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Insight: Facebookの企業買収

これまでのGoogle、Amazonに続いて、Big Techの中でも特に特徴のあるFacebookによる企業買収を確認していきましょう。

○Facebook
Facebookは”コミュニティづくりを応援し、人と人がより身近になる世界を実現します。”をミッションとして掲げ、これまでに社名にもなるSNSサービスFacebookや写真共有サービスInstagram、そして米国のメッセージアプリWhatsappなどを運営しています。
今年7月には同社CEOのマーク ザッカーバーク氏がFacebookをSNS企業からメタバース企業に生まれ変わることを宣言しており、それに向けて様々な変革を進めています。メタバースとは、人々が自由に活動・交流できる仮想空間を意味しており、アバターを通じて様々なサービスを受け取れる空間を指します。Facebookの他にも、”フォートナイト”を提供するEpic Gamesなども関心を寄せている分野で、歌手米津玄師さんのライブを同サービス内で実施するなどイベントも数多く実施しています。

同社における企業買収の事例としては、先述のSNSアプリInstagram (2012年;10億ドル)Whatsapp (2014年;190億ドル) が有名であり、基盤を支える重要なサービスとなっています。

加えて、メタバースを推進する基盤となるVR技術を開発しているOculus VRも2014年に20億ドルで買収した企業です。

このように、Facebookも企業買収によって事業拡大を進めていますが、ここ数年はどのような企業を買収しているのでしょうか?2017年8月から2021年6月の取引を見てみましょう。その期間の23件の買収があり、そのうち8件がゲームスタジオの買収で最多となっています。Hardwareの分類した2社もVRデバイスの性能向上を目指したものです。直近14件の買収のうち9件がGame/Hardwareに関連したものであり、メタバース企業に向けて積極的に投資していることが伺えます。

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・Gaming/Hardware
ゲームを開発する多数の企業がある中で、Facebookが買収しているのはVRゲームを開発しているスタジオが半数 (BIG BOX, DOWN POUR, SANZARU, Beat Games) を占め、この傾向からもOculusのプラットフォームを活用したVRゲーム、さらにはメタバースの世界観の構築に注力していることが伺えます。

ここでは、Hardware事業に分類したCTAL-Labsを紹介します。
CTAL-Labsは2019年11月に買収された企業で、非侵襲のリストバンド型インターフェースを開発していました。このリストバンドは、脊髄から手の筋肉に送られる電気信号を無線を通じて端末に送信し、操作できるようにするものです。この機能は思考をデバイスに送るもので、メタバースにおけるコア技術になるのではないでしょうか、

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・その他
Facebookの未来に向けた取り組みとしてVR関連の企業買収が目を見張りますが、現在の事業への投資も行なっています。

CommerceとStreaming事業に分類したpackagdVIDPRESSOはビデオショッピングシステムとインテラクティブな動画システムを開発していた企業であり、共にFacebook Live (ライブコマース事業)の拡大を目指した買収です。

SNS関連では、ティーン向けのSNSであるtbhの他に、Instagramに統合されたGIPHYという企業を買収しています。GIPHYはオリジナルGIFの作成や検索等に使うことができます。GIFはこれまでのテキストや写真、スタンプだけでは伝えきれなかったリアクションを伝えることができ、新しいコミュニケーションの方法の一つになっています。

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LOL (Laughing out loud) の検索例
引用:『GIPHY』はおもしろGIFの宝石箱! SNSのやり取りが何倍も楽しくなる使い方

この他にも、Facebookが発行している仮想通貨Diem (旧 Libra)の開発に関連していると思われるブロックチェーンのスタートアップCHAINSPACEやSNSとの連携を通じてカスタマーサービスの改善を目指すKUSTOMERなどの企業も買収しています。

ここ数年の買収は、InstagramやWhatsapp, Occulus VRのようにすでに多くのユーザーを抱えている企業を買収する大型案件ではなく、現在のビジネス領域の拡大を目指した買収が多いのではないかと思います。

ただ、VR領域においては、特に注力して投資していることが伺え、複数の企業買収と自社技術が融合した先に新たなサービスの構築が期待できそうです。今後も激しい開発競争が進むと予想されるメタバース業界にどのようなサービスが生まれ、Facebookが覇権を握ることができるのか、要注目です。

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