金言175:暗黙知の評価額

M&Aでよくきく話。
「会社は買えるが社員の心は買えない」と買われる会社の従業員たちはいうのですが、買い手は投資対効果を計算すると社員の心は買いたくないと思います。現在、従業員が会社からもらっている給料には心を売った分は含まれていないはずです。心は買ってもらえないというほうが正しい表現かもしれません。経営陣も、社員の心は計上できる会社の保有資産の一部とは考えていないし、占領軍にも購入意思はないと想像します。

暗黙知
放送業界で、金をかければいい番組ができるというのは、職人の暗黙知を計算に入れていない考え方で間違いであるというのが定説です。いい仕事をしていない正社員に払い過ぎていることが是正すべき問題なのです。この人にしかできないという仕事は、金をかけても他人にはできません。同じ仕事はできないので、対応策は同じ質の仕事ができる暗黙知をもった職人を見つけることになります。この暗黙知にいくらの値段をつけるかで、ヒトという資源の価値をどのように確保育成していくかという経営ポリシーを垣間見ることができると考えます。

優位性
一方、下請制作会社のスタッフは「番組は現場で作っている」と勘違いします。制作スタッフは、いい仕事をすることはできますが、いい仕事をとってくることはできません。営業で年収450万社員には、看板・与信・人脈・金脈などすべてにおいて年収1500万社員が自負する優位性がないからです。制作現場でこの人にしかできない仕事があるように、営業サイドではこの人にしかとってこられない案件なるものがあります。

暗黙知の評価額
営業と制作の両サイドでそれぞれ匠の技を発揮する人は年収1500万円以上の価値があります。成果主義とはこういう面を評価する制度のはずです。あの会社に買収されたら別の会社に行くという人の多くは、匠の技には恵まれていないけれど高給という社員でしょう。匠の技はたとえ経営者が替わっても事業目的が変わらない限り需要があり、優遇されるに決まっています。人材の流失は企業価値の低下になります。経営者がそのような愚かな意思決定をするはずがありません。人財と描く会社の経営者は暗黙知を評価しています。

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