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はんぶんぶんこ、はじめました

この家に住んで20年。自分の残りの人生を考え始め、障害を持つ息子の将来に向けても動き出さなくてはと思い、選択肢の一つとして、息子が自宅で暮らし続ける道を探っていこうと思った。そのためには息子の存在を知ってもらうことと、この地域が互いに気にかけ支え合うようになってほしいと考え、自宅の一室を開放して誰でも立ち寄れる場所にすることを思いついた。
1階の部屋がずっと物置になっていたので、その部屋に本を置いて来てもらうようにしたらどうだろうか。不用品処分の業者に頼み、部屋を空っぽにした。絨毯を敷き、カーテンを新しくして、新しく本棚を置いて自分の好きな本を並べた。私にとっての心地よい空間ができたのだが、そこから外に開放する勇気が出ず、その後1年半の間その部屋は私だけの居場所だった。

そこから一歩を踏み出せたのは、その1年半の間にできた本を通しての繋がり、障害を持つ子の親や支援者とのつながりの中から、私のまだ夢であった構想を「いいね」と言ってくれる人ができたことだった。この地域に20年住んでいて、この辺りで本をよく読む人がどれくらいいるのか実感がなかったが、息子の小学校の頃の担任だった先生が、「家に本のない子もいるから、その場所で文庫をやる意義はあると思う」と言ってくれたことで決心がついた。

昨年の秋、関東に住む友人に会いにいく新幹線の中で、友人が”はんぶんラジオ”というラジオ配信をしていることを思い出し、「はんぶんぶんこ」という屋号を思いついた。その足ではんぶんラジオをやっているお2人に了承を得て、ロゴまで考えてもらった。屋号が決まったことで、はんぶんラジオと同じく、完璧でない、欠けていることを楽しむというコンセプトも固まった。
それで何もかも整ってからではなく、来てくれた人と一緒に作っていくというスタンスで、看板と入口のガラス交換ができたらオープンすることに決めた。それからは「誰も来なかったらどうしよう」という不安に常に襲われながらも、オープン前から本を寄せてくれたり、宣伝をしてくれたり、作業を手伝ってくれたりと、私以上に楽しみにしてくれた人たちのおかげで、準備を進めることができた。

オープンして3か月。はんぶんぶんこのコンセプトの通り、本が半分、その他のことが半分という割合で来てくれる人たちに利用してもらっている。



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