攻殻機動隊 SAC_2045感想など

2020年4月23日にNetflix独占配信で攻殻機動隊SAC_2045が配信され始めた。僕はアニマックスで放映されていたS.A.C.を見た時から、原作押井版GHOST IN THE SHELLイノセンス、TV版のS.A.C.もOVAのSSS、劇場版ののちTV放映されたARISE攻殻機動隊新劇場版も実写版GHOST IN THE SHELL、全部見たくらいには、生粋の攻殻機動隊のファンである。劇場で見れるものは全て劇場で見たし、今は処分してしまったが、高校の頃は、原作も劇場版、TVのBlu-ray BOXを全て持っていた。多分TV版に関しては、笑い男編と2ndGIG共に確実に15回以上は繰り返し見ているくらいには好きである。

そんな僕に吉報である。去年だったかもう少し前だったかにどうやら攻殻の新作が出るらしいぞとの事だった。それが今年になって待望の新作を鑑賞したので、ちょっとした考察を感想交えて記していこうと思う。ネタバレも若干含みそうなので、まだ見てないよー。嫌だよ。という方はブラウザバックのボタンをポチって欲しい。

1.キャラデザについて

これは新作の発表と共にすでに公開されていた情報で今回のキャラクターデザインはロシア人のイラストレーター、イリア・クブシノブ氏だ。Instagramでは180万人近いフォロワー数を誇っており、大人気のイラストレーターと行って良いだろう。美術学校を卒業の後、ゲーム会社でデジタルイラストのノウハウを習得し、モーションコミックの監督の後にフリーのイラストレーターとして活動しているそうだ。彼の描くイラストはどことなく日本のコミックから多大な影響を受けているだろうという印象を受ける。実際本人にインタビューしている記事が公開されているのでリンクを貼っておく。「イリヤ・クブシノブ」インタビュー 365日イラストを投稿し続けるロシア人

主観としては冬目景氏の絵柄にめちゃくちゃ影響されてるなという感想で、本人もファンだという事を公言している。今回の少佐のデザインなどは特に顕著だ。余談だが、今期のアニメに『イエスタデイをうたって』という冬目景氏の原作のものが放映中でなんとも時期がかぶっているのは数奇な運命だなと感じた。ちなみに僕は『マホロミ 時空建築幻視譚』が結構好きだ。

少々話が脱線してしまったが、そんな大人気のイラストレーターのイリア氏だが、正直あまり男性を描くイメージが無い。Instagramを軽く拝見したが、圧倒的に女性を描いている事の方が多かった。しかし攻殻に出てくるのは大半がおっさんである。というか少佐以外の9課のメンバーは中年のおっさんだ。実際、キービジュアルで発表されたものは、確かにおっさんなのだが、なんというかおっさん独特の”シワ”が少ないと思った。3Dモデリングの特性なのだろうか、全ての作品を通してハードボイルドな内容のものなので、少し渋いおっさん感が足りないように思った。3Dも最新のものでは無くひと昔前のノッペリした3Dなので従来のファンには酷く不評だったようだが、正直Netflixの3Dアニメにはありがちだし、日本の3Dアニメにはよくあるものだったので個人的はそんなに気にならなかった。それこそFF7Rだとかのクオリティのものだったりしたらそれはそれで見てみたかった気もするが。

2.作品内容について

先に結論から述べてしまうと今回の作品は”公安9課の物語”では無くて、”新たな時代の公安9課になる為の物語”だと僕は感じた。

現在放映されているシーズン1は全12話構成でTV版のS.A.C.の地続きで、笑い男事件を2030年、2ndGIGが2032年頃、SSSが少佐が9課を去ってから2年、2034年の事件だったので作中では約10年程経っている。その10年間で「全世界同時デフォルト」なるものが起こったようだ。これによって紙幣が紙屑同然と化し、仮想通貨と電子マネー共に一時的に消失、全ての国家を恐慌に落とし入れた。
これにより国家は計画的で持続可能な戦争「サスティナブルウォー」に突入。9課を脱隊した少佐達はその紛争地域を渡り歩く傭兵部隊として活動していた。というのが物語の導入部分で、この部分がep6まで続く。

原因は全く違うが昨今世界を恐慌に陥れているコロナウィルスの状況と偶然にもリンクする。S.A.C.シリーズの面白い所は起こりうる未来を完全なフィクションでは無く、現在の地続きかもしれないと想像を掻き立てられる所にある。あくまで主観だけれども、原作と押井版は、サイボーグ化した人間はどこまでが人間の意識と身体でどうやって自己を認識しているのか?という若干、身体論とスピリチュアルなテーマに沿って物語が進んでいくのに対して、S.A.C.は笑い男事件をきっかけに国家と企業の癒着、警官と議員の汚職が暴かれていく。2ndGIGでは個別の11人事件を発端とした内閣情報庁による情報操作の末の難民問題や武装蜂起等、どちらかといえば”社会”について描かれている節がある。S.A.C.で監督を勤めた神山監督の「東のエデン」でも高度経済成長以降に行き詰まった日本を11人のセレソンというプレイヤーがどういった方法で、どう救うのかという作品だった。

攻殻機動隊 SAC_2045で敵対するのは「ポストヒューマン」という人類を逸脱した存在が引き起こす世界的な事件をかつての公安9課が再び集まり解決に導くという物語のようだ。この「ポストヒューマン」というのは、なんらかの原因で発症し一人でスパコンを凌ぐスペック(人間版量子コンピューター的なことか?)を有し、現在の国家の転覆をそれぞれ独自の方法で行っている個体の総称だそうだ。作中では最新の攻勢防壁をハックしたり、空間の室内の温度、空気抵抗を瞬時に演算、IRカメラにも映らないなど、超ウィザード級ハッカーも裸足で逃げ出すスペックだ。全世界同時デフォルトもこの「ポストヒューマン」の工作のらしい。ガンダムにおけるニュータイプとか、玉井雪雄氏著の「オメガトライブ」におけるオメガみたいなものらしい。要は、新人類である。この新人類に対して攻勢の組織足り得る為に再び招集されるのが、かつての9課のメンバーというのがシーズン1の大まかな流れだった。今の所、僕が視聴した感想は攻殻機動隊というよりかは、ちゃんと”S.A.C.”なんだなという意見に落ち着いている。ネットで多少散見される「こんなの9課じゃない!」の意見は概ね賛同できる。だって”まだ”公安9課じゃないもの。現にパズとボーマが合流したのも物語の後半辺りである。10年あったら人も変わるし、社会も変わる。バトーのキャラがブレたりとかトグサが離婚したりだとか訳わかんない新キャラが増えたりとか、タチコマがマイナーチェンジしたりだとか。所々ん?ってなる所はあったけれども12話の引きでシーズン2以降の展開が凄く気にはなる所だ。

初回視聴でまだ考えがまとまってない所もあるけれど、もう2、3回は見ると思う。懐古に浸ってのは新しい作品を貶めるのは簡単だけれども、個人個人で、その作品の文脈が紡がれているのかを紐解いていく行為が良い視聴者であり、ファンかなぁと思っているので、クリエイターの方々に感謝しつつ攻殻に限らず出来るだけフラットな気持ちで作品を視聴出来るようには毎回心がけているが、ゴメン今の所「江崎プリン」お前の事は好きになれそうにない。

また続きを書くかもです。それでは。

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