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海外でエヴァンゲリオンが炎上している理由

エヴァンゲリオンがついに完結しましたが、それによって以前から荒れに荒れていたカヲシン問題が、国によって反応が全く違いました。
南米スペイン語圏(ラテンアメリカ圏)では、速報的に日本在住の方が現地組に情報を流していることも合って、炎上が再燃中です。

カヲルとシンジの関係に自分の幻想を乗せたい層の思い込みによる誤爆も同時に起きています。
何故そんな状況に至ったのかについて、かいつまんで解説します。

※あくまで個人的な見解を含みます。

そもそも「カヲシン」って何よ

エヴァンゲリオンに登場する渚カヲルと碇シンジのカップリングの略称のことです。いわゆるカヲル×シンジ。海外だと左右の受け攻め設定固定概念が薄い国もあるので「シンカヲ」「カヲシン」ひっくるめて「カヲシン」とします。

渚カヲルのセクシャリティ

さて、ここで問題です。
渚カヲルは同性愛なのか。

エヴァでは、スペイン語圏(ラテンアメリカ圏)で元々、Netflix等でTVシリーズが配信された際に、例の「好きってことさ」が「I love you」と訳された翻訳問題の歴史があります。そしてそのシーンが I love youであるかどうか以前に、南米ではme casé bienと翻訳されました。これは英語にすると好きという意味の他にも、I love youよりインパクトのあるI married well:良い相手と結婚したよ、みたいな意味)という爆弾並の破壊力がありました。
↑これは別の翻訳配信を観てる世代を中心にかなり炎上したようです。

「好意に値するよ」のセリフもeres digno de mi gracia(you are worthy of my grace)になっていたこともあり、完全に愛の告白のセリフだと言う認識率が現在のところほぼ100%。
言い分としては色々多岐に渡りますが、「カヲルくんはホモセクシャル設定であることが公式で至高」みたいなことが、このことによってベースができてしまいました。

さて、そこからの新作映画版。
映画版は映画版で、また色々な意見が出ました。
基本的に「ライトな表現で統一されたのか」というオトナな腐女子層と「何故!こんな翻訳になったのか!」「カヲルのアイデンティティが変わっちゃった!!(怒)」の荒ぶる層に割れてます。

そもそもの発端は「お風呂文化」に対する「受け止め方の違い」

カヲシンを語る上では欠かせないお風呂のシーン。
大浴場に2人きり。
南米圏だとお風呂のシーンがやや珍しくなっています。
近年、多くの国ではオープンチャンネルでアニメが流れていないので、自分が見るアニメをネットで選ぶ事になります。そうすると知識として「日本文化」が類型化・体系化されにくくなっているという背景もあります。
その為にお風呂のシーンが大分エロティックなシーンとして受け入れられたようです。

南米圏の腐女子の例えでは、カヲルくんがシャワーブースに一緒に入って来て、壁ドンして手を握った状態で「好きってことさ」って言われて、「友達として好き」って思う奴は鈍感過ぎる。とのこと。
なるほど?って思いますよね。

新作映画版の翻訳において、壁ドン状態でのセリフが「I like you」になったことでカヲルへの印象も変わったように感じ、それが南米圏での大炎上のきっかけになったようです。
一応、少し上の世代は、銭湯・温泉のシーンのあるアニメがTVでそれなりに流れていたので「お風呂のサービスシーン」は馴染みがあります。それから、お風呂のシーンは友情を深める意味合い(必ずしもカヲルのセクシュアルを表出させる為のシーンではない)とわかっているようです。

しかし、映画版の前にも翻訳問題で「一応 (腐女子の中では)I love youを統一認識(解釈)を持とう」みたいな流れが南米腐女子間に起きていたのも荒れた原因の1つのような気もします。

解釈違いに寛容になれる層となれない層は、どこの国にもいるということです。

「脳内補完」ができない人もいるというのも、業が深いという気持ちになります。

海賊版がもたらしていた文化理解という福音

海賊版がある程度あった世代では、日本文化の知識がある程度あります。
理由としては、アニメの中で日本の「お風呂文化の捉え方」であったり、アニメの中で描かれる日本の日常シーンで、外国文化からは理解し難いものに対しての解説テロップやページ、解説番組などもありました。

しかし、公式的にNetflixやクランチロールがアニメを配信するようになり、海賊版と共にそういった日本の文化解説も淘汰されたという影響も出ているように感じています。

海賊版によって「日本の慣習・文化理解の仕組み」があったこと、またそれが海賊版と同一視されて、一緒に失われてしまったのは、少し残念だなと思ったりもします。

(だからといって、海賊版を良しとする訳ではないです)

荒ぶる層は何故荒ぶるのか

色々聞いてみた印象としては、荒ぶる層はまだ腐女子としては若い世代です。
海外の腐女子世代も、グラデーション状態で色々あって、「腐女子」というカテゴライズが設定されてから日本ほどの歴史はないのも関係してるかもしれません。
腐女子の中でも、スラッシュ→Yaoi→BLと作品の変遷を見てきている層は割と翻訳に関しては「そう言う設定できたか」と鷹揚に受け止めています。

腐女子も色々な人がいるので、解釈違いを受け入れられない場合もあります。「これまでの作品中で明示されていたセクシャリティ表現がない」=「セクシャリティが否定された」→「自分のセクシャリティも否定された」「作品が公式によって壊された」と極論に振れる人がいます。
セクシャリティ論はなかなか奥が深く、その国の文化背景とも絡むので、難しい問題です。

因みに、中華圏も色々活発に議論はされてます。
中国に関しては「まぁ、そうよね。だって政府もうるさいもんね」「でも私の中ではカヲルくんは攻め(もしくは受け)」という感じ。
昨今のちょっと行き過ぎた熱い男の友情・ブロマンスブームもあいまって、解釈は本人の自由というのが浸透してきている気がします。

炎上してないわけではないですが、北米・南米のような異様な雰囲気の炎上ではない印象です。

彼女たちは、シン・エヴァを受け入れられるのか?

シン・エヴァンゲリオンの速報を受けて、私の方に南米腐女子からも「あの速報は真実なのか」という質問がいくつか来ています。
腐女子ならば気になるところでしょう。
カヲシン以外受け入れられないという人も少なからずいます。
そんな匂わせ何もなかったのに、突然降って湧いたカップリングに、速報キャッチ組がやや阿鼻叫喚です。

正式に北米・南米で公開されたら、またきっとこのカヲシン問題が私のタイムラインを席巻するんだろうなと思います。
色んな意味で楽しみでもあり、ちょっと怖くもあります。


ここまで色々と書きましたが、もちろん異論を認めます。

逆に北米はまだそこまで南米ほどリサーチ出来てないので、詳しくわかったら、また続きを書きたいなと思いますが、ひとまずはここまで。

5/17追記
荒ぶってるのも炎上してるのも、腐女子だけじゃないから!と、ご指摘を受けて、タイトルから「腐女子」を取りました。

Thanks for your helping
Alice, Isabel, Nidia, Mari, Alex,
Gracias por ayudarme.

Me gustaría ser tolerante con la maravillosa cultura de BL.  Por eso tolero cualquier historia o situación. jajaja.



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