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Column:学び直しSDGs vol.2

前回はSDGsの大まかな意味や意義について整理しました。今回はSDGsの各ゴールについて外観していきます。

SDGsでは、(将来世代や環境なども含めた)様々なステークホルダーの利害がバランスした活動が求められています。各ゴールを眺めることで、どのようなステークホルダーがそれぞれどのような課題を抱えているかを知ることができます。そうすると、求められている活動(やるべきこと)とともに、部分最適な活動にならないためにどのようなことに気をつけるべきか(やらない方がよいこと)が自ずと見えてくるのではないかと思います。


17のゴールを読んでみる

ロゴに書かれている短いタイトルだけでは、発展途上国の課題のように読めてしまうものもありますが、全文を読むことで日本にも関係する部分がたくさんあることがわかります。
以下では、各ゴールの全文とそのゴールに関連する情報を簡単にまとめまています。(ゴールの文章は外務省訳)

1. あらゆる場所のあらゆる形態の貧困を終わらせる
世界中で未だに7億人以上の人が絶対的貧困に置かれています。日本でも、7人に1人の子どもが相対的貧困状態にある。こうした貧困は教育や健康にも影響し、先進国でも貧困の連鎖や固定化が問題となっています。
※相対的貧困…等価可処分所得が中央値の半分(貧困線という)以下の人のこと。2018年の日本の貧困線は127万円。

2. 飢餓を終わらせ、食糧安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進する
世界では、8億人弱の人が栄養不足の状態にあります。日本においては、食料自給率が低いことや農業の担い手の不足などが問題となっており、気候変動に伴う異常気象などのリスクの高まりも相まって、食糧安全保障の観点から効率的かつ強靭な生産体制が求められています。

3. あらゆる年齢のすべての人々の健康的な生活を確保し、福祉を促進する
毎年、ワクチン接種や基本的な医療が行き届かないために、5歳の誕生日を迎える前になくなる子どもが世界中で600万人を超えています。ワクチン供給の不平等などの問題は、変異により新たな感染症が世界中に広まるリスクを高めてしまいます。
日本では、高齢化に伴う介護の担い手の不足や医療・福祉サービスの地域格差などが深刻な問題となっています。こうした課題の解決には、介護の人材確保や効率化、健康寿命の延伸のための予防的な取り組みも重要となります。デジタル技術を利用した遠隔診療なども活用が進んでいます。
※2040年には65歳以上の割合が35.3%を超えると見られています。

4. すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進する
開発途上国では、いまだに5,700万人の子どもたちが学校へ通えていません。質の高い教育は、貧困の連鎖を断ち切る上で非常に重要で、SDGs達成のために欠かせない要素です。一方で、質の高い教育の提供のためには、健康な生活や平和で安全な環境が必要です。
国内では、高齢化に伴う生涯学習の促進や不登校児童の問題への対応、貧困や地域による教育格差の是正などが求められており、遠隔授業やサテライト教室、PCやタブレットの配布による教育のDXが進んでいます。

5. ジェンダー平等を達成し、すべての女性及び女児の能力強化を行う
女性の活躍は経済成長の拡大と社会開発の促進に欠かせないものですが、世界的に見ると教育や婚姻、その他様々な面でジェンダー平等が実現されていない地域が多くあります。日本においても機会の均等が実現しているとは言い難く、女性活躍推進法が目標とする女性管理職割合30%にも遠く及ばない状況です。また、DVなどの社会問題への対応も必要です。

6. すべての人々の水と衛生の利用可能性と持続可能な管理を確保する
世界では、糞便によって汚染された劣悪な水環境等のために亡くなる人が後を絶ちません。こうした課題は、ゴール2や3とも繋がっており、衛生の問題によって大きな経済損失が生まれています。また、気候変動によって水不足は先進国においても深刻な問題になると考えられています。持続可能な水資源の利用のため、排水の汚染対策や水資源の効率的な利用が、あらゆる業種で求められています。

7. すべての人々の、安価かつ信頼できる持続可能な近代的エネルギーへのアクセスを確保する
世界では電力を利用できない人々が10億人弱も存在しており、そうした地域では医療や教育を十分に提供することが難しくなります。また、世界中で電力需要は急増しており、温室効果ガス排出量の少ない電力を安定的に供給できるかどうかが今後の経済発展を左右すると言っても過言ではないでしょう。災害の多い日本においては、再生可能エネルギー比率の向上だけでなく、より安全な発電技術の開発・普及が求められています。

8. 包摂的かつ持続可能な経済成長及びすべての人々の完全かつ生産的な雇用と働き がいのある人間らしい雇用(ディーセント・ワーク)を促進する
世界的に見ると労働人口は増加しており、あと数年のうちに新たに数億件の雇用創出が必要となります。働きがいがあり、高い賃金が安定して得られる仕事は、個人が尊厳を持って生きるために重要です。反対に、失業者や貧困層の増加は社会不安や分断を引き起こし、平和を脅かすことにも繋がります。
日本においては、世界的に見た生産性の低さやブラック企業への対策のために、多くの企業で働き方改革などが進められています。また、障がい者や女性、アクティブシニア等の活躍推進は、労働力が減っていく日本にとって重要な課題となるでしょう。

