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転生した魔王は令和のコンビニに沼って帰りたくない件


「勇者……達よ、見事…この私を倒した…褒めてやろう。だが、数百年後、吾輩は再び蘇るだろう。それまで短い平和を楽しむがいい」

魔王は高らかに笑うと、黒い魂は上空へと上がっていくと闇の中へ消える。
「くそ、あの勇者と仲間達、なかなか強かったなぁ。次こそは倒してやる。それよりもここは……どこだ……ここは冥界ではないではないのか?」

魔王の魂は一度冥界へと戻り、そこで数百年間の
眠りにつく。はずだったが
今回は違っていた、何かの手違いか?
運命の悪戯か?魔王の魂は令和の現代に、
飛ばされた。

そこは高層ビルが立ち並び、絶え間なく人が行き来する。黒い魂は人波の中へ入ると、顔をジロジロと見る。  

「コイツラは人間か?しかし、なんだ?あの建物は?ここは一体……ま、まずい、早く何か何かに入らないと」
黒い魂は人の群衆を抜け、裏路地、繁華街、オフィス街を彷徨うが、魔王が気に入るものはなかった。
このままでは魔王の意識が遠のいて、消滅してしまう。焦りだしていた、その時

河川敷で倒れている1人の青年に、数人の警察官と沢山の野次馬が群がっていた。まさに渡りに船
「なんだあれは?おぉ…人間が倒れている。よし、アイツにしよう。」
魔王バルザックは一直線に倒れている男の身体へ入り込む

警察官が野次馬を整理している中、男に入り込んだ魔王バルザックが入り込んだ身体は、ムクッと上半身を起こすと、ゆっくりと立ち上がる。

近くにいた警察官が驚いて腰を抜かす。
「おい、生き返ったぞ。ちょっとこっちに来い」  
その様子を見ていた野次馬が再び騒ぎ出し、携帯電話で撮影する人間も出てくる。「後ろに下がりなさい。」その野次馬を押さえる警察官

「おい君、大丈夫か?怪我はないか?」
「なんだ貴様は?この私に軽々しく話しかけるな」

魔王バルザックは話してきた警察官にそう言うと、隣に来た
警察官にコソコソと話すと、数人の警察官が周りを取り囲む、イライラした魔王は移動魔法を呟く、
「テレポ」一瞬でその場から消える。

警察官と野次馬は驚き、周りをキョロキョロ
「何してる、早く捜索しろ」野次馬も今のは
何だったのかと騒いでいた。

テレポで移動した場所は、築数十年のおんぼろアパート・火無菊莊の外観に魔王バルザックは「なんだこのボロ小屋は……こいつはこんなところに住んでいたのか」魔王バルザックは、この男の過去を自身が持つ特殊能力で遡り始める。

魔王バルザックの頭に記憶がなだれ込んでくる
目をつぶり、様々なことを瞬時に学習する。

「なるほど、この男の名前は影山あすか、年齢は23歳…ん?なんだこいつ……過去が読めない、まぁいいか、それより私の家はどこだ?」2階へ続く階段を上がると、記憶を辿り1番奥の部屋が自分の家だとわかると、早足で部屋の前に立つと、鍵穴に鍵を差し込みドアを開け中へ入る。

「なんだこれは」中へ入ると足の踏み場もないほどのゴミが溢れかえっていてる。
雑誌や飲みかけのジュースが、無造作にちゃぶ台に置かれハエがたかっているその様子に、魔王バルザックは魔法ヴァニタスを発動、目の前の散らかったゴミは一瞬で消えると、ちゃぶ台と敷きっぱなしの布団と古いテレビだげが残る。

「この私が疲れるとは……屈辱」魔法バルザックは
ヨタヨタと布団の方へ歩くと、布団の上に大の字に倒れると、そのまま眠りにつく。

「おい、お前は誰だ?」夢の中に1人の男が現れる
魔王バルザックの前に現れたのは、影山あすかだった。「貴様は、影山あすかなのか?」

「あぁ、そうだよ。それよりお前は何者だ?」
魔王バルザックを見下した態度で、接してくる影山あすか。

「私は魔王バルザック、お前は死んだはずじゃ」
影山あすかの頭に????が浮かぶ
「魔王?バルザック?俺が死んだ?何を言ってんだお前」腹を抱えて笑いだす。その様子に怒りだす
魔王バルザック「貴様、我を侮辱するか」
「わりぃ、わりぃ、で?その魔王様が俺の身体に勝手に入ってくるとは、いい度胸してんなぁ?」

