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戦争とフジタ

フジタといえば、洋画と日本画が融合したような画風と、優美な女性やしなやかな猫の作品を思い浮かべる方が多いでしょう。もちろん、私もそうです。

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パリの香り溢れる優美な作品。「カフェ」

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激しい戦いの中も柔らかな体の動きが魅力的な「争闘(猫)」


かなり以前のことですが、国立近代美術館の常設展でフジタの戦争画を発見して驚いたことがあります。暗い色調の大きな戦争画がまさかそこにあると思わなかったのです。
そのフロアには他の画家の戦争画もありましたが、戦意を讃えるような勇ましい作品の中で、フジタの作品はなんというか、静かな祈りのような感情を思い起こさせたのを覚えています。


フジタが戦争画を描くことになった経緯は、日中戦争勃発後に日本に戻っていた際、陸軍報道部から戦争画を描くように要請があったからだそうです。

サイパン島

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決して戦争に賛成した作品を描いたわけではないのに、敗戦し連合国軍の占領下で、フジタは「戦争協力者」と非難されます。

それでも1949年に渡仏の許可が得られると「絵描きは絵だけ描いて下さい。仲間喧嘩をしないで下さい。日本画壇は早く国際水準に到達して下さい」という言葉を残してフランスへ移住し、生涯日本には戻らなかったそうです。

渡仏後、藤田は「私が日本を捨てたのではない。日本に捨てられたのだ」と語ったそうです。

フジタはいかにパリで成功しようとも、存命中には日本で認められることがなかったそうです。

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