マガジンのカバー画像

近江高校コラム

24
これまで書いてきた高校野球コラムのうち、近江高校に関係の深いものをまとめました。
運営しているクリエイター

#野球

「山田陽翔=びわ湖」。完成を待つ日本一の方程式/高校野球ハイライト番外編・近江

いつからだろう。スポーツを見るとき、心に予防線を張るようになったのは。 応援チームの優勝を願いながら、いつもどこかで「負けるんじゃないか」と思っている。スポーツが全てではない。負けても明日はやって来る。平静を保つための保険は必要だ。 「2018年を越える。記憶にも記録にも残る史上最強のチームになれる」。 夏前の取材。多賀章仁監督の宣言を100%で受け止めなかった自分がいる。滋賀大会を勝ち抜いたあとも、期待より不安が大きくなってきた。 確かに山田陽翔はスペシャルだ。ただ、ワン

雑草集団が春に咲かせる「一番」の花/高校野球ハイライト特別篇・近江

去年秋の県大会決勝。近江の主将を務める中村駿介の姿は、グラウンドではなくベンチにあった。スタメンを外れた原因はコンディション不良。 「確かに無理はさせられない。ただ、何かあれば主将でも出られないというのを全員が知ってほしい。危機感を芽生えさせるため、監督として本気度を示す必要はあった」。 4年ぶりに秋の県大会優勝を果たし、近畿大会もベスト8入り。2022年以来のセンバツ甲子園を射程圏に収めながら、多賀章仁監督の表情は明るくない。 失礼を承知で言えば、今季の近江には「順風満帆

大きな湖に育ててもらった…山田陽翔がドラフト翌日に語った感謝/高校野球ハイライト番外編・近江

2022年10月21日。プロ野球ドラフト会議の翌日に実施した、山田陽翔選手の単独インタビュー。放送で伝えきれなかった部分を含めてインタビューのほぼ全文を記していく。 塚本:埼玉西武から5位指名。待って待っての指名だった― 山田:うーん…他の選手が指名されていくのを見ながら1時間半ぐらい待っていたんですが、それ以上に長く感じたのが本音です。 塚本:指名された時の心境は― 山田:すごくホッとしたというか。自分がプロ野球選手になることによって両親にも恩返しができますし、学校にいる

絶望と失望を経て、星野世那が照らす日本一への希望/高校野球ハイライト番外編・近江

「あの投球では使えない」。3回途中で降板した八幡商業戦後、星野世那は多賀章仁監督に告げられた。甲子園ベスト4まで進んだ長い長い2年の夏。「ベンチには入れ続けてもらったけど、登板はないだろうと思っていた」。言葉通り、この試合以降のマウンドに星野が立つことはなかった。 出身は草津リトルシニア。滋賀学園の服部弘太郎や比叡山の有川元翔らと全国準優勝も果たした星野は、2018年の林優樹に自分の姿を重ねてブルーのユニフォームに袖を通した。 角度あるストレートや大きな縦カーブだけでなく、

犠牲の先のストーリー~高校野球ハイライト延長戦13日目・近江

3回戦を終えノーヒット。打撃で苦しむ近江の主将・春山陽生は、帽子の裏に大きく『犠牲』と書いた。「結果を出したい気持ちを捨ててチームに尽くす」。準々決勝では安打こそ出なかったが、言葉通りチャンスを広げる死球でガッツポーズを見せた。 「自分たちの代で負けて…1年のほとんどが大変な時期だった」。去年の秋は決勝で敗れ、県内連勝は34で止まった。今年の春は3回戦で敗退し、シード権も失った。全ての優勝旗が学校から姿を消す中で、多賀章仁監督が「重石を取ってやりたい」と話すほどに春山は追い

成長曲線はホームランの如し~高校野球ハイライト延長戦特別編・近江

「新チームの捕手は島瀧悠真」。水口東を破った去年の独自大会決勝直後、近江の首脳陣から聞かされた構想は衝撃的だった。確かに肩は強い。長打力もある。それでも名門で1年生ながら甲子園ベンチ入りを果たした投手だ。1学年下の山田陽翔が台頭してきたとはいえ、「投手・島瀧」を捨ててまでのコンバートには不安もよぎった。 結果的に不安は現実となる。秋は滋賀学園と神戸国際大附属に、春は立命館守山に、いずれも終盤に決勝点を奪われ敗退。チームの成績は捕手の評価に直結する。「経験が少ない。リードでき