急に真顔になると、
ドスの効いた低い声で魔王バルザックに詰め寄る。
「なんだ…この私とやる気か?」
上から影山あすかを見下ろす。
「ほぉ……魔王様、今あなたの立場が悪いってことは理解できてますか?」
「貴様、まさかこの私を追い出す気か?」

魔王バルザックは一歩後ろへ下がる
ニヤニヤとしながら、話を続ける。
「お前が俺の身体に入った直前、俺はまだ死んではいなかった、いや死にかけていたって方が正しいかな?そのタイミングでお前が俺の身体に入ってきた。そして二重人格として復活、そこでだ、バルザックさん、お願いがあります。」

「なんだ、気持ち悪いなぁ」
急なお願いに戸惑い出す、魔王バルザックは
背筋を伸ばし、影山あすかを凝視する。
「俺の代わりに人生を謳歌してくれないか?」

人生を謳歌するだと?????

突然のことに言葉を失う、人生を謳歌する
どういう意味で、そんなことを言ったのか魔王バルザックは理解できずにいると、

「俺の身体をお前に貸す代わりに、魔王様は俺の代わりに果たせなかった人生を謳歌する。悪くないだろ?」

魔王バルザックは少し考えると「わかった、この私がお前の果たせなかったことをしてやる。だか一つだけ聞いても、いやのなんでもない、忘れてくれ」

影山あすかはフッと笑うと、「わかってる。いつか話す、いつかな」そう言うと姿は消えていき目が覚めると、外は朝になっていた。

時間は8時ちょうどになるところ、布団から起き上がると腹がなる。「腹がへったなぁ。確か冷蔵庫という箱に食べれる物が入っているみたいだが、これか?」魔王バルザックはゆっくりと小型の冷蔵庫を開けるが、中身は空だった。

「くそ、何も無いではないか、あの男め」冷蔵庫のドアを閉めると、ポケットに財布が入っていることに気付く。
ポケットに手を突っ込み取り出だす。

ボロボロの黒い財布を開けると、
クチャクチャになった千円札2枚と
百円玉2枚、五百円1枚、1円玉と5円玉数枚、
後はキャッシュカードとポイントカードが数枚入っていた。

「これが人間が使うお金というものか?さてと、なにか食うものを買いに行くか、しかし人間とは不便な生き物だなぁ、腹が減ると気分がイライラするとは、我ながら情けない」

パーカーを着て玄関まで歩くと、アディダスのスニーカーを履いて部屋の外に出る。
鍵を閉めると、「ちょうとあんた」後ろを振り返ると
小綺麗な格好した小柄な中年のおばさんがいた、歳は60前半ぐらいだろうか、魔王をジッと見ている

「ん?誰だおまえは?」魔王の反応に「何言ってんのよ、それより、貴方早く家賃払いなさい」

(家賃?なるほど、家に住むために金をはらうのか?なんてことだ?)と心の声を漏らす。

「ちょっと聞いてるの?貴方」訊いている頷くと
なら今週中に払ってくださいと言うと、その場を去っていく。

魔王は階段を降り、アパートの外へ出ると
車1台通れるかの道を歩くこと10分、開けた場所に
出ると、ある店が魔王の視界に入ってくる。
「あれはなんだ?店か?」

恐る恐る店に近づいていく、ガラス越しから店内を覗き込むと、中にいる数人の客が買い物をしていた
小さなかごに何やら大量に物を入れている様子に、
いても立ってもいられず店に入ろうとすると、自動ドアが開くと驚いて立ち止まると。

「なんだ、このドアは……勝手に開いたぞ?どうなってたんだ?」キョロキョロと見ながら、店へ入ると
口をあんぐりと開け、暫く動けずにいた。

(なに驚いたんだよ。魔王さんよ。)
頭に影山あすかの声が聞こえてくる。
「なんだ?なにか用か?」「腹減ってんだろ?」
店の中をゆっくり回りながら、商品を品定めする魔王はある商品の前に止まると、それを手に取る。

