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金言220:バーバーのマスター

どこの町でも見かける夫婦でやっている町の床屋さん。
長期出張の時など、見知らぬ土地の床屋さんにも行きますが、敷居の高い店が多くて腰がひけます。

1)馴染みのマスター
30年近くお世話になったマスターが2年前の3月に引退しました、大変お世話になりました。マスターは聞き上手でいろいろな話を聞いてくれ、またよく覚えているのでいつ行っても話がつながります。ご夫婦ふたりで3台の床屋の椅子が置いてありました。

2)予約制
電話をかけると、マスターは希望する予約時間の前後の予約を見て返事をします。一時間ほどじっと椅子に座るのでその時間に顔見知りの人に会わないように調整してくれます。調髪の際に話す内容を隣に座る知人に直接伝わらないようにとの配慮でした。黙って座っていると隣の席の人がマスターや奥さんと話しているのが耳に入ってきます。その話の内容が知人だと思わぬ個人情報に触れてしまいます。電車のなかで隣の人が話しているのと同じで、隣が知らない人なら関心がないので聞き流し記憶に残りません。
髪型はマスターに一任です。転職するとその業界風にしてくれます。サービス業のときは帝国やオークラのホテルマン風、スポーツ業界のときは短髪といった具合です。

マスターはご自分のことは話しません。いろいろ話をきいてくれます。そして関連する情報を教えてくれます。知人の近況や、ご縁のある会社の噂などです。髪が薄くなったとか白髪が増えたとかはコメントしてくれません。年相応の状態だとしか言ってくれません。奥さんがつい口をすべらせると、マスターは奥さんをしかります。反面、知人の髪の状況は良く教えてくれます。奴はすっかり髪がなくなったとか白髪になったとか。

決してご自分のことを話さないかわりに、気に入った人の近況はよく教えてくれました。散髪中に奥さんが缶コーヒーなどを差し入れてくれます。お店が乾燥しているときは飴玉をくれます。マスターが引退の日、子どものいない、きれいな奥さんとは親子ほど年が離れていることを教えてくれました。きっと話せば長いご自分の話題がたくさんあったことでしょう。

3)チェーン店の理容師
マスター引退後は、ひいきの店がなくなったので近所の床屋さんに何回か通ったあと、駅前にできた低価格のチェーン店に変えました。年中無休で、常時数人の若い理容師が待機しています。グループ内でローテーションがあるようで毎回半分ぐらいの理容師が入れ替わります。調髪時間も30分程度で無駄がありません。

夫婦でやっている店と違うのは、料金が半額、時間も半分で、私語は交わしません。散髪に必要なこと以外は口にしません。毎回、理容師が入れ替わってもお客さまは気にしません。顧客登録カードがあり、調髪内容や好みが店の端末に入力されるので、担当者はお客さまの履歴をPCの画面で確認し、今回の希望を聞いて仕事を始めます。髪に関する質問のみで、個人情報には触りません。数人並んで座っていても店のなかは静かです。

最近わかったのは、若い理容師の調髪方法に個人差があるということです。レザーカットを多用する人、ハサミでほとんど仕上げる人、髭剃りに力を入れている人、シャンプーを丁寧にする人などです。言い換えると、髭剃りは雑だがシャンプーが丁寧とかいうことです。1人あたりのサービス提供時間が決まっているようで、どこかに時間をかけるとどこかを削って調整していると推定しました。

待ち時間はほとんどなく、30分で終わり、髪をどう切るかと細かいことは聞かれず、価格は半額程度です。話題に気をつかうことなく、淡々と店の品質基準内で仕上げてくれます。
堀の内の店に、無言で入って指名をして身の上話をすることなく淡々と目的をはたし、代金を払ってでてくるようなものです。自分の口から個人情報を発しないという点で、人情味がない代わりに、余計なことには触れないのでセキュリティ面で安心だとか勝手に納得します。この顧客管理とサービス提供の従業員のローテーションシステムを、「お風呂屋さん」のグループで取り入れたら、ゆらぎのある特異な顧客満足度向上プログラムができるかもしれません。ただし、反社勢力と官憲のチェックが定期的にあります。

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