金言349:内部告発の効能

産地偽装、消費期限改ざん、残飯の使いまわし、教員採用汚職など、今も昔も変わらずに存在していたに違いない不祥事がコロナ禍では自粛でしょうか。親の代からの必要悪として周囲の暗黙の了解のもとに行われてきた行為がときどき告発されています。

突然カメラを向けマイクを差し出す「無礼な」輩に囲まれて、今までどおりの経営者は退場を余儀なくされます。違法または不当ではあるが公益(会社の利益、業界の利益)上の理由で許容範囲内であった行為が、内部告発によって背信的行為に変わります。いわゆる評論家諸氏は、内部告発が増加したとか、企業のコンプライアンス向上とか、不正行為を隠し続けることができなくなった環境変化とかいう後講釈をします。

ベンチャー企業が注目されホリエモンや何とかファンドが大流行していた頃は、内部告発による不祥事発覚は少なかったような気がします。政界も同様です。小泉政権では目立たなかった不祥事が、後継の「美しい国」政権では農水省を筆頭に閣僚・高官の不祥事が続出しました。今は何か、以前と違うような気がします。「今までどおりではいけない」と改革が叫ばれていた頃は、その「今までどおり」がまかりとおっていました。現在、「今までどおりではいけない」と現状改革・業務改善を標語に掲げる企業は少ないと思います。世の中が「今までどおり」を受け入れない環境に変化しているためです。

周りはどう考えるか関係ない、自分はこう考えると常に異説(実は年少組の失笑をかっていたことを本人はご存知なかったのですが)を唱えた種子島出身のビジネスパーソンがいました。最近の「内部告発による不祥事発覚」をこの人風に言い換えると、次にようになるのではないでしょうか。

『内部告発で不祥事が発覚する企業は、経営幹部の流動性が乏しく経営に柔軟性が欠けている企業だ。経営者が定期的に入れ替わり、経営幹部が常に刷新されている企業には、従業員が外部の第三者に社内の不祥事を告発する必要がない。新経営陣は経営の継続性を口にするが、実は旧体制を否定する必要がある。前経営陣との違いと優位性を表現するためだ。そこで、前経営陣の下で冷遇されていた従業員が新経営陣の改革のネタを提供する。経営者が代わっていなければ、抵抗勢力が内部告発としてメディアや官憲に直訴したネタである。』

資本家は経営者を定期的に入れ替え、経営者は経営を非連続的に継承します。すると従業員の告発は、次の経営陣を意識して社内にとどまり、その内容は創造的破壊として新経営陣に改革の材料として提供されることになります。経営の流動性と柔軟性そして不確実性は、昨日まで冷遇されていた抵抗勢力を明日の改革の鉄砲玉として活用することを可能にします。これは、どこにでもある意外な内部告発によって企業が想定外の損害を被るリスクを多少軽減する効果があるはずです。

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