これはなんだ?不思議そうに見ていると
(魔王、それはカップうどんという食べ物だよ。)
「カップうどん?どうやって食べるのだ?」
(お湯を入れて食べる。簡単だろ?)
お湯を入れて食べるだと?……カップうどんを床に落とす。

「この魔王にお湯を入れたものを食べさせるとは、ふざけているのか?」と頭に呟くと、
「いいから騙されと思って買ってみろよ、なぁ」
影山あすかの説得に渋々、落としたカップうどんを拾ってかごに入れると、次はスナック菓子のコーナーに足を進めると、期間限定のポテトチップスに目が止まる。「ポテトチップス?幸せ濃厚バター?美味いのか?これ」

(これ買えよ。美味いから)うながされるまま買う
魔王は次のコーナーに行く。
飲みものコーナーは、炭酸飲料やアルコールがずらっと並んでいる。「なんだこの茶色い飲み物は?腐っているのか?」手に取るとまじまじと見る魔王に
周りはクスクスと笑う。(魔王、それはコーラという飲み物で、クセがあるけど美味しいよ。)

「そ、そうなのか?わかった。」一本かごに入れると
最後はおにぎり・サンドイッチが置いてある場所を見ていると、「んん?なんだこの黒い食べ物は?昆布?おかか?シーチキンマヨ?明太子?なんの呪文だぁ?」魔王が混乱していると、

(落ち着け魔王、これはおにぎりという食べ物で、そこに書いてあるのはおにぎりの具なんだよ。自分は鮭と昆布がおすすめだから、それを買いなさい。)

影山あすかの言うままに鮭と昆布のおにぎりを買うと、次はサンドイッチを見ているとタマゴサンドイッチに目が点になると、魔王は衝動的にタマゴサンドイッチをかごに入れると会計するため、並んでいる女性の後ろに立つ。自分の番になるとカウンターにかごを置くと、
店員が「袋いりますかと」聞いてくる。

魔王はお願いしますと言うと、商品のバーコードを機械で通す。カップうどん・ポテトチップス・コカ・コーラ・タマゴサンドイッチ・鮭と昆布のおにぎりの6点を買う、

「会計は1104円です。」お金を渡そうとすると
「すみません、パネルをタッチしてから現金を入れてください」

「パネルをタッチ?????」
募金箱の隣のパネルに気付くと、現金のパネルをタッチして、クチャクチャになった千円札2枚をお札用の差し込み口にいれるが、なかなか入らない。
魔王はお札に手をかざすと、新札へと変わると

もう一度、新札を差し込み口に入れると千円札2枚は吸い込まれる、それを確認すると魔王は会計のタッチパネルを押す。

ジャラジャラと小銭が出てくると、それを手に取り
財布の小銭入れに入れると、買った商品を入れたビニール袋を店員から受け取ると「ありがとうございました」魔王は軽くお辞儀をして店を出る。

歩いて来た道を戻る途中、数軒のコンビニ店がある
「MASON?singleMART?あれもコンビニ店なのか?」

(あぁ、そうだよ。さっきのコンビニ店はeight・ELEVEN、1番人気のあるお店だよ。)
コンビニの話をしていたら、アパートに到着
腹が減っていた魔王はダッシュで、部屋に戻る。
鍵を締め、靴を脱いで揃え、パーカーをハンガーにかける。

ビニールに入った商品をちゃぶ台に置くと、まずは何を食べようか迷っていると、魔王はカップうどんを手に取り名前をジッと見る。

「日仙の最強じん兵衛・海老天かき揚げそば?」包装のビニールを剥がしフタをゆっくり開けると、スープの元・火薬・海老天のかき揚げが入っている。
「これをどうすればいいんだ?」魔王があたふたしてると、

(最初はスープの素と火薬を入れる)影山あすかのアドバイスを受け、スープの素と火薬を入れると
(次は線のところまでお湯を入れる)と言うが、
魔王はお湯を入れるという行為が理解できなかった

「おい、お湯はどうしたらいいんだ?」
影山あすかは台所にヤカンがあるから、水を入れて
ガスで沸かせと、魔王は言われた通りに、水を入れたヤカンをガスコンロに置くと火をつける。

