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アートの制作者が一人で生計を立てる難しさ

前回からの続きだと思って書いてます。
が、この記事だけ読んでも簡潔する内容で書きます。
前回の記事のリンクを貼っておきます。

忙しい人向けのまとめ

美大では制作は教えてくれるけど、集客や販売は教えてくれない。
制作だけ頑張っても作品が売れる可能性は低い。
集客と販売を強化するにはギャラリーの協力が必要。
有名ギャラリーに無名の作家が押しかけても相手してもらえない確率が高い。
若くて元気な画廊を見つけて協力していきましょう。こんな、画廊はメディアで見つけることになるので、大抵は既に何人かの作家を抱えている。
相手してもらえるレベルまで自分を引き上げるにはまずはSNSのフォロワーを集めましょう。1000人くらい。

この記事を読んで欲しい人

ターゲットは美大生や美大卒業生です。
アートで生計を立てようとしている人を対象にしています。

美大では、絵画の制作技法、アートの歴史。
こういったことは教えてくれますが、
どのように展示先を確保するのか、
自信の作品をどのように販売するのか、
どのように観覧客を集めるのか。

生計を立てる上で実践的なことについては、
教えられないことが多い様です。

まず、大前提ですが、
制作活動
販売促進
このプロセスは全く別物です。

アーティストとして、作家として生計を立てていくには、
最低でも販売するまでの流れを組み立てる必要があります。

制作→集客→販売

この流れが必要なのです。
それなのに大学で教わるのは制作だけ。

集客と販売については知識がない。

制作については知識も経験も持っている美大関係者が多くいます。
そのため、この記事では制作の部分については特段触れません。

というか私はアートの制作をしたことがないので、
制作するという行為について話せることがありません。

制作→集客→販売という一連の流れ

この流れが出来ていないと、
アートに限らず、モノを売ることはできません。
普通に美大のカリキュラムを修了しただけでは、
販売するプロセスの経験を積むことはできないでしょう。

数値で表してみると、
制作:70
集客:1
販売:1
総合評価で70(70×1×1)
といった感じでしょうか。

集客や販売はプロの力を借りることもできます。
例えば有名なギャラリーです。

プロの力を借りて底上げすることで、
制作:70
集客:50
販売:50
総合評価175,000(70×50×50)
といった感じです。

この流れが見えていないと、
作品のクオリティを上げようと、
制作にばかり注力する人が多いです。

本当の問題は集客と販売にあるということに気づかないまま。

この状況説明として、
私の好きな漫画、HUNTER HUNTERのセリフから引用すると、
「極寒の地で全裸で凍えながらなぜつらいのかがわかっていないようなもの」

集客と販売を強化するための方法

一番簡単なのはお金で解決することです。
有名なギャラリーに出展料を払って展示する。

これはシンプルな解決法ですが、いくつか問題点もあります。
まず第一に、有名なギャラリーに相手をしてもらえるかどうか。
第二に、一日でも数万円ほどするであろう出展料を賄えるか。
第三に、もし展示できたとして、販売に至るかはギャラリーが呼べる客に依存する。

どんなギャラリーと協力すべきか

アート作品を販売する上で、ギャラリーの協力は必須です。
これから、アートで生計を立てようとしている人はなおさらです。
しかしながら、ギャラリーであればどこでもいい訳ではありません。

村上隆さんの芸術家闘争論では、
ギャラリーは5つに大別されると紹介しています。

1.金持ちと老舗のギャラリー
30年、40年以上、経営しているような老舗。資金が潤沢なので、若い作家はこういう所に行きたがるが相手にされる可能性は低い。

2.老舗ギャラリーの二代目
二代目が経営している場合は、経営状況が厳しい場合が多いようです。

3.若くて元気な画廊
比較的若い方が経営しているギャラリー。
芸術家闘争論と同様に、この記事を読んでいる方も若い人が多いと思います。
若くて元気な画廊を探すことを勧めます。

4.脱サラ組の画廊
絶滅危惧種。1990年代にアートが好きで、脱サラして始めたギャラリー。
オレオレギャラリストの傾向が強く、アーティストは翻弄されます。

5.ふろしき画商
転売屋。ギャラリーで若手作家の作品を買い、翌日には競売会や業界のセリに出す。今日2万円で買った作品を、明日2万5千円で売る。
こんな活動をしている人が意外と多く、競売会には数多くの出品があるそうで。

書籍に記載はありませんが、私個人の考えではふろしき画商には、
作家を大量に集めて参加費で経営するギャラリーも含まれると思ってます。
SNSでフォロワー数が少ない作家のアカウントが狙われている印象です。

「銀座の〇〇ギャラリーと申します。素敵な作品をSNSに投稿されているのでご連絡させて頂きました。この度、総勢50名のアーティストが作品を出品する企画展を計画しております。もしご興味あるようでしたらご連絡下さい。
出品料は通常一人、二万円なのですが、あなた様だけは特別に一万円とさせて頂きます。作品が売れた暁には、取り分は折半となります」

こんな感じのメッセージがInstagram駆け出しのころはよく来ました。

話がそれましたが、
アートで生計を立てていく作家が協力すべきなのは、
3.若くて元気な画廊
です。

30代~40代中盤くらいの方が経営している印象です。
ギャラリーという仕事は作家の作品をお客さんに売る。
つまり、仲介を行っています。
画廊というお店なので、そこにはお客さんがいます。
お客さんに作品を買ってもらいます。

しかし、仕事はこれだけではありません。
アーティストが注目されるようになると、
売る以外の仕事もする必要があるからです。

広報活動、雑誌、メディア出演、インタビュー。
これらの活動の仲介。
コラボグッズ作成の仲介。
海外から来るオファーシートの対応。
翻訳。
税務処理。

普通だと、ここまでギャラリーが面倒を見るのは難しいので、
作家とギャラリーで協力して、一緒に苦楽を共にしよう。
そういう関係を築けるギャラリストを探す必要があります。

そのくらい、ギャラリー探しは重要です。
こればかりは、地道に探すしかありません。

アートフェアに出展しているギャラリーの詳細を調べたり、
美術手帖などのメディアで取り上げられているギャラリーを調べる。

クラウドファンディングなど、
新しい取り組みをしているギャラリーを調べる。

SNS等で手あたり次第に若手作家に声をかけているようなギャラリーで展示する暇はありません。時間を無駄にするだけです。

若くて元気な画廊を見つけたとして、一緒にやっていくための施策

若くて元気な画廊を見つけた場合、
こちらから一緒にやりましょうとオファーをする必要があります。

しかし、オファーを受けてもらえるとは限りません。
メディアで見つけられるようなギャラリーは既にある程度の作家を抱えているはずなので、自分自身がどんな価値提供ができるか。
それをギャラリーにを示す必要があります。

慈善事業や趣味ではなく、
ビジネスとしてアートと向き合うならなおさらです。

具体的に思いつく案としては、
・作家および作品のブランディング、コンセプト作りを洗練させる
・SNSのフォロワーを増やし、影響力があることを示す

があるのですが、アートの良し悪しは私には分からないので後者を解説します。

アーティスト、作家がどんなコンテンツをSNSで発信するべきか。

シンプルな答えとしては、作家がどんな人物なのかを伝えることです。そして、作家にしか発信できないものを提供する。

・作家の人となりを伝える
・制作に使っている道具を紹介する
・コンセプトを文字で説明する
・制作過程を写真や動画で投稿する
・制作環境を写真や動画で投稿する

容姿に自身があるなら、顔写真を上げても大丈夫ですが、
そうでない場合は逆効果になるのでご注意下さい。

ネガティブな発言は人を遠ざけるので、
極力ポジティブな投稿をするようにします。

一番大事なのは投稿を継続すること。

目標はとりあえずフォロワー1000人に到達するまで。
期間がどのくらいかかるかはその人次第です。

これを説明して、
継続している人が私の周りには片手で数えられる程度しかいません。

続かない理由は頑張って投稿するからです。
一時的には頑張れますが、ずっと頑張るのは無理なので、
どこかでくじけるタイミングが訪れます。

頑張ってたのに、投稿をさぼってしまった。
自分はなんてダメな人間なんだろう。

そうすると、自己嫌悪感や罪悪感から、
投稿できなくなってしまう。

大事なのは、投稿する行為を日常生活の中に落とし込むこと。
習慣化すること。
当たり前に行えるようにすることです。

このやり方が気になる人はノルマ理論で調べてみてください。

SNSで投稿をしながら、他のSNSユーザーと交流する。
いいねを押したり、コメントしてみたり、コメントを返してみたり。

15分もあればできます。
一日さぼったとしても翌日やればいいんです。

これを続けたら、一年間でフォロワーが1000人はいくでしょう。
私の妻は達成してますので。

SNSになんで投稿する必要があるのか

あなたという作家、アーティストを定期的に思い出してもらうためです。
作品、写真、文章、なにかしらをきっかけにあなたのアカウントをフォローしたユーザーは既に、多少なりともあなたに興味をもっています。

あとは、SNSでの発信を続けてください。
定期的にあなたの情報に接触することで、
あなたに対する印象が良くなります。

これをザイオンス効果といいます。

こうやって少しずつ、いろんな人の信頼を貯金していって下さい。
信頼貯金です。

信頼貯金が貯まったらあとは、個展を開くだけです。
ギャラリーでの個展が難しいと感じるなら、カフェとか飲食店とかアットホームな雰囲気の所でやってみるのも有りです。

SNSのアカウントで告知すれば必ず一定の人は来てくれます。
個展で初めましての人もいることでしょう。

最初は売れる必要はありません。
というか売れません。売れたらラッキーです。

それでも何回も通ってくれるようになったら、
いつかは買ってくれます。

SNSを通して人との接点を増やし、
投稿、コメント、いいねを通して、
定期的にコミュニケーションを取る。

SNSを通じて、個展に通ってくれる人が増えれば、
あなたの固定客が増えたということです。

呼べるお客さんの数が多いと、
作品が売れる可能性は上がります。

お客さんを呼べる作家というのはギャラリー側も欲しています。

作家として、アーティストとして誰かに知ってもらう時、
接触する頻度が高いプラットフォームはSNSです。

だから、最初にSNSを頑張る訳です。
ここまでのフェーズに到達するとホームページが活きてくるようになります。ホームページの活用は別の記事でタイミングを見て書こうと思います。

最後に大事なこと、協力者を見つける

創作活動をしている人が、
作品を作りながら
ギャラリーを探して、
SNSに定期的に投稿して、
ホームページも作る。

ここまで一人で全部できる人はまずいないでしょう。
協力者が必要です。

制作も、ギャラリー探しも、SNSも、ホームページも、
大してお金をかけずにできます。

複数人のグループで活動している場合は、
それぞれで分担してみるのもありでしょう。

美大の場合は、デザイン科の人がこのあたりの分野に強いかもしれません。

ギャラリー含め、協力者を多く見つけるというのは、
作家として生き残るために必要な能力です。

アート作品を売って稼ぐということは、
社会への影響力をお金に変換する行為です。

協力者を見つけられるくらいには影響力を備えてください。
そこからがスタートラインです。

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