9. 強靱(レジリエント)なインフラ構築、包摂的かつ持続可能な産業化の促進及び イノベーションの推進を図る
経済成長、気候変動対策にはインフラや持続可能な開発への投資が必要です。現在でも道路や情報通信、衛生施設、電力、水といったインフラが未整備な国はまだまだ多くあります。また、雇用の創出のためにも産業化の促進が重要です。
日本では、道路や橋などの老朽化と整備のいたちごっこや交通インフラの地域格差による高齢者の移動の困難などが課題となっています。

10. 各国内及び各国間の不平等を是正する
世界中で経済発展とともに所得や資産の格差は拡大しており、公正な取引の推進や金融システムの改善や必要な地域への開発援助などが進められています。児童労働や低賃金で不当に労働力を利用することは日本にも関係のないことではないはずです。あらゆる企業において、サプライチェーン上での公平かつ公正な取引、サプライチェーンを通じた支援が求められています。

11. 包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現す る
2030年には50億人の人が都市で暮らすようになります。そうした人々を包摂できるような住居やインフラ、都市計画が無ければ、交通は混乱し、郊外にはスラムが広がってしまいます。
ゴール9とも重複しますが、特に日本では高齢化に伴うスーパー、病院、施設等へのアクセス困難や行政のサービス負担の増加などが課題となっており、企業の参画が重要と言われています。
また、住み続けられる街の実現には、文化の振興も欠かせない要素の一つです。

12. 持続可能な生産消費形態を確保する
現在のペースで消費を続けていると2050年には地球が3つ必要になるといわれており、持続可能な消費の実現が叫ばれています。
日本では、特に食品ロスやファストファッションの廃棄の問題が有名です。

13. 気候変動及びその影響を軽減するための緊急対策を講じる
産業革命以後の気温上昇を1.5℃未満に抑えることが目標です。気候変動を放置すると、災害や不作による食料・水の不足により、貧困が拡大し、紛争が発生するリスクも高まります。結果として、対策をとった場合よりも大きなコストがかかってしまうと考えられています。

14. 持続可能な開発のために海洋・海洋資源を保全し、持続可能な形で利用する
海は汚染物質の分解や食料資源の提供など、人間の活動に欠かせない役割を持っていますが、海洋プラスチックや水質汚染、乱獲などの問題によってその状態を維持できなくなってきています。
マイクロプラスチック等の生体濃縮の問題は魚の消費量の多い日本人にとっては他人事ではありません。化粧品メーカーなどでは、マイクロビーズの利用を控える動きが進んでいます。

15. 陸域生態系の保護、回復、持続可能な利用の推進、持続可能な森林の経営、砂漠化への対処、ならびに土地の劣化の阻止・回復及び生物多様性の損失を阻止する
森林は空気や水の浄化、食料資源の提供など無くてはならない存在です。このような能力は森林だけでなくその中に存在する生物の多様性に支えられています。森林の管理不足や無計画な伐採による砂漠化や生物多様性の減少を防ぐ必要があります。
日本においても、管理されていない森林が多くあり、土砂崩れリスクや鳥獣害の増加が問題となっています。
また、消費者には革製品などの原料が公正に取引されたものどうかを見極めることなどが求められます。

16. 持続可能な開発のための平和で包摂的な社会を促進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供し、あらゆるレベルにおいて効果的で説明責任のある包摂的な制度を構築する
あらゆる人の公平な司法へのアクセスを確保することは、紛争の解決や教育や医療の提供など他のゴール達成の基盤となります。

17. 持続可能な開発のための実施手段を強化し、グローバル・パートナーシップを活性化する
SDGsの目標を達成するためには、あらゆる主体が協力・参加することが必要です。例えば、NPOやNGOは社会課題解決のノウハウを持っている代わりに、資金が不足しているという問題を抱えている場合が多く、企業とパートナーシップを組むことで活動が加速することが期待されます。また、SDGsの文脈の上では、顧客すらも同じ目的を達成する協力者となり得るのです。こうした視点が新しいビジネスを生むことに繋がるかもしれません。


いかがでしたでしょうか?
全体を眺めてみることで改めて各ゴールが互いに関連し合い循環していることや、SDGsがあらゆるステージの国や企業、個人に関係する目標であることがわかります。

次回はSDGsに企業が取り組む意義について見ていきます。


参考

[1] 『SDGs入門』, 村上芽・渡辺珠子 著, 日本経済新聞出版社.

[2] 『SDGsが生み出す未来のビジネス』, 水野雅弘・原裕 著, 株式会社インプレス.


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