火力を強にして数分後、お湯が沸くとヤカンのお湯をカップうどんに注ぎ込みフタをする。
その隙に、昆布と鮭のおにぎりを包むフィルムをゆっくりと順番通りに剥がすが、海苔に亀裂が入りイラッとするのを抑え、すべてのフィルムを剥がした
時にカップそばが食べ頃の時間になる。

海老天のかき揚げをカップそばに入れて、そばをすすろうとした瞬間(魔王ちょっと待て、冷蔵庫に生卵がある。それを入れて食え、美味いぞ)

「生卵……それだけは喰えん、悪いがそれだけは無理だぁ」低い声で言う魔王に、(いいから、食えよ。)
魔王の意志とは関係なく身体が動き出す、冷蔵庫の前に座ると、白い卵を手に取ると卵を割って、カップそばに入れると魔王は絶叫「おい貴様、何をする、さっき言っただろ?生卵は苦手だと」

(いいから、早く食べてみろよ、ほら)
ゆっくりと畳の上に胡座をかくと、ちゃぶ台の上に置いてある。じん兵衛カップそばの紙のフタをゆっくり取ると、湯気といい匂いが鼻を刺激する。


「ア……ァァァァァァァァァァァァァァァ、なんだ、なんだ、この匂いは!!!」魔王はコンビニで貰った割り箸を両手で割り、左手でカップそばを持ち右手で割り箸を持つ、まずは茶色い汁を口に運ぶ。
「ハァァァァァァァァァァ、美味い。」汁だけじゃなく蕎麦もすする「おいおい、海老天のかき揚げを忘れてるぞ」

魔王は海老天のかき揚げを包んでいる袋を破いて、
汁の中に放り込むと、少し染み込んだ海老天のかき揚げをかじりつき一緒にそばを食べると、

魔王は言葉を失う。「人間はこんな美味い物を食べていたのか……」カップそばの上に箸を置くと、次は鮭のおにぎりと昆布のおにぎりを食べる。

まずは鮭おにぎりを口に入れようとしたが
「この黒いのはなんだ?食べれるのか?」
ジーーーッとおにぎりを見つめ、意を決して
口に入れると、海苔の風味と鮭と米の三重奏が
口の中て奏でられる。

「う………う……美味い美味い美味い美味い」
口いっぱい鮭おにぎりをほうばると咳込むと、
あらかじめコップに入れといたお茶をあわてて飲む
「はぁ………これも美味いのか?」
鮭のおにぎりを食べ終わると、昆布のおにぎりを手に取ると一口食べると、残りのじん兵衛のそばと海老天のかき揚げに絡みついた生卵を口に運ぶと、
魔王は目を閉じて昇天する。

あれだけ嫌いだった生卵が、そばと海老天のかき揚げにうまく絡み合って旨さが倍増していた。
もう箸が止まらず、おにぎりとカップそばを交互に
食べる。

おにぎりを食べ終わり、カップそばも食べ終わると
寂しさと充実感が押し寄せてきた。
(どうだ?美味かっただろ?)影山あすかが向かいのちゃぶ台に座って現れる。その顔はニコニコしていた。

魔王は背筋を伸ばし、影山あすかを見る
「そうだなぁ、どれも美味かった。私が住む世界にも、あんな店があれば。あぁ帰りたくない」
溜息をつく魔王にあすかは「魔王、悩みでもあるのか?」お茶をコップにいれて1杯飲むと「そうだなぁ。魔王を辞めたい」

「どうして、魔王を辞めたいんだ?」
 数秒黙り込むと
「1人になりたいんだよ」
首を傾げる影山あすか、魔王は誰もが恐れる存在、
それを辞めたいとは、どういう意味なんだと?

