確認できないと何とも言い難い。

そこで筆者は、仮に横長かつ左に青というデザインがパルデア地方に特有のものだったとするなら、キタカミはかつて王国があったというパルデアの海外植民地のようなものだったのではないか、という大胆な仮説を立てた。

完全に妄想の域だが、オーガポンと共にキタカミにやってきた男はマゼランのような航海者ないし探検者で、パルデア帝国(スペインがモチーフならそれなりに世界中に領土を持っていたとしてもおかしくはない)の征服活動に先鞭をつけたような人物だったかもしれないのだ。
ともっこ伝説はラプラプとマゼランの対決のようなもので、あるいはパルデアの探検者はより上手くキタカミを統治していたことも考えられる。キタカミの内紛か圧政者の登場により反乱が起こり、結果としてパルデア人は追放されたが、フィリピンと同様に最終的にはパルデアの支配を受けることになり、その支配を経て部外者のパルデア人を攻撃した歴史を書き換えてしまった、そういうことは歴史的事実としては十分にありそうなことだ。

とはいえ、これではさすがに発想の飛躍が過ぎるであろう。
しかし仮にパルデアとキタカミが地理的に隔絶されているなら、共通のナンバーを用いるほどの紐帯は海外領土や旧植民地といった事情を除いて考えづらいのもまた事実だ。少なくともアルバニアのイタリアに対する関係に近いものがあったとしてもまったくおかしくはない。

さもなくば、パルデアとシンオウが実際の世界地図とは異なって比較的近所にあり、ある程度制度を共有している(なおかつその共同体にガラル地方が含まれていない)ということになるが、体感としてはこの両地方にそれほどの共通点は見当たらないし、学園はイッシュ地方より先にシンオウ地方の学校との交流を持つというのが自然だろう。

付言するなら、ボタン関連のイベントで彼女がガラル地方出身であることが明かされている(はずだったと思う)が、このこともガラルとパルデアがそれなりに近くにあるであろうことを裏付けているといえなくもない。

いささか突飛な発想であることは承知の上だが、パルデア地方とキタカミの里の奇妙ともいえる関係性について、興味深い、かつそれなりに説得力もある仮説を提示できていれば幸いだ。


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