なぜあの先生はいつも生徒を殴っていたのだろうか

昭和が終わろうとしていた頃の話。
やたらと生徒を殴る先生がいた。拳で殴るわけではないが、脳天にチョップを食らわせる行為は頭をグーで殴るのと痛み的には対して変わらない。

担任の先生の年齢なんて気にしたことはなかったが、多分もう僕はその先生の年齢を超えたはずだ。最後に人を殴ったのは多分中学3年生の時。体育のサッカーでエキサイトしたのが原因だと思う。あれ以来人は殴ってないし、今後も人を殴ることはないと思う。
40歳50歳にもなって毎日学校へ行って中学生を殴る人生は僕は絶対にイヤだ。

そもそも毎日のように生徒を殴る人生って楽しいのだろうか?

時には嬉しそうな顔をして、時には憎しみを込めた顔をして、全力で罵りながら、あの男は毎日生徒を殴っていた。
殴りたいから殴っているのが見え見えだった。延べ何百人の生徒を殴ったのだろうか。

「教育」や「愛のムチ」ではないのは殴る時の顔でわかる。
むかついたから殴る、本当にそれだけ。おそらく罪悪感はないだろうね。
楽しくないであろう自分の人生のストレスを生徒を殴ることで解消していたんだろうな。楽しかったら人を殴ろうって思わないよ。

思えば絶対に先生になってはいけないようなタイプの人間だった。
いつも不機嫌で、いつもイライラしていた。沸点もびっくりするほど低かった。
殴るのは善良な生徒ばかりで、本当に殴らなければいけない不良は見て見ぬ振りをしていた。

THE反面教師。

唯一後悔していること、それは殴り返さなかったことだ。
あれだけ殴られたんだ。一度くらい殴り返しても罪はないだろう。あの男と大げんかをしておけばよかった。僕自身が腕力のないヒョロヒョロ男だったから負けるかもしれないが、態度を示すことくらいはできたはずだ。それをしなかったからあの男はつけあがって弱い生徒を殴り続けたんだ。

それができなかった自分が情けない。
受け入れ続けた自分が情けない。
黙って耐えていた自分が情けない。

「先生を殴ってはいけない。やり返してはいけない」と真面目に信じていたのかもしれないが、あれだけやられたらやり返すのが生物的には正しい。

散歩しているとたまに通りすがりの中学生に挨拶される。
見知らぬおっさんに挨拶するようなあんなに純粋な子たちを殴れるか?
あの年代の子は、たまーに調子に乗って羽目をはずすかもしれないが殴るほどのことか?
殴り返さなそうな生徒を選んで殴るって家に帰って虚しくならないのか?

逆らわないとわかっている者だけを選んで、制裁を加えるという卑怯な行為。
それを情けないと思わないから何十年も続けるのだろう。
生徒よりも未熟な男が威張り散らしていた時代が確かにあった。

上司や先生という相手よりも上の立場を利用して、相手を抑えつける情けない男は令和時代こそ絶滅してほしいものです。

ありがとうございます。有意義なことに使います。