「1人になりたい?どうしてだ?」
ちゃぶ台を両手で叩くと「疲れたんだよ。魔王をやるのを、だから、だから1人になりたい。」
コカ・コーラを手に取ると、蓋を開け口をつけて飲むと「なんだ、このくせになる味は」

魔王はグビグビと、コカ・コーラを飲み始める。
のみ終わるとゲフとゲップをすると
「とにかく俺は魔王をやめる」コカ・コーラの蓋を閉め、冷蔵庫に入れると、食べたカップそばを台所へ持っていき汁だけ捨て空になった容器はゴミ箱に、片付け終わると

寝る前の歯磨きをするため洗面所へ
歯磨きをしてると、
「なぁ魔王さん、自分のいた場所へ帰りたいとは思わないのか?」
影山あすかは聞くが、魔王は首を横に振る。

「そうか、今は帰りたくないかぁ」それ以上はなにも言わず黙って消える影山あすか、
一瞥すると歯磨きを続ける魔王は、明日は何を食べようか?そのことで頭がいっぱいだった。

「今日、通りかかったコンビニに行ってみよう。」
そう呟くと、思い出し笑いをする魔王の目から涙が零れ落ちていた。

城の玉座に座り、勇者達を待っていたあの日
私は一人豪華絢爛の食事を1人でする。
味気ない、美味しくない、いつも心は
孤独だった。でも今は違う、この世界では自由だと

翌朝、予定の時間より早く起きるが、暫く布団の中でゴロゴロして朝の8時過ぎた頃に起きる。まずは布団をたたみ、寝間着から私服に着替えると急いで部屋を出る。

「あら、そんなに急いでどこへ行くのかしら?」
前から大家が歩いてくると、魔王はその横を通り過ぎよ、うとしたが引き止められる。

「ちょっとあなた、家賃はいつ払ってくれるのかしら?」魔王から影山あすかに変わると、「明日、明日払うので、それまで待ってもらえますか?」

そう丁寧に言うと「わかりました、必ず明日、お金を用意してくださいね。それじゃあ」
大家はそう言うと、踵を返して歩いていく。

「おい、家賃を払う金はあるのか?」
魔王は呟くと、影山あすかは笑う。
「あるよ、なかったらそんなこと言わねえよ、とにかくコンビニへ行くぞ」

魔王は階段を降りて、アパートの外へ出ると、昨日と同じ道を歩く、数分後、お目当てのコンビニ店に
到着する、さっそく中へ入るとATMの方へ足を進める。

(まずは金をおろすぞ、ほらカード出せ。)
魔王は財布を取り出し、何枚かのカード見る。
「これか?」みずな銀行のキャッシュカードをATMに挿入する。パネルに表示されると指示された通りにパネルをタッチ、暗証番号を押し引き出す金額を入力すると、家賃を含めた金額5万円が出てくる。

「なんだこの箱は?箱から金が出てきたぞ」
(この箱はATMという機械、稼いだお金を預ける金庫だと思えばいい)「鉄の金庫ねぇ。」
出てきた紙幣を取ると財布に入れて、買い物を始めようした時、

店の自動ドアが開くと、黒の帽子と黒いサングラス、黒いマスクをつけた長身の男が果物ナイフを持ってカウンターにいた店員を脅し始める。
「おい、金を出せ。早く」

若い店員はオドオドする、その様子を見ていた
魔王は長身の男に近づくと声をかける「おい、オマエ何をしてる」男は振り返ると、果物ナイフを魔王の前に突き出す。

「あぁ?なんだオマエは、」
右手の手のひらを前にかざし、スリープと言うと
長身の男がバタッとその場で倒れる。

「大丈夫か?君」
「はい、大丈夫です。」
店員はまだオドオドしていた。
早く、警察を呼んだ方がいいと言うと
もう呼んでいたのか、
数分後、警察官がやってくると、床に寝ている
長身の男を担いで連行する。

「ありがとうございます、ありがとうございます」
店員から感謝される魔王は恥ずかしくなった。
本来の行動とは違う真逆の行動をしたことで、
バツが悪くなりその場を離れる。外に出ると、


よく行くeight・ELEVENの店へ足を進める。
数分後、店の前に到着しコンビニの中へ入ると
カウンターには店長の中山誠二郎が立っていた。

数回eight・ELEVENに来て、買い物がてらに
他愛もない話をした時は、ニコニコと笑って
いたが、今の中山誠二郎の顔は曇っていた。

買い物しようとしたが、店長が気になり
魔王は話しかける「店長、こんにちは」

「あぁ、いらっしゃいませ」
魔王に挨拶するが、いつものような元気はない。
心ここにあらずと言ったところか、

「店長、なにかあったんですか?」
魔王は心配そうに訊いてみるが
「いや、なんでもないですけど」
素っ気ない態度をする店に魔王は、
魔法を発動する「スコープ」

店長の思考を覗き込むと、店長の長男で息子の
中山誠也(中学二年生)がコンビニの売り上げ金の一部を盗んでいたことが発覚、何故そんなことをするのか?
息子に直接聞こうとしたが、はぐらかされ聞けずじまいだったそうだ。

