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【セミナーレポート】Generative AIの企業における活用方法の最新事例 Vol.4

2023年5月18日、株式会社デジタルレシピが毎月開催している大好評オンラインセミナー『Generative AIの企業における活用方法の最新事例 Vol.4』にて、AI生成コンテンツの最新情報を交えた活用事例などが紹介されました。

今回は、当日に参加できなかった方向けに、セミナーの内容を抜粋してご紹介します。


登壇者プロフィール

伊藤 新之介
株式会社デジタルレシピ 代表取締役

同志社大学生命医科学部医情報学科在学中に学習塾の立ち上げなどを行い、2013年にCOOの川崎と共に株式会社ラフテックを創業。
「笑うメディア クレイジー」を1200万UUまで成長させ、同社を株式会社ベクトルへ売却。
2018年にAIを活用したDX支援を行う株式会社デジタルレシピを創業し、CEOに就任。
2021年8月に同社よりパワポをwebサイトにするノーコードツール「Slideflow」をリリース。リリース1年でARR1億円を突破。
2022年6月30日に同社よりGPT-3を活用した「AIライティングアシスタントCatchy」をリリース後、わずか2ヶ月で会員数10,000人を突破させる。
(2023年5月現在会員数60,000人突破)NHK、日本テレビ、TBSなどのメディアでも取上げられ話題に。
2023年2月、一般社団法人ジェネレーティブAI協会GAIAの理事に就任。
海外のGenerativeAIの最新トレンドや技術をいち早く実務に取り入れることに定評があり、
AIだけに限らず幅広い知識から独自の視点で行うセミナーは常に参加者から満足度90%以上の評価がある。

世界のAI動向最新情報

EUのAI規制、ChatGPTを条件付きで容認

現状は、ChatGPTが2022年の12月にリリース、APIが今年の3月に公開され、同時にGPT-4というよりクオリティの高いAIがリリースされてきました。この1ヶ月半の出来事を世界的に見ると、どうやって人間はAIをコントロールすべきなのか、制限かけるべきなのかというディフェンシブな話題が盛り上がっていたように思います。

中でも、EUでは1週間前にかなり大きい動きがあり、EUがAIに対して後ろ向きな規制になるのでは、というので色々な国が危機感を持ちました。
例えば、イタリアがChatGPTを一時禁止したことは、大々的なニュースになったと思います。イタリアが禁止した理由として、EUで定められているGDPRを引用しつつ、駄目だと言った手前、他のEUも連鎖的に対応を迫られた形でした。先週、そこが転じて、EUが条件付きではあるんですが、ChatGPTを容認するような動きというのが法案としてまとまり始めていると言われています。条件付きとはどういうことかというと、大きく分けて2つです。

  1. AIの透明性の担保

  2. 環境的に配慮されたAIであること

透明性に関しては、どういった学習データが使われていいのかということや、どこのサーバー、またはリージョンに置かれてるのかというところもそうですし、データはどのように取り扱われるのかという裏側のセキュリティガイドブックのようなものなど、しっかり透明性がある前提であればOKのようなことです。

かつ、ESGやSDGsがヨーロッパでは企業にとって大きな課題となっているので、環境的に配慮されたAIであればOKという条件が定められています。
とはいえ、AIを世界的に普及させるにあたってエネルギーが足りないという問題も発生しているので、環境面ではまた問題が起こるのではないかと思っています。

個人のプロファイルは全面禁止に

また、明確にNGとEUが禁止した分野もあります。個人情報、個人の特徴の分析をまず禁止しますというところです。

これはChatGPTというよりも、顔認識の分野です。顔認識によって人種や年齢、性別などを取得することが明確に禁止事項として入っていたり、他にも犯罪予測にも使用NGというものがあります。「この人は犯罪する可能性がある」のような、個人単位の犯罪予測の話なのかなとは捉えていますが、ここも恐らくきちんと法案が出る際に明確に定められるのかなと思います。

さらにもう1つ、AIを使ってその人が何を考えているのかといった感情分析について、顔認識がNGのため、表情周りはもちろんそうですし、テキスト的な部分も含め、その人の感情を読み取るようなものはNGというのは、EUのAIの規範の中に含まれてくる可能性が高い状況だったりします。

様々な禁止事項はあるものの、EUもようやくAIに対してどう前向きに取り組んでいくかというところが固まりつつあります。つい先月には、「全面禁止するのでは。」ということで、EUの中でもAI開発者達が、アメリカや中国に逃げるのではないかという懸念がされていました。

OpenAI CEOがAI開発の免許制を提案

アメリカも規範のところで大きな動きがありました。OpenAIのCEO、サム・アルトマンが政府の議会に招集され、そこで「AIの開発は免許制にすべき」という提案をしたそうです。なぜ免許制にすべきかと言うと、AIが急速に発展しかつ誰でも取得できるようになったため、様々なところで悪用されていくのでは、という懸念を持っており、そのための防止策として、例えば「このAIは誰が開発しています」のような免許として定めないといけないという考えのようです。

具体例としては、このままであればAIが選挙にかなり悪影響を及ぼし、公平性の妨害になる。という懸念です。これをサム・アルトマンが発言したことにより、AIの免許制のようなものが現実味を帯びてしまうかもしれないという状況になっています。

米政府が3つのファクトシートを発表

さらに、バイデン大統領がAIに関する3つの行動計画を発表しました。

  • AIの研究開発への更なる投資

  • 生成系AIシステムの評価を実施

  • AIのリスクと機会を最適化する政策

中にはヨーロッパ同様、感情分析の禁止やワークフローなどもありますが、チェックを期待されているAIの可能性を潰してしまうようなものも一部含まれているという話もあり、どこまで規制されるかによって、アメリカのイノベーションが衰退するか発展するかの大きな瀬戸際と考えている技術者もいるようです。

OpenAIの最新プロンプト事例

プロンプトフォーマットの事例紹介

OpenAIが、ChatGPTでのプラグインサービスを出し、そのプラグインの評価をChatGPTにさせ、どういう指示をChatGPTに与えてるのかというものがTwitterで話題になっていました。そこの内容を、日本語で詳しく説明できればと思っています。

プラグインで何ができるかというと、例えば日本だと食べログさんが既にそのプラグインを公開していますが、ChatGPT上で食べログ関連の情報を一緒に取得して生成できる。

食べログはレストラン情報をがかなり持っていると思いますが、「東京で美味しいラーメン屋さんを教えてくれ。」と言ったら、今まではChatGPTは答えられなかったんですが、食べログプラグインを参照することで、おすすめの東京のレストランを提示することができるというようなプラグインです。

プラグイン機能が追加されたことにより、多くの企業がプラグインを使えるようになりますが、そのプラグインの年齢制限をかけるための評価を、そもそもAIにさせてるというような話ですね。

今のプラグインの中身を見た上で、そのセキュリティスコアっていうのをまずつけさせて、セキュリティスコアに基づいて最適な年齢制限の13歳以上というふうに適切なのか、18歳以上かはたまた20歳以上なのかみたいな、何かそういう制限をかけるためのプロンプトですね。

上記のように構造化された文章になってはいますが、こういったプロンプトが英語圏でも出回っていたプロンプトの指示の出し方と微妙に違っていたようで、「AIもこう言ってるんだったらやっぱりこうなのかな。」と、世界中のプロンプトエンジニアがざわついたという形です。

このフォーマットはいろいろなところでも応用できそうなので、弊社でもこれを参考にしてプロンプトを作り直したりもするんですが、やはり結構いいプロンプトだなとも思います。もしよければ参考にしていただけると良いかと思います。

プラグインビジネスの盛り上がり

ChatGPTプラグインが、有料会員限定で公開されました。例えば、セールスフォースなどを使ってる方だったら、いわゆるSalesforceのアプリケーションはサードパーティーのアプリケーションストアみたいなもので、ChatGPTをよりカスタマイズするためのツールを、いろんな会社が提供できるようになったということです。

例えば、左上にあるKAYAKという会社は旅行関連空港予約なども含めた旅行サービスの大手ですが、ChatGPT上で飛行機の予約や、観光情報を、このカヤックから取得ができます。エクスペディアも同様ですね。

あとWolframだと、ChatGPT上でグラフを作るということができるサービスだったりします。いろんなツールがあり、既にプラグインの開発環境というものもOpenAIが公開しているので、弊社も今ちょうど作ってる最中ではありますが、誰でもプラグインを作って、使ってChatGPTと連携しそれをユーザーに提供することができるというような、”ChatGPT経済圏”がようやく花開いた状況だと思います。

これまではChatGPTで画像は作れないなどありましたが、グラフ、組織図、マインドマップなどいろんな生成ができるようになりました。

あとはブラウジング機能と言われる、例えば今日のニュースと言うと、もう今日のニュースがそのまま反映されるという、検索結果から取得するような機能です。

今までChatGPTは、1年半前の学習データしかなかったので、今日のことや、1ヶ月前のことはわからなかったんですが、それも取れるようになりました。あとは動画やPDFの要約自体ができるようになったという感じです。YouTubeのリンクを貼れば、YouTubeの内容を要約してくれたり、部分的な動画の内容に対して質問をすることもできるようになってます。

本当にChatGPTだけでいろいろな仕事が完結してくる世界線になったのと、やはりプレーヤーとしてありがたいのが、ChatGPT上で自分たちのポジションを作っていくみたいなことも可能になったという意味で、プラグインビジネスはかなり熱くなってくるんじゃないかと思っています。

期待が高まるIVA市場

IVA市場が2030年までに2兆円の市場規模見込み

次に、IVA市場が明確に盛り上がり始めているので、少しご説明しようかな思っています。

IVAというのは、インテリジェンスバーチャルアシスタントの略で、例えばこのChatGPTそのものをバーチャル空間、つまりパソコンやインターネット上でアシスタントをしてくれる賢いAIのことです。

この市場が先週発表されましたが、2030年までに1兆円以上の市場規模が見込まれるのではと言われています。具体的にどういう大きな市場があるのかと言うと、いわゆる「電気つけて」と言ったら電気を点けてくれる。のような、”家と会話する”のような表現をされたりするんすけど、今まで本当にシンプルな応答しかできなかったのが、相談までできるようになるイメージです。

「いや今日仕事で疲れてほんまの上司嫌やったわ」という話に、「大変でしたね」であったり、全然関係のない会話もできるようになります。

メディカル、コマース領域におけるAI活用事例

メディカル領域ではこの1ヶ月半でAIが活発になってきており、診断や診療は既に医療機関の実験で結果が出ていたりします。

もう既に医療分野で、しかもファインチューンが何もされていない生のGPT-4でも、診断結果として最適でフォローアップ的な言葉としても最適だと言われているくらい、GPT-4がお医者さんに勝ち始めているという状況なので、メディカルもかなり注目されています。

リアルコマースでは、実例として出始めていますが、日本だとガストさんが配膳ロボットを出していたり、南海電鉄では喋れるAIと喋れるモニターも出していたり、リアルのリテールの分野でかなり激化してきています。

コマースにおけるユーザーサポートとしてのチャットボット、例えばLINEで応答するようなチャットボットに、ChatGPTのAPIを組み込んで実験的にやっている企業もかなり出てきています。サービスとして伸びてきているというよりも、各事業が各会社が自分たちでチャットボットを作っているという状況が、どちらかというと多いので、具体的サービスというところにはなりづらい状況ではあります。

IVAの課題と展望

IVAの課題と言われているのが、音声周りが大きいと言われています。どういうことかというと、ChatGPTはテキストでの応答が中心ですが、やはりこのバーチャルアシスタントとなると、ほとんどが音声対応しないと成り立たないということです。

音声に対する認識率は、恐らく書き起こしツールを使ったことがある方はわかると思いますが、書き起こしツールはまだまだやっぱり精度が高くない。すごいんですが、100%書き起こせているかというと書き起こせていないという状況があります。特に英語圏もそうなんですが、なまりに対して音声認識は非常に弱いというのもあります。例えば日本語だと鹿児島もそうですし、関西弁や、北の方に行くと津軽弁など、あと沖縄とかも結構なんかクセが強いと思うんですけど。

そういった方言まで広く対応させようと思ったときの音声課題は非常に大きいというのが、現状のIVAの課題かと思います。

もう1つの課題としては、不気味の谷と言われたりしますが、AIに対して指示を出しているだけで、いわゆるコミュニケーションとして難しい部分です。

ボタン押した方が早いし、喋る必要がない。なぜなら認識率悪いですし、発話も遅い、というような不気味の谷+UX的な面においても、AIが人格っぽい振る舞いをすることにより、ユーザーの満足度を満たすことができるかというところは今後も課題になってくると思いつつ、かなりホットな市場として海外でも盛り上がってきています。

そこが解決されれば、”AI電話”のようなものが出来上がると思っており、私は今のカスタマーサポートやコールセンターなどが全てAIに変わることは、十分あり得るのかなと思ってます。

時代的なことを言うと、おそらく1990年代から1950年代の電話普及期のタイミングで電話交換手という職業が全国に10万人存在していましたが、通信が普及していくに従って、10万人いた実質メガバンク、メガバンクの社員合わせた数とほぼ同じぐらいの職業が、それによって消えてしまったということもあるので、AI電話が出てきたときにコールセンターもそうなり得るぐらいインパクトがあることかと思っています。

まとめ

  • EUやアメリカでは引き続き具体的なAIの規制、条件内容が固まりつつある。

  • プラグイン機能が公開されたことにより、ChatGPT上で自分たちのポジションを作っていくことが可能に。「ChatGPT経済圏」ができることによって、プラグインを活用したビジネスは期待が高まっている。

  • インテリジェンスバーチャルアシスタントの市場は課題はまだまだあるが、課題解決されることでかなり海外で盛り上がってきている。

参加者から寄せられた感想

IVA市場の期待と課題、興味深く拝聴致しました。聴覚に働きかけるデバイス(イヤホン等のスリム化、多機能化)の発達。インタレスティングなアバターによるインテリジェンスな発信、益々楽しい時代になりそうですね。

この業界の変化が激しいので、非常に参考になっています。次回を楽しみにしています。

分かりやすくて期待以上に最前線の話が聞けてとても為になった。無料講座で良いのかと驚きました。


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