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ある始まりの世界の物語 Ⅲ

「また明日ね、か…。」
そう言い、黒い羽を持つ者は少し笑いました。
そうして、近くにある大きな樹の上で夜空や
人々が暮らす場所を見ていました。
人々の暮らす場所は、水が豊かでした。
人々は、風や水を詠み、狼たち、そして自然と調和して暮らしていました。
黒い羽を持つ者は呟きます。
「俺が見えて怖くない…か。」
夜空を見ては呟くのでした。
翌朝、またあの少女がやってきました。
「今日は果物を持ってきたの。食べて。」
と、言い黒い羽を持つ者の側に置くと
座ります。
「あのね、あのね…」
と少女は楽しそうに話し続けます。
仕方ないといった様子で黒い羽を持つ者は
聞いています。
すると、遠くから声がします。それは、少女の家族の声でした。
「ティシーア、こんなところにいたのか。
探したんだぞ。」
「そうよ、ティシーア、心配したのよ。ここは、近づいてはいけない場所と言ったのに、この子は…。」
と口々に少女に声をかけます。
少女は、言います。
「このひとと、話をしていたのよ。」
すると、家族は言いました。
「誰もいないじゃないか。また、言ってるのか、ティシーア。帰ろう。」
という家族に少女は、
「違うわ。いるのよ。見えないの?」
と言いますが、家族は見えない、聴こえないこともあって、信じてくれません。
「さあ、ティシーア行こう。」
と、少女の手を繋ぎ帰ろうとします。
少女は、振り向き、
「またね!」
と言い、家族と帰っていきました。
黒い羽を持つ者は言いました。
「他の者には見えず、聴こえないのを、気付いていないのか、無防備なのか…。」
と笑い混じりに言うのでした。
「なんにせよ、おもしろい。」

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          ✿*続く✿*

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