「なるほど、親子喧嘩以上の問題だなぁ、これは」
(おい魔王さんよ。まさか?首を突っ込まないよなぁ?)影山あすかは魔王に釘を刺すが、

「あのなぁ、この店がなくなったら、嫌なんだよ。それに」

「それになんだよ?もったいぶらずに言えよ」

「店長と話すのが楽しいから、その楽しみを奪う奴を俺は許さない。それだけだ」

「あの、どうかしましたか?」
ブツブツ独り言を言う魔王を、
店長が心配そうな顔で見ていた。
「あ、なんでもないです。」

気まずくなり、何も買わず外へ出る。
(おい、何も買わなくていいのか?)
影山あすかは不満そうに言うと、
「買うのは後だ、それより会いに行くぞ」

(会いに行く?魔王ちょっと待て、まさかオマエ)
魔王はアパートと反対の道、中山誠也が通っている中学校へと続く通学路を歩き出す。
「まずは本人に話を聞かないとなぁ」

中山誠也は授業が終わると、教室を出ててマンガ部がある1階へと階段を降りると、待っていたかのように中山誠也の前を遮り、虐め主犯格の3人は
中山誠也を男子トイレに連れて行く「誠也、金持ってきたよなぁ」

制服の襟元を掴み恫喝する今泉に対して
「悪いけど、お金は持ってきてない」中山誠也はキッパリと答える。
左にいる冴島は不機嫌な顔になり、中山誠也の頭を軽く叩く。「明日でいいから、金持ってこい、五万なぁ、絶対に忘れんなよ」 

後ろで様子を見てた、石田は「ばっくれないように明日、コイツのコンビニ行こうぜ」
三人の中で1番低い石田は、前に出ると中山誠也を
足蹴りする。

「そうだなぁそれがいい、誠也いいよなぁ?明日コンビニに行っても。」今泉は詰め寄っていくが、
中山誠也は何も言えず黙っていた。どうせ言っても
無駄だと、だから黙る選択をした。

「冴島、腹減ったからマック行こうぜ」
石田はつまんなそうな顔で言うと、冴島も
マックに行く気満々、今泉は「マックかよ、じゃあ奢れよなぁ、あっ金用意しとけよ。」

そう言い残して、マックの話をしながら男子トイレを出ていく3人、取り残された中山誠也は無言でトイレを出ると、マンガ部を通り過ぎ下駄箱へ向かう

自分の下駄箱から靴を出して履くと校庭に出ていく
校門をくぐって家路を急ぐ途中に、小さな公園がある、そのブランコに座っていた魔王は中山誠也を見ると、近づいて話しかける

「あの、ちょっといいかな?君は中山誠也君?」
知らない人に声をかけられ身構える。
魔王は怪しい者ではないという。君のお父さんが
(中山誠二郎)心配していると魔王が言うと、顔を曇らせたまま、ブランコの方への歩いて座ると

「アンタ、親父とはどんな関係なんだ?」

「どんな関係?ただ顔見知りだよ。けど、俺は困っている人間を黙って見ていられない正確なんでね、
親父さんの悩みを聞いたら、売り上げ金の一部がなくなることがしばしばあったらしいが、それは君がやったのかな?」

そう優しく魔王が訊いてみると、黙って頷く。
魔王は何かまだ隠していると思い、魔法(スコープ)を発動すると、明日虐めの主犯格3人がコンビニに来るのか、金を奪う映像が浮かんでくる。

なるほど、そう言うことか
コイツラが、金を巻き上げていたのか。
沸々と怒りが湧いてきた魔王は、
怒りを抑え中山誠也に言う。


「明日の朝、コンビニに行ってもいいかな」
その言葉にアタフタしだす中山誠也、
魔王は立ち上がり歩き出すと、立ち止まり後ろを振り返ると「大丈夫安心しろ。悪いようにはしないから。じゃあまた明日」

