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澄み渡る空に夜半の月

澄み渡る空に夜半の月が見える。
雲ひとつない空に明星がひときわ強く輝く、
そんな空を見上げひとり月光浴をしていると
贅沢な時間を過ごしているような気分になる。
すると、可愛らしい声で話しかけられた。
『どうしたんですか?空に何かあるのですか?』
まるで、今まで居たのに認識出来なかったような感覚を覚える。
みると、小さな着物姿の童だった。
とても可愛らしいが何となく修行でもしているかのような童だと感じる。
『月を見ているんだよ。一緒に月を見よう。』
そう声をかけると、童は驚いたような顔をして
『月…をですか?』
と、まるで見ることが不思議だというように言葉を返してきた。
内心、可愛らしいなぁ知らないのかなと思いながら、童の頭をそっと撫でながら声をかける。
『素直にあるがままの心でいられる気持ちになるんだよ。月はそんなことを教えてもくれるんだ。』
童は、撫でられた頭を小さな両手で確かめるように触りながら、月を見て言う。
『そうなんですか。』
そんな言葉に様々な気持ちが込もっているのを
感じながら、私は微笑んだ。
『だから、迷いそうな時は静かに月を見るんだよ。素直にあるがままの心でいられるように。辛く悲しい心に取り込まれてしまわないように。』
そう言うと、童は嬉しそうに笑って頷いた。
それからも、童は様々なことに興味を持ち
質問してくる。きらきらした目をして嬉しそうに。
そんな可愛らしい問いに私は答え続けている。

澄み渡る空に夜半の月が見える日に出会った
そんな話。

✿*今回は短編でした。✿*

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