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四角いスポンジと夢のステージ

  

1988年から始まってお茶の間をキラキラとした光で照らし
続けたテレビ番組がある。

フジテレビ
「とんねるずのみなさんのおかげです」
だ。  
 
とんねるずの二人が面白くてカッコよくて
周りに田んぼと海しかない町で育った
超田舎者の小学生の僕たちは一瞬にしてテレビの虜になった。

みんな木曜日の21時になるとドキドキワクワク
しながら番組を観る。 

小学生時代の僕達にとってヒーローは
「仮面ライダー」でも「ウルトラマン」でもなく
番組の中でノリさん演じる「仮面ノリダー」だった。     

よく友達の秀樹と一緒に「仮面ノリダー」ごっこをして遊んだ。 
二人ともノリダーをしたくて喧嘩になったよ。 
  

僕がテレビで吉本の先輩方を見て
芸人に憧れ始めるのは数年後の話。
 

 
ー2022年冬ー 
  
 
貴さん、IKKOさん、出演者のみなさん、番組スタッフのみなさん、
共演して下さったみなさん、応援して下さったみなさん、
本当にありがとうございます。 
 

僕は今、フジテレビで小川さんや大城さん、河本さん、脳さんを始め、
番組のスタッフのみなさん、応援して下さるみなさんのお陰で
「ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ2022」
に奇跡的に出演させて頂いた。  
 
新参者の僕に対して、番組でお会いした先輩方、
スタッフのみなさんは本当に優しく接してくれる。  
 
とても幸せでキラキラした空間。
ずっとその空間にいたかった。
 

そして何より今回モノマネさせて頂いている
IKKOさんにはめちゃくちゃ感謝している。
 
IKKOさんがいなかったら今回の僕のモノマネも番組出演もなかった。
 
この場を借りて「本当にありがとうございます!」
と何回言ってもIKKOに足りないだろう。

  
ーdear 秀樹ー 

僕はりんごぐらいの大きさ(表紙のもの)の
「四角いスポンジ」を30年以来の親友の秀樹に
10年ぶりに届けに行きたいと思ってるよ。

   

ー超田舎の人見知り少年時代ー  

僕は幼稚園、小学生と3月生まれて身長が一番低いこともあり
自分に全く自信がない子供だった。 

そんな僕にも小学生から中学生まで心の許せる友達がいたんだ。

秀樹だ。   

家も僕の家から徒歩1分とめちゃくちゃ近かった。
身長はクラスの真ん中ぐらい。
髪の毛はサラサラで坊ちゃん刈りとスポーツ刈りのハーフみたいな髪型。

スポーツは出来て足がめちゃくちゃ速い。
色白で生まれつきのアトピーでよく右手で左首をかいていた。
ただ僕と一緒で秀樹も超人見知り。
口ごもってしまって会話出来ない。  

  

小学生って残酷だ。悪気がなくてもアトピーっていうだけで
「気持ち悪い」と 僕が子供会のソフトボールに入る前にすでに
チームメイトからいじめられていた。 

 
僕もソフトボールを始めたのは3年生だったので
新参者&人見知りでもれなくいじめられたよ。
 
そんな僕に秀樹は唯一優しくしてくれた。
秀樹はめちゃくちゃ優しい。
いじめられいてる僕に「大丈夫?」と毎回声をかけてくれる。 

僕と喋る時は全然口ごもらなくてめちゃくちゃ喋る。

 
 
ーとんねるずとの出会いー 

小学校時代はビックリマンとキン肉マンで遊ぶことしかしなかった僕。
たまに田んぼでフナや小さいカブトエビを獲ったり
ドブでザリガニを捕まえてきて「何!?それ!?早く戻してきなさい!」
と、よく母親に怒られたもんだ。  
 
ドブでオロナミンCの割れたガラスで足を切って
8針縫ったのもこの頃。 

そんな僕に秀樹はいろんな知らない楽しいことを
教えてくれたよ。 

フジテレビ 
「とんねるずのみなさんのおかげです」

僕が初めてテレビを好きになったきっかけの番組。
   

そこには僕の知らないワクワク、キラキラしたテレビの
華やかで煌びやかな輝きがそこにあったんだ。

  

ー中学生の暗黒時代ー 

 

詳しく説明すると超暗くなっちゃうのでサクッと言うね。

秀樹と僕は剣道部で相当いじめられた。
顧問の先生と男子部員にね。

平成で受けたトラウマが令和になってやっと
昇華出来たぐらい引きずったよ。
(弱い者の気持ちがわかるので今では良かったと思う)

ところがどっこい。

剣道部の顧問の先生の体罰、 暴力から救ってくれたのが担任の女の先生。
(傷つける先生もいるけど救ってくれる先生もいる)

僕は「先生」という職業に憧れることになる。

同時に辛い現実を忘れさせてくれる 「お笑い芸人」にも憧れるんだ。

それからお互い中学を卒業。  
 
僕より先に剣道部を辞めた秀樹とは次第に
距離が出来て遊ぶ事が少なくなっていたんだ。

 