そう中山誠也に言うと、公園を後にする
ブランコで座って塞ぎ込む、明日が来なければいいとこれほど願ったことはない。

翌朝、9時半頃にコンビニに到着した魔王は、コンビニで買った野菜ジュースを飲みながら、中山誠也を待っていると、前から今泉・冴島・石田がこちらへ歩いて来る

「おい、アイツいないぞ。」黒の上下ジャージを着た石田が言うと「どうする?俺の家でゲームするか?」冴島が今泉に提案すると、今泉は携帯電話を取り出しLINEをする。

「アイツにLINEして、今から呼び出す。ゲームは後だ」

魔王はゆっくりと歩いて、3人の前に立つ。
「ちょっといいかな?君達」
3人は一斉に魔王の顔を見る。
「あっ?なんだよ、おっさん」
「俺等になんか用?用がないならとっとと消えろ」
石田と冴島はそう言うと魔王を睨みつける。
今泉は魔王に背を向けて、LINEで中山誠也とやり取りしていた。

「誠也を恐喝して、金を奪っていたのはお前らか」
今泉は携帯電話をポケットにしまうと
「なぁおっさん、アンタ、誠也の友達かなんか?」
両手をズボンのポケットに入れ、見下した態度で
魔王をジロジロと見ると、

「恐喝?おっさんさぁ、俺等が誠也を恐喝した証拠はあるの?」
冴島は勝ち誇った顔で魔王に言うと、
魔王は考え込んでしまう。
「証拠?」
3人は腹を抱えて笑う。
「おっさん、俺等は誠也と友達なの?恐喝なんかするわけ無いだろ?」
「そうそう、アイツは友達なんだよ」
今泉に同調する冴島と石田。

魔王はこれ以上話しても無駄だとわかり
「悪かったね時間取らせて、行ってもいいよ」
「わかればいいんだよわかれば、行こうぜ。」
3人はくっちゃべりながら、来た道を戻っていく。

「もう行きました?アイツら」コンビニの横にある
物置の後ろから出てくる中山誠也。
「なんだ、そこにいたのか?それよりちょっと協力できるか?」「え?協力って」
不敵な笑みを浮かべる魔王
「アイツラ3人を呼び出して欲しい」

午後2時35分、廃墟になった工場跡地に呼び出された今泉と冴島と石田、
「なんで?こんなところに呼び出すんだアイツ」
石田は携帯を弄りながら怒る。
「別にまぁいいんじゃねぇ。現金持ってきたなら」

「おい来たぞ。」奥の方から誠也が歩いてくる。
無言で3人の前に立つと「来てくれてありがとう」
丁寧に言うと、冴島は食い気味に
「金は持って来たんだろうなぁ?五万円」

誠也は知らないふりをする
「金?なんのことかな?」
石田は勢いをつけて誠也に右ストレートを放つが
それを軽くいなす。石田はバランスを崩して前に倒れる。

「テメェ、何してんだよ。」転んだ近くに落ちていた
鉄パイプを手に取り立ち上がると、それを誠也に振りかざすが、

「そんな武器で俺は倒せないぞ」
「う…う…噓だろ」
人差し指で鉄パイプを受け止める誠也に、
今泉も冴島も驚きを隠せない。

「なぁ、お三人よ、悪いことは言わない。もう誠也から離れてくれないか」

誠也の姿から魔王の姿へと変わる。
「お、お前はあのときの。」
驚く冴島と石田、今泉はあくまでも
冷静を装っていた。
「ど、どうする。今泉」
「心配するな。おいお前ら」
見るからにワルという風貌の輩が、物陰からゾロゾロと現れる。

「なぁ…今泉、コイツを殴っていいのか?」
赤い長髪の男が、今泉に訊くと「あぁ、矢島くん、ボコボコにしちゃって」その言葉に矢島は頷くと、「おい、おっさん悪く思うなよ。」

