金言360:協力会社とブリッジサービス

自社で生産設備を持たず、外部の協力企業に生産委託をしている同社のようなメーカーをファブレスといいます。逆に、他社からの委託による生産を専門に手がけるメーカーをファウンドリといいます。自社工場を持たないメーカーは、どこの協力工場でも同じような品質と数量が確保できるような製品については、価格競争において優位性が発揮できます。低価格良質がブランドイメージになります。

1)米国のスポーツシューズメーカー
この会社がまだ世界一でなかった頃、世界一のメーカーであったドイツの会社は、熟練したマイスターが作り上げる伝統の技とマエストロの閃きによる優れた製品というブランド戦略で、ドイツ国内でドイツ人がスポーツシューズを製造していました。一方、神戸のスポーツシューズメーカーの代理店から独立した米国人経営者は、労働者の質と賃金を比較して、当時は割安であった極東の半島に注目し、海外生産によってコスト削減をはかり、安価でも見劣りのしないシューズを欧米市場に投入しました。今でいうファブレス型の商売です。その後、この米国の会社は世界一になりました。

2)ファブレスの強みと弱み
強みは、100%外部委託により生産設備と人員を抱えないので、流行や景気動向による受注の増減・生産調整などのコスト増から開放されることです。限りある資産を、設計・営業・顧客対応に集中し、効率のよい事業展開ができました。弱みは、自前の工場を持たないので、製造ノウハウの蓄積や製品仕様や機能の機密保持は困難ですし、生産・出荷の最終的なタイミングも協力会社の工場の都合次第になることです。海外生産になると、為替差損やゼネスト・港湾ストなど政情不安による納期遅れなどのリスクも追加されます。

3)ブリッジサービス
観光事業では旅行代理店がファブレスの業態に似ています。消費者(ユーザ)は、宿泊施設・交通手段(メーカー)を独自に選択する煩わしさと、それをするためのコスト(時間・人員)を削減でき、また個別に直接申し込みするよりも安価な価格が提示されます。それは、旅行代理店が希望小売価格よりも安い価格で大量仕入れをしているからです。この旅行代理店の仕組みと同じように、一定の仕組み(ソフト)を、利用する会社と製造する会社に置き換えることができるとすると、利用する会社(ユーザ)にはファブレスを提案し、製造する会社(メーカー)にはファウンドリを提案するサービスを事業とするビジネスモデルが想定できます。このサービスを一部ではブリッジサービスといいます。IT業界では協業とかいいます。

4)一品モノ
ブリッジサービスは、企業の情報システムの構築というITアウトソーシングではなかなかうまくいかないようです。情報システム構築というのは、ミッションクリティカルな部分があり、うまくいかなければ次を試すというわけにはいきません。時間とコストそれに企業の信頼性に重大な影響を及ぼす恐れがあるからです。実際には主要な技術者だけが自前で、力仕事一切は協力会社の技術者がこなしている場合が多いのですが、ユーザは、アウトソーシング(外部委託による生産)する際は、協力会社(ファウンドリ)1社にアウトソーシングをすることを好みます。ファブレスにアウトソーシングを依頼し、その先の実作業をファブレスが選ぶファウンドリに白紙委任する手法を嫌います。大量生産の工業製品を買うのと、ユーザ独自の一品モノを注文するのとの違いかもしれません。

何はともあれ、リスク負担から逃げられない仕事は、自分の責任範囲を明らかにしてその範囲に限ってリスクを負う仕組みを選ぶことで、損害発生時に多少なりとも諦めがつきやすいかと思います。

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