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ある始まりの世界の物語 Ⅱ

少女のあどけない答えに黒い羽を持つ者は
言います。
「…そうなのか…、お前は変わってるな。」
と、やや自嘲気味に言うと、少女は答えます。
「…うーんと、…だってみんな仲良くしなきゃいけないのよ。だから、一緒に遊びましょ。
こんなに嬉しいことがあったんだもの。
ふふっ。」
少し拙い言葉で言いました。
緩むように少し笑い、黒い羽を持つ者は
言います。
「お前は、嬉しいのか…。」
すると、少女は身体を揺らすのを止め、傍まで行くと、黒い羽を持つ者を覗き込むように、にこにことして言います。

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「あなた、名前はなんて言うの?」
少し驚いたように、黒い羽を持つ者は答えます。
「…俺に名前、か。何故聞く?」
すると、少女はにこにこと答えます。
「だって、また遊ぶんだもの。名前を知りたいわ。私はフォスとかティシーアと呼ばれてる。だけど、お前でもいいわ。ふふっ。」
黒い羽を持つ者は、少し黙った後に答えました。
「俺の名など…どうでも良いだろう。」
そう言うと、少女が口を開きます。
「…そうね。だってちゃんとここに居るんだもの!この場所も名前をつけることがないんだもの。ふふっ。」
そういうと、嬉しそうにまた身体を揺らしながら木の葉と舞踊っています。
いつの間にか、黒い羽を持つ者は軽く笑っていました。
すると、少女は慌てたように辺りを見渡すと
言いました。
「そろそろ帰らなくちゃ。明日もまたお話しましょ。明日は食べる物を持ってくるわ。ふふっ。」
と、嬉しそうに帰り道を駆け出しました。
周囲は、すっかり夕焼け色に染まっていました。
すると、不意に少女が立ち止まりました。
「また明日ね!ふふっ。」
振り返りそう言うと、嬉しそうに帰っていきました。
それを聞いていた黒い羽を持つ者は、少女の後ろ姿を見て呟きます。

          ❁⃘続く…❁⃘

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