矢島は軽快なフットワークを踏み、魔王の距離を詰めるとフェイントからの右ストレート、魔王の顔にクリーンヒットすると、後ろに下がる。

「こいつ、やるじゃねえか」
唇から血が出るのを手で拭く魔王。
「へぇ、すぐに倒れるかと思ってたけどタフじゃん、けど、次で終わらせてやるよ」
再び軽快なフットワークをする矢島は、
また間合い詰めて左フック、それをかろうじて避けた魔王は右ストレートを矢島に当てる。

「うぁぁぁぁぁぁぁ」矢島は悲鳴をあげ、地面の下に倒れるともがき苦しむ。突然のことに、今泉・冴島・石田と矢島の舎弟達が驚く。

今泉が近づくと「矢島、大丈夫か?」
矢島が目を覚ますと「はぁぁ…は…はぁ」言葉を喋ろうとしたがうまく喋れない、魔王の鋼鉄の拳が、矢島の顎を砕いたせいで、喋れなくなったのだ。

「おい噓だろ、矢島がやられるなんて」
舎弟達が騒いでいると、今泉がポケットから
ナイフを取り出し、魔王に襲いかかる。

「死ねやぁ」
魔王は今泉のナイフ攻撃を避けて、腕を掴むと、
そのまま背負投げ、地面に叩きつけられ今泉は気絶する。

後ろに振り返ると、「おい、お前ら」
ビクっなる冴島・石田と矢島の舎弟達。
「はい、なんでしょうか?」魔王は指を指すと
「そこで寝ている2人を連れて早く消えろ。後、金輪際、誠也に恐喝するなって、目覚めたら言っとけよ、もし破ったら次は。」

「わかった言っておくから、それじゃあ、おい行くぞ。」今泉と矢島を担いで走っていく。
その後ろをずっと消えるまで見ていた魔王は、誰もいないことを確認すると、「インビジブル」そう言うと、中山誠也が姿を現す。

「あの…ありがとうございました」軽くお辞儀をすらと、「動画はちゃんと撮ってあるよな?」ビデオカメラを魔王に見せ、ちゃんと撮れているのを確認する

「これをYouTube?とやらに上げれば完了だぁ」
「でもいいのかな?こんなことして」
躊躇している中山誠也に対して魔王は厳しく言う。
「何を甘ったるいこと言ってんだ。そんなんだからなめられるんだろうが。」
魔王にキツく叱られると、黙り込んだまま工場跡地を出ていく。「ったく、おいちょっと待て、おい」
中山誠也の後ろを追いかける魔王

数日後、中山誠也は魔王の言われた通り、
あの日撮影された映像を編集してYouTubeに投稿すると反響は凄まじく、瞬く間に拡散されるとテレビやマスコミが学校に押寄せていた。

校長がテレビで頭を下げていた。それはほんの序の口で、ネットの特定班が虐めの主犯格を吊るし上げると、一斉に集中砲火、学校や主犯格の親の仕事場にもイタズラ電話や批判の電話がひっきりなしにかかりる異常事態に。

主犯格3人は数日後、学校からいなくなっていたが
同級生は誰も気にしてはいなかった。
風の噂では主犯格の親達もこの1件で、
職場にいられなくなり退職と同時に、学校を退学させたとも言われてるが、本当のところはわからない。正確に言えば誰も興味がなかった。

「本当、なありがとうございます。」
eight・ELEVENの店長(中山誠二郎)が何度も頭を下げる、それを辞めさせる魔王。
「いやいや、自分が勝手にしただけです。気にしないでください」

店長は軽く溜息をつくと「私も悪いんです。」
私も悪い……どういう意味なんだ?
魔王は考えていると、「息子をほったらかしにして
仕事ばかりしていたから、こんなことに」

今にも泣きそうな顔の店長を見て「いや店長は悪くないです。悪いのは恐喝をしたあの3人です。」
そう言うと「すみません。湿っぽい話をして」
誤魔化すように、魔王が持ってきた商品のバーコードを機械に通す。

魔王は、最近覚えた電子マネーで会計を済まし
帰ろうとすると、後ろにいた70代の老婆が
電子マネーを購入したいと言ってきたが、店長は
すぐに詐欺だと見抜き、警察に通報する

(魔王、また首を突っ込む気じゃないよなぁ?)
影山あすかの意見を無視して、魔王は老婆に話を聞いていた。















































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