いつまでごり押しの新人教育を続けるのか

今から20年以上前、学生時代にピザの宅配のアルバイトを始めた頃の話。

「中免は持ってるんだね。じゃあ運転は大丈夫かな。とりあえずついてきて」
僕を教えてくれることになった先輩(M氏)は、ものすごい勢いで国道を走り出しました。渋滞している片側一車線の道路では、対向車線を逆走。まじかと思いながら、仕方なく僕もついて行きました。
交通ルールは守らなければいけないが、守っているとピザが冷めてしまう。社会の厳しさを思い知りましたね。

道路を逆走するということのインパクトが強すぎて、その他どういう教育を受けたか覚えていません。
彼は理屈で説明するのではなく、行動で示すタイプでした。
体育会系的なやり方なのかな。

ピザの配達は運転9:接客1なので、人の苦手な僕に向いていました。
それから半年くらい後に今度は僕が教育をする番になりました。
僕は彼とは真逆で理屈で説明するタイプです。
命に直結することなので、もちろん逆走を強要することはしませんでした。

「30分以内に届けなきゃいけないルールはないけど、いまだに文句を言う人はいるからなるべく急いで」
「渋滞や道路状況を考えて、最短コースを割り出すことが安全運転につながる」
「地図を覚えることが、時間短縮につながる。頑張って覚えてね」

まだ若かったので今より全然荒っぽかったとは思いますが、他の血気盛んな連中よりはやわらかい教え方だったはずです。

■新人教育に向いている人は全体の3%
新人としていろいろな場所で働いてきましたが、世間にはM氏のような人が圧倒的に多いような気がします。今もそんなに変わっていないでしょう。
新人が覚えやすいように、物事を体系立てて説明できる人はほとんどいません。
ほとんどの人は労働そのもので消耗してしまっているので、教育するエネルギーが残っていません。

「とりあえず覚えて」
「とりあえず頑張って」
「大丈夫だから」

そんなに新人に情報を詰め込んでも、処理できるはずがないのですが。社会はそれをやってしまうのです。
辞めていったら「あいつは根性がなかった」ことになる。
教える側に工夫やセンスが足りなかったということにはなりませんか?

新人に厳しくする、新人に甘くする。
そういう次元ではなくて、どうすれば新人が最短の時間で仕事を覚え、自分の意思で行動できるようになるか。それを常に考え、そのシステムを創ることのできる人がいる会社は強い。僕はそう思います。

ごり押しでは人はついてきませんよ。
力任せの新人教育は最も効率が悪い。
時には怒号だけが飛び交い、脳みそを全く使っていない状態になりやすいです。その状態でまともな仕事ができるはずがない。

仕事が出来ることと、新人を教育できるスキルは全く別物です。
スティーブ・ジョブズだって多分新人教育のスキルは皆無だったと思いますよ。

優しいだけでは人はついてこないし、厳しくすれば当然離れてしまう。
新人教育に向いている人に新人教育をさせる。それを徹底することでしか、会社の発展はないと思います。
特に中小零細企業は新人教育のエキスパートの存在が会社の命運を左右します。

頑張れだけでは人は頑張れない時代です。
新人を雇う以上、新人教育のエキスパートは必要です。
教える側、教えられる側双方を経験して痛感しています。

このままごり押しのパワハラ系新人教育が続くのならば、「新人教育士」という資格が登場するかもしれません。

ありがとうございます。有意義なことに使います。