金言-4:愛着を感じる

システムエンジニア(高度情報処理技術者)の話
紺屋の白袴:「長年の愛着がある。変えたくない」

現在の事業分野に限界があることが明らかになり、創業20年になるこの会社は新規分野を事業の柱に加えることによって、生き残りをねらいました。そこで、これからは違うということを、目に見える形で表現しようと社名変更をすることにしました。社名が変われば当然ロゴマークも変わります。
ところが、情けないことがおきました。何と20~30代の若手システムエンジニアから社名とロゴ変更反対の声があがりました。社員の30%が現状のままを希望しました。社歴5年の若者が、現在の社名・ロゴマークに愛着があるので変えてほしくないとのこと。
この会社は、企業の情報システム開発を生業としています。日頃、ビジネスプロセスの革新とかいって、抜本的な経営革命を今実行しなければ生き残れないと煽って売上と利益を増やしてきた会社のひとつです。

既存の情報システムを次期システムに置き換える、または経費削減のため、その場しのぎの接着ツールを使って多様なシステムの統合をはかることなどを、顧客に提案しながら、一方で自分の会社は5年10年前と同じでいいと、従業員は考えているわけです。
これから新しい事業分野を担っていく若い技術者が、入社時の会社のイメージに愛着をもち、変化を嫌ったのです。

このケースは、世の中ITということで注目され、それを商売にしている情報処理産業の従業員の、お寒い精神構造の実態をあらわしているということで片付けては不十分です。
既存システムを否定するところから、商売がなりたつ会社の従業員、それも若手の社員に自分の会社は「従来どおりがいい」「愛着がある」といわせた裏には、何かがありそうです。

☆アフガンの兵士状態
9月11日のニューヨークの被害状況がアフガンでは正しく報道されないので、国民は突然アメリカが攻撃してきたと思ったかもしれません。これと同じことだったのでしょう。経営サイドからの断片的な指示や情報開示では、従業員は変化に対応することができません。

☆種嶋シンドローム
目と耳から入力された情報が脳に伝わり、判断し、結果が言葉として表現されるまでに、周りの人とタイムラグがある人。こういう人が変革を指示したら、部下は変化を嫌うでしょう。常識的な選択に対しても「自分はそうは思わない」と吉田の孫のようなことをいわれたら一般従業員はひいてしまいます。これをこの会社では種嶋シンドロームといいます。

☆ボトルネック
結局、情報と知恵の共有に重要な役割を果たすべき人物が、流れをせきとめていたら、ITの先端企業、高度情報技術者集団といえども「紺屋の白袴」になってしまうという話です。

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