またいつか会いたい人
(大学入学共通テストのニュースを見て、私の受験時代について思い出しながら書いてみます。)
2011年3月12日、
私の大学受験浪人が決定した。
前日の地震の影響で国立の後期試験が中止となった。
センター試験の結果も悪く、私立・国立前期も惨敗だった身としては、望みもない試験を受け、分かりきった結果を待つストレスから解放されて正直ホッとしたことを覚えている。
世間が震災で暗く沈む中、1人で予備校を3つ見学して、新宿西口の河合塾に決めた。
4月に授業が始まってからは、月ー金は朝から18時過ぎまで授業、その後自習。
土日も予備校の自習室へ。
最終的に、2月に進学先が決まるまでの間、予備校へ行かなかったのはお盆期間の休館日だけだった気がする。
浪人生活に季節の移り変わりはない
こんな日々を送っていては季節なんて感じるわけがない。気温の変化をギリ感じるくらいである。
唯一と言っていい楽しみは、予備校近くのスタバへ行くことだった。
浪人生でスタバに行くなんて、身の程知らずであることは、今なら分かる。
スタバには、たまに会う女性店員さんがいた。
腰の少し上くらいまである黒髪を一つ結びにした小柄な方だった。
接客していただいた時の笑顔が可愛らしかったことに加えて、休憩時間になるとエプロンを外して喫煙所に入っていく“大人な”横顔を