金言29:今年は悪いものを全部出せ

量販店の建て直しができなかった経営者の金言

あるとき、この経営者は、懇親会に幹部社員を全員集めました。呼ばれたメンバーは全員そろったのですが、肝心の本人が到着していません。「1時間以上遅れるから、先に始めてくれ」と伝言がありました。1時間後に到着し、懇親会は無礼講ということで、和やかな雰囲気で終了しました。
後で、腹心の部下に自分が到着する前に飲食したのは誰かと聞きました。もちろん、名前を報告された人は、お仕置きの対象です。

今年は悪いものを全部出せ

量販店の経営から撤退して、今度は、システム開発会社の社長になりました。この会社もうまくいかなかった量販店のケースと同じような所があり、事業計画達成のためには抜本的な対策が必要になっています。そこで、「今年は悪いものを全部出せ」と号令し、お得意のdue diligence(精査)をはじめました。

悪いことは、すべて前社長の責任にすればいいので、内部監査を実施し、将来邪魔になりそうな人物のルール違反には懲戒処分を行いました。そして、利益確保に重要な役割をもつ部門長には、追放したい幹部を配置し業績に対する責任を追加しました。

いろいろとお化粧してやっと上場を達成した会社ですから、過去のしがらみが残っています。社内での裏取引もあったことでしょう。それをすべて洗い出し、リストラのツールに使います。「減収、現益となって、株価が1400円から1000円を切っても仕方がない」とまで言っています。

悪い膿をだして、建て直しをはかるというのは、よく聞く経営方針ですが、裏には社員の幸福や取引先の事情を無視したパワーゲームが垣間見えてしまいます。

泥舟

経営者の資質に限界を感じた幹部社員は、すでに泥舟から緊急避難を終えています。残っている幹部は、前船長の取り巻きぐらいです。これから、外にいる子飼いの幹部と在庫の幹部の入れ替えが始まります。こんな会社にいたくないという雰囲気が、17年続いた会社を草刈場にしています。

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