「滋賀の星」吉田輝星の右肩に、期待という名の重石を乗せてー

北海道日本ハムファイターズは、滋賀に住む私にとって最も縁遠い球団かもしれない。そもそも距離が遠い。1軍も2軍も阪神とリーグが違う。新庄剛志や坪井智哉も引退したし、モノマネ芸人の今成亮太には生え抜き感しかない。去年は交流戦もなかったので、谷川昌希のトレードを聞いて順位表を見直したぐらいだ。 それでも私には、密かに個人成績をチェックする選手が1人いる。「滋賀の星」こと、吉田輝星である。 一般的に吉田は「秋田の星」と呼ばれている。2018年の夏、金足農業高校のエースとして秋田大

先輩バッテリーの激励が照らす道~長谷川勝紀(近江高校~オセアン滋賀ブラックス)後編

「いや、全く関係ないです」。主将の長谷川勝紀(近江)、エースの荒川翔太(智辯学園)、レフトの國領浩哉(中京学院大中京)、センターの鈴村亜久里(日本航空)。今季のオセアン滋賀ブラックスには、中学軟式チーム・滋賀ユナイテッドJBoy's(当時)の同期メンバーがそれぞれの高校野球生活を経て一気に再結集した。

¥300

【アミンチュな日々】2年ぶりのセンバツ!

塚本京平です。 1月26日に高校野球・センバツ甲子園大会の出場校が決まり、滋賀県からは近江高校が出場することになりました。選考委員会の当日は学校まで取材に向かいましたが、緊張から一気に解放され、高らかに帽子を投げる選手たちの表情が印象的でした。 前回・2年前にセンバツへ出場した際は、山田陽翔選手(現・埼玉西武)を擁して全国準優勝。今年はサッカー部も全国準優勝を達成するなど周囲の期待は大きくなる一方ですが、まずは選手たちが落ち着いて力を発揮できる環境を整えてほしいと願っていま

【アーカイブ2020】エラーを受け止めるという選択肢~土田龍空(近江高校~中日ドラゴンズ)

『1番印象に残っている場面はー』。この質問、記者の想像と選手の答えはほとんど一致しない。だいたい記者は活躍シーンを想像し、選手は成長のきっかけになったシーンを答える。結果と過程。重視するポイントにズレがある。 つい最近、この質問に出くわした。聞かれた選手は近江の主将・土田龍空。想像して聞いていると、答えが土田とピタリと合った。ただ、このやり取りを掲載したメディアはほとんどない。土田の答えは『去年夏の甲子園、東海大相模戦のエラー』。確かに載せづらい。 高校野球でエラーを扱う

【アーカイブ2020】吹奏楽のないスタンド~滋賀大会・夏跡の便り②近江

「目立ってナンボ」に「お客さん第一主義」。芸能界の鉄則のような、近江高校吹奏楽部・樋口心教諭の言葉。2018年のセンバツから野球の応援曲をオール洋楽にリニューアルしたのは野球ファンには有名だが、オリジナリティもルールもない「典型的な応援」を変えた背景には、海外公演にも取り組む革命的な部の方針があった。 今年の高校野球ではスタンドの応援を聞くことができない。打球音や捕球音も確かに重要だが、アマチュア取材が中心の立場からするとスタンド応援がないのは寂しい。吹奏楽もマーチングも大

【アーカイブ2019】出港を待つ『豪太丸』~滋賀大会延長戦13日目・近江

綾羽との準決勝で3安打。板坂豪太はおじいちゃん子だった。 昭淳さんにとって初めての男孫。自身を「パパ」と呼ぶ豪太が、かわいくてかわいくて仕方ない。 毎日2人でキャッチボールをし、山に行くときも川に行くときも一緒。日本海に大きな漁船を購入した際は、迷わず『豪太丸』と命名した。強豪校で野球を続ける孫が誇りで、試合はいつも応援に駆け付けた。 その昭淳さんが1月に亡くなった。死因はガン。60歳の若さだった。葬儀は遺族代表で豪太があいさつをした。去年の夏はベンチ入りを逃していて、

【アーカイブ2018】近江優勝を振り返る~滋賀大会ハイライト補足④近江/綾羽

夏の高校野球滋賀大会16日目。近江高校が2年ぶり優勝。センバツに続き甲子園出場決定。終わってみれば本当に強かった。 『負けるかも』と思ったのは決勝の5回から6回表までだけ。2年生の林―有馬バッテリーを中心に『勝つ野球』を知るチームだった。 決勝は5回表に綾羽が一度逆転。追い風、捕球ミス、判断ミス、打球がベースに当たるミラクル、球場が綾羽に味方しているような不思議な光景が広がった。 最後は近江の地力。1年ショート・土田が同点打。成長が本当に楽しみな選手だ。100回の記念大

【アーカイブ2017】ライバルのち相棒~滋賀大会8日目延長戦・近江

6割の学校が既に敗れたものの、まだ登場してない学校があるという現実。あすでベスト16が決まる。やはり早い。

¥300