ー中学卒業後ー 

僕は地元の県立高校へ進学した。
秀樹は通信制の高校に行くことになった。 
あれだけ仲が良かったのに、それぞれ全く違う道を
歩み始める。

 
ー数年後の偶然の再開ー

 
僕は社会人になりながら 「先生になる」 夢を忘れられなかった。 
偶然、数年ぶりに兵庫県の「高速神戸駅」の ホームで秀樹にバッタリ。 

二人とも背丈や格好が変わっていても すぐにわかった。
「秀樹〜!」「修一〜!」
それから二人の近況報告。
秀樹は今は親戚のおっちゃんの職場で働いているらしい。

アトピーも水道水を変えたことで治っていた。
僕も当時はサラリーマンをしていたのでそのことを報告。

だけど昔「先生」に助けられたことで憧れた
「先生」になる夢が諦めきれないことも相談した。

秀樹は人と話す時にちょっと上目遣いで喋る癖がある。
だけどその時の秀樹は僕の両肩を力強く持って
正面に立ってはっきりこう言った。

「修一なら先生なれる。先生にいじめられたことがある俺らやん。
弱いものの気持ちがわかる先生っていいやん!!
修一が先生になって当時の俺らみたいなやつ助けたってや!!!」

秀樹は僕の目を見てゆっくりと頷きながら
「絶対にお前なら先生になれる!」
を何度も何度も連呼する。 

僕は単純なんで催眠術にかかったように
何だかやれる気がしてきた。 

秀樹に力強く握られた両肩が少し痛かったけど
それ以上にとても嬉しかったよ。   

 
 
ー数年後ー 

 
僕は「先生」になるために働きながら
京都の通信大学を通うことにした。
 
今まで勉強なんて全然してこなかったツケが回ってくる。 

普通の人なら「1年」で取得出来る教員免許を通信制の
期限ギリギリの「6年」かかって教員免許を
取得して先生になったよ。 

  

ー先生になってー

 
毎授業、少しでも面白くてためになる授業を心がけた。
生徒を笑顔にして楽しく学んでもらうことが
僕の生き甲斐になっていたんだ。 

 
今日も部活が終わって23時ごろまで残業している。
そんな毎日が続いたよ。  

  

ー数ヶ月後ー

僕は2年生のクラスを副担。 
同じクラスの担任の先生が突然
病気で亡くなった。 
  

僕は担任の先生とよく対立していたけど
生徒思いのとても優しい先生だった。 

ーお葬式が終わってから数日後ー

今日も僕は21時を過ぎても授業のプリントを
作ったり仕事をしている。 

 (ちょっと休憩…)

職員室を出てトイレに行った時、鏡で自分の顔をふと見た。
げっそりと痩せ細っていて目の下にくまがあった。

(ガラガラッ) 

僕は職員室に戻って自分の将来について考えた。
憧れていた2つの職業。 

「先生」と「お笑い芸人」  

ー10年後を想像ー 

しんどいながらもやりがいを持って「先生」をしている自分が想像出来る。 

次はお笑い芸人。 

想像だけど
「お笑い芸人」をしている 自分が想像出来る。 

 
ー30年後を想像ー 

ちょうど前日亡くなった担任の先生の年齢だ。 

…。

…。 

 

僕はいくら先生の自分の姿を想像しても真っ暗で教壇に
立っている自分を想像出来なかった。    

だけど。

「お笑い芸人」をしている自分は何となく想像出来た。 
(人はいつ死ぬかわからない。このままで後悔しないか…) 

  

ー数年ぶりの秀樹との再開ー

 

数年前と全く一緒「高速神戸」駅のホームで
偶然秀樹に出会った。

秀樹は色々と理不尽なこともあるけど頑張って
仕事を続けているらしい。 

顔も数年前よりもふっくらしてたよ。
僕も現在の自分の状況を報告。

 

すると秀樹はまた僕の両肩を力強く掴んで
しっかり目を見てこう言った。

「な、言った通り先生なれたやろ!!」

めちゃくちゃ嬉しそうに
僕よりドヤ顔で興奮している。

ー秀樹にお笑い芸人のことを相談ー

僕は正直「お笑い芸人」を目指すことに自信はなかった。 
先生の職業が大好きだ。 生徒も大好きだ。  

 

同じぐらい「お笑い芸人」 も大好きだ。

僕が自信なさげにもじもじして相談すると
秀樹が再び僕の両肩を力強くガッチリ掴んで
しっかり目を見てこう言った。  

他の人には目を全然合わせないくせに。

「絶対に出来るよ!笑顔にするって素敵な仕事やん!」 

 

僕は秀樹のまっすぐで僕を信じてくれている
眼差しに急に照れ臭くなった。 

    

ーそれからー

 
僕は一度だけ秀樹をご飯に誘った。 

秀樹
「ちょっと体調悪いから元気なったら連絡する!!」 

ーそれから数年後ー 

結局。 
僕が秀樹と会ったのは数年前に会った駅のホームが最後になったよ。

 

秀樹のおばちゃんが言うには あれから病気になって体が思うように
動かなくなって仕事が出来なくなったらしい。 

  

仕事を辞めた秀樹は競馬と亀の世話が趣味だったらしい。
秀樹はたまにリハビリを兼ねて外に出て散歩をしていた。 
 
(間違いなく今度あったら競馬を勧められていたと思う)

 

夜に海に散歩に出たその途中で 足を滑らして海に落ちて
帰らぬ人となってしまったんだ。  

亡くなった年にお線香をあげさせてもらって以来、
僕は10年間一度も秀樹に会いに行っていない。

僕の中で秀樹は心の中で生きているって言ったら
カッコ良すぎるけど、正直現実味が全くないから。 

 
ー10年後ー  

 

僕は芸人になった。 

 荒川の土手住んで半年暮らして心臓数箇所焼いて
世間知らずに人を信じて東京で騙され一文無しになった。
 
都落ちして日本語学校で先生やって
児童支援員やってメイド喫茶で再復活してなど
色々とあったけど自分の人生後悔はしていない。

 

ーとんねるず貴さんとスタッフのみなさんー  

「ザ・細かすぎて伝わらないモノマネ2022」の収録 が終わった。

想像を絶する豪華なセットにフジテレビで収録。

 

僕が少年時代にワクワクして輝いていた
あの華やかな世界にいろんな方のおかげで立たせて頂いた。 

 

いろんな偶然が重なって収録後に最後に貴さんと
偶然出会うことが出来た。 
(秀樹と一緒に観てた貴さんだ!!)


「お、お疲れ様です!!」 

僕はあの時のテレビに憧れてた小学生に戻っていた。 

僕が着替えの最中だったので格好は巣鴨の赤パンを履いて
ピンクの服を着ている顔はすっぴんのIKKOさん。 

貴さんは赤パンパンイチの僕を見ても
優しく笑って会釈をしてくれた。 
(秀樹〜!上から見てるか!!あの貴さんやで!!)

 

 

   

ーフジテレビの帰り道ー 

収録が終わって数時間経ったのに 今だ興奮と熱が冷めない。
僕はふとフジテレビの球体を下から携帯で撮った。

  

家に帰ろうと駅に向かったつもりが、りんかい線とゆりかもめを間違った。
海風を感じながらフジテレビの周りをぐるぐるぐるぐる回ってしまった。

それでもIKKOに体の熱気と興奮が取れない。

 

僕は背負ったリュックから一つのりんごぐらいの
大きさの四角いスポンジを取り出した。

 

このスポンジは番組のスタッフさんに
お願いして一つだけもらったものだ。  

  

これはモノマネが終わって穴に落ちてから怪我をしないように
穴の中にあるスポンジの一つ。

 

僕が少年時代にキラキラしてて憧れたとんねるずの貴さんの番組に
出させて頂いた証だ。  

  

ー10年ぶりに秀樹に報告ー 

 

僕はスポンジを握って空を見て呟いた。
「…秀樹…見てたか?あの貴さんの番組に出させてもらったよ…」 

 

天国に居る秀樹に向かって報告した。 

 

周りの同級生は結婚をして子供が産まれて
いわゆる普通の生活を過ごしている。

僕が今も「芸人」をしていると言うと
呆れた感じで嘲笑する。 
 
それが当然だし仕方ないと思う。

 
秀樹
「お前なら出来る!」 

いつも僕を受け入れて全力で応援し続けてくれた秀樹。

普段はオドオドしてるくせに僕を励ます時だけ
しっかりと正面に立って僕の目を見て力強く
両肩を力強く握ってくれた。

僕はそっと右手で左肩を触って「高速神戸駅」で秀樹の握ってくれた
時のことを思い出した。 

(あれ!?)

急に涙が溢れてきた。

夢のような現実と秀樹の「死」を受け入れようとしなかった
パンドラの箱の鍵が左肩を触ったことで一気に脳裏に止めどなく
フラッシュバックしてきた。 

  

「秀樹〜、うぁ〜ん、わ〜んわ〜ん」

   

40過ぎたおっさんがフジテレビを見上げながら
四角いスポンジを持って泣きじゃくっている。  
 
見た目が大人になっても僕の心はずっと小学生のまんま。
周りから見えるほど、周りから思われるほど、
自分自身は全然大人じゃない。成長していない。
 
秀樹は昔の弱かった僕を知っていて
僕が唯一心を許せる友達。

 
その秀樹がもういない。 
10年前の現実を受け入れる準備中なのか
感情の波と涙がIKKOに止まなかった。

 
見た目はすっぴんのIKKOさんが謎のスポンジで
フジテレビ前で涙を拭っている。鼻水もジュルジュルだ。 
 
まさにカオスである。  
     

ーそれからー

僕は10年ぶりに四角いスポンジをお土産に
海に行って秀樹に会いに行こうと思う。 

「秀樹、このスポンジ何やと思う!?」

って。

僕の話を一通り聞いたら
「な!!お前やったら出来たやろ!!貴さん!?会えてよかったやん!!」

って 僕よりドヤ顔で興奮して
純粋な眼差しで空から言ってくれると思うんだ。

 
 
ー最後にー 
 
貴さん、IKKOさん、出演者のみなさん、番組スタッフのみなさん、
共演して下さったみなさん、応援して下さったみなさん、
本当に本当にありがとうございました。 

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