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CES2022〜Abbott Laboratories〜

世界最大の見本市であるCES (Consumer Electronic Show) が2022年1月3日〜7日に開催されました。昨年度はオンラインのみでしたが、本年はラスベガスでの実地開催も再開されました。

モビリティ関連ではBMWの色の変えられる車SONYの電気自動車事業への参入が発表されるなど大きな盛り上がりを見せ、メタバースを見据えたXR領域での着実な進歩も報じられています。

さて、今回はCES2022で基調講演を行なったヘルスケアカンパニーAbbott Laboratoriesの発表を紹介します。なお、CESでヘルスケア企業が基調講演をするのは初めてだそうです。

まず、Abbott Laboratoriesは一般的な知名度はあまり高くないかもしれませんが、世界でも有数の製薬 (現在はAbbVieとして独立) 、医療機器メーカーです。2021年10月に発表した四半期売上高が109億ドル (1.25兆円) であることからもその規模の大きさが窺えるでしょう。

CES2022では同社のCEOであるRobert Ford氏、そして各トピックの有識者やユーザーが登壇して1時間に渡る講演が行われました。その中で、キーメッセージとして”Human Powered Health ~UNLOCKING THE POSSIBILITY OF YOU~”を掲げ、同社で開発した血糖管理システムFreeStyleLibreユナイテッド航空などと提携した新型コロナウイルス感染症の即時検査キットなどの発表し、それに次いで未来に向けた一般向けのウェアラブルセンサーシステム Lingoを発表しました。

Lingoは、FreeStyleLibreで培われたセンサー技術を活用した恒常的な血中バイオマーカーの測定システムです。現在はケトン体乳酸アルコールの開発を進めているそうで、血糖管理を含めて目的に応じた生体情報の管理に役立てることを目標としています。

血糖:健康状態、睡眠、思考、運動状態の管理
ケトン体:ダイエットの支援
乳酸:運動状態の管理
アルコール:残酒量管理 (車との接続も?)

元の技術であるFreeStyleLibreは、CGM (Continuous Glucose Monitoring)と呼ばれる恒常的な血糖管理システムを指します。従来の血糖センサーを用いたスポット的な測定が(左図) 恒常的に測れるようになったこと(右図)で、それまでに見えていなかった隠れ高血糖や低血糖が見える化されるようになりました。その結果、より適切な治療計画の立案や良好な血糖管理が可能になりました。

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日本大学医学部 糖尿病代謝内科学分野 HPより引用

この技術は、Libre Sense Glucose Biosensorとしてアスリート向けにも応用されており、マラソンの世界記録保持者であるエリウド・キプチョゲ氏のトレーニングやエネルギーの管理に活用されています (右腕の白いディスクが血糖センサー)。

ケトン体を測定する「Lingo Keto」は2022年後半に欧州での販売を予定しているとのことで、一般向け、アスリート向けのシステムがどのくらいの価格で販売され、どの程度普及するのか要注目です。

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○講演のアウトラインと概要
CHAPTER 1: RELENTLESS PURSUIT OF HEALTH
→Abbottが描くビジョン
CHAPTER 2: CONNECTED TO HER HEALTH
→シェリーシェパード氏によるFreeStyleLibreによる人生の変化
CHAPTER 3: AGAINST ALL ODDS, WITH TYRONE
→心不全患者Tyrone Morris氏による心疾患の克服
CHAPTER 4: THE CONTINUOUS DATA OF LIFE
→データを活用した突然死の防止やパフォーマンスの向上
CHAPTER 5: THE NEUROSPHERE VIRTUAL CLINIC
→神経調整システムNeuroSphere Virtual Clinicの活用
CHAPTER 6: OUR PARTNERS IN HEALTH
→ユナイテッド航空、eMedとのCOVID−19即時検査システム開発の連携
CHAPTER 7: GLOBAL NETWORK HUNTING VIRUSES
→パンデミックを防ぐための世界規模ネットワークの構築
CHAPTER 8: IT’S A SMALL WORLD INSIDE YOU
→腸内細菌叢の科学と健康の最適化
CHAPTER 9: NEXT: BIOWEARABLES OF FUTURE
→Libreシステムのアスリート用途への活用、Lingoシステムの発表

チャプターごとの発表はAbbott社のHPよりアクセスできます。



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