見出し画像

Insight: Next Urinalysis

次世代の尿検査 Vol. 3 注目の尿検査スタートアップ

1. CRAIF 日本発、尿中miRNAをバイオマーカーとしたがんの早期発見

スクリーンショット 2021-08-23 17.01.35

CRAIFは「尿中miRNAをバイオマーカーとしたがんの早期発見」を事業とするスタートアップであり、創業2018年5月と非常に若い企業です。今更miRNAでスタートアップ、と思われるかもしれませんが、その研究内容と成果は国内外のベンチャーキャピタル、大学や他の企業からも注目を集め、多くの共同研究を進めています。

同社のコア技術は尿中のエクソソームを集めるデバイスです。
独自の製法で作成した、酸化亜鉛ナノワイヤを用いたデバイスで、既存技術よりも高効率でエクソソームをトラップ*し、多量のmiRNA抽出を可能としています。既存技術では、尿から検出できるmiRNA数は約200〜300種類で舌が、本デバイスでは約1300種類を抽出できます。
高効率に抽出を可能とする要素はそのナノワイヤの"生やせ方”であり、かつてcellに掲載された文献(Link)にも共同創業者である安井氏の論文が引用されています。

画像1


検出されたmiRNAをプロファイル化し機械学習によって解析することもCraifの技術の特徴です。
これまでに、肺がん患者と健常者それぞれ数百個の尿検体から、肺がん診断アルゴリズムを作成し、ステージI、Ⅱに相当する患者についても高い精度(対肺がん、感度90%以上**)を確認しています。

AIを活用したデータの解析技術をコア技術とするスタートアップは多くありますが、そこにデバイスの特徴も生かせるところが同社の強みでしょう。
実際に、独自のデータベース、解析方法を有する企業との共同研究が数多く進められています。

<事例>
① Craif、日清食品と共同研究を開始
尿中microRNA解析による疾病の早期発見技術を活用し、「未病対策」の新たな分析方法の確立を目指す →Link

② Craif、北海道大学大学院医学研究院が共同研究を開始
尿中エクソソームを用いた婦人科腫瘍の早期診断を目指す → Link

モノづくりの技術、そして生産技術の構築には、ソフトウェア技術よりも多くの時間を要します。ソフト面で遅れをとる日本ですが、このような掛け算のビジネスの中に、日本企業の勝ち筋があるかもしれません。CRAIFの技術の製品化にはもう少し時間がかかりそうですが、今後の展開に目が離せない企業です。

*正に帯電したナノワイヤが、負に帯電したエクソソームを静電作用で吸着
**Googleなどが出資する米グレイル社の成績は59%

2. Bisu 自宅で行う尿検査

スクリーンショット 2021-08-23 23.44.28

Bisuは自宅で尿検査を行うための新たなデバイスの開発を手掛けるスタートアップです。前回「次世代の尿検査 Vol. 3」で紹介したHealthy io.は、既存の臨床検査市場でもよく使用されている尿試験紙を家庭用検査に持ち込んだものでした。しかし、同社のデバイスは、マイクロタスを活用したもので、これまでの尿検査用検査キットとは一線を画しています。

肝心のデバイスの形状、使い方については、以下の動画が参考になります。

尿をデバイスに供した後は、専用の読み取り機に差し込むだけです。Healthy io.と異なり画像撮影が不要であることが、大きなアドバンテージになって、そのユーザビリティは非常に高いといえます。非侵襲で、感染性の低い検体ですが、やはり汚染なく使えることは魅力的です。

流路内の小さな反応場では、合計18項目の測定を可能にしており、主たる検査項目は、グルコース、ケトン、リン酸、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、尿酸、pHなどです。データはすぐにスマートフォンに送られ、専用のアプリで確認できます。解析結果からは、糖尿病や痛風などの生活習慣病のリスク判定ができることに加え、栄養バランスなど健康に関わる状態を推定できます。

ここからは推測にはなりますが、マイクロ流路内に試薬を充填、あるいは塗布しているのであれば、検体の前処理なども可能になります。作り込めば、ばらつきの大きい尿中のバイオマーカーを安定的に測定することができるはずです。

CRAIFに続き、同社の技術もソフトウェアだけではなく、測定デバイスの性能が、データの鍵を握っています。AIやIcTを技術の主体とするスタートアップ、大企業の台頭が著しいため目立ちにくいのですが、そもそも測定デバイスがなければデータは取得できません。また、AIを用いた画像診断が目立ってはいますが臨床検査は何も画像診断だけではありません。

ソフトウェアとハードウェアの開発、両方が重要です。
今、ここから何ができるか、既存技術、新規技術のどのような掛け算が考えられるのか、既存企業もスタートアップもそれぞれの立場から考えて見ると、さらに臨床検査の未来が開けるかもしれません。

出典:
1. CRAIF  https://craif.com/
2. Bisu  https://www.bisu.bio/about/









この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?