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詩作試作

「」
世界の構造を考えるよりも朝ごはんを考えることのほうがむずかしい
平和の達成のために何をしたらいいか考えることは私が考え方を変える方法を編み出すよりも複雑
閉じこもっている 私の内側以外へと閉じこもっている
私のこの目を通して見た朝日が正しいとして、あなたが同じ時間に同じ方角を向いて眩しいと思ったとして、それってあなたが存在している証明にはなり得ない


 「がれき under 電波塔」
 三拍子が私を攻めてくる 三拍子の記憶
 開けた田んぼの真ん中で、ワルツを踊った。 私は開けた田んぼの真ん中で回った。白地に心花柄のワンピースで回った。切りそろえた髪の毛が動く様を、遠くから見た人がいた。たぶんそうだ。
 遠くから見た人が、私の鼻の輪郭を見た。
 魔女の輪郭はハッキリとしているのに、クレバスの輪郭はぼやけている。

 「せんせい」
 せんせい、って呼んでね 場所によって私の名前は変わるから、ここではせんせいって呼んでね
 せんせいは正しい。せんせいは優しい。せんせいはおもしろい。せんせいはこわい。せんせいはきびしい。だけどせんせいは正しい。
 だから私のことを、せんせいと呼んでほしい。
 正しいことをあなたに教えたい。優しさの仕方をあなたに教えたい。おもしろいことをあなたに見せたい。優しいことはこわくもあることをあなたに教えたい。厳しくされる境界線をあなたに教えたい。区別の付け方を、あなたに教えたい。そしてせんせいは正しい。
 本当はあなたに教えることなど、私は何も知らない。教えていいことを知っている人間などいない。本当の正しさなんてものを知っている人間はいない。及第点の正しさを知っている沢山の人達が、多くの機会を使って話したから、及第点の正しさは正しさになった。それだけのこと。
 けれどせんせいはひとり。たくさんの人ではない。だから、せんせいが話す正しさは、たくさんの人の話す正しさではないかもしれない。及第点も取れないかもしれない。けれど、あなたがわたしをせんせいと呼ぶかぎり、私は正しい正しさをあなたに見せたい。
 本当は、私の正しさが正しいのかの保証がないことを、私は申し訳なく思っている。こうやって足掻く様をみせたいのだ。こうやって生きている人間のほとんどは、かっこいいから。

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