【今日の一曲】Ray Charles - Ellie My Love

伝説的R&B歌手のレイ・チャールズが我らがサザンオールスターズの「いとしのエリー」をカヴァーしていることはご存じでしょうか?

いや、テレビCMで有名になったくらいの曲だからある年齢層以上の人ならみんな知っているのだろうけど、若いリスナーにとってはこの組み合わせは少し意外に感じられるかもしれません。

もともとサザンの曲が洋楽的なエッセンスを持ち合わせていることもありますが、レイのこの演奏で聴いてみると、なるほどレイ・チャールズの曲としては確かに違和感はあるけれど、英詩(内容はだいぶ異なるけど)と彼の歌が曲にうまく乗っていて洋楽として完成されているかのよう。

もちろん原曲も好きだけど、このカヴァーは国籍を跨いでいるにもかかわらず説得力があり、「レイ・チャールズやっぱすげー」となるとともに「桑田すげー」とも思わせる名カヴァーだと個人的には思います。


ところが事態はこれほど単純ではなく、この曲はレイが自ら望んでカヴァーしたわけではなく、金を持て余したバブル期の某飲料メーカーがウイスキーの宣伝のためカヴァー「させた」曲だというのです。

マッドネスの「イン・ザ・シティ」とか「男の世界」のようなCMソングが大ヒットするのは日本の洋楽チャートの恒例とはいえ、レイ・チャールズというのはやはり別格の感があります。

そしてこの曲、当然本国アメリカではほとんど聴かれていない(むしろサザンの原曲の方が有名なのではないだろうか?)ばかりか、レイ本人としても自身のレパートリーとは区別しているらしく、あくまで仕事の一環として歌った曲のひとつに過ぎないみたい。

そういう事情を知って聴くと悲しいものですが、それにしても自身のアルバムに入れるわけでもない、他国の大企業に提供するためだけのCMソングで(元の曲が素晴らしいものであるとはいえ)これほどのものを作ってしまうレイはやっぱりすごい。というかなんか勿体ない。

経緯はどうであれ、本人がどう思っていようと、ひとたびリリースされれば創作者の手を離れて旅をするのが芸術作品の定め。これだけいい作品が極東のわけわからん島国のコマーシャル(チャートは賑わせたけど)に終始してしまうのは残念な気さえします。まあそう思ってるのは日本人だけかもしれませんが…


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