鈴の鳴る風の音 2話
『いつも、そうだな…』と狗狛が呟く言葉は
風がさらっていったあと…
それから、どれ程の時が経ったか…。
狗狛には決して見せなかった苦しみに
堪えられず、鈴音は自ら牟婁の傍に
ある海に身を投げた。
相も変わらず見え、聞こえ続ける聲や映像、
それは、誰にも理解されず、怒りや
悲しみすら出してはならないと言われ続ける。
笑いながら隠れては泣き、堪えていたものは
どれほどあったのだろうか。
自分には笑顔しか見せなかった。
隠した苦しみは見せず、自分にも向けずいたのは何故か…。ヒトとは…。
軽やかに鳴る鈴の音は
この牟婁に谺する
身果てても尚、魂は続き、鳴り続く鈴の音は
誰の想いを鳴らすのか…
哀しき音色は、岩に跳ね返り
ただ谺する
繰り返す…取り戻す…繰り返す…
少しずつ覚めてゆくものは
どのような音を響かせるのか
鈴の鳴る風の音はどのような音色か…
狗狛は、鈴音の動きを止めた躯を前に
呟く。
鈴の音は鳴り続けている。
狗狛は、鈴音の躯からフワリと浮き出た
魂を持つと、黙ったまま牟婁から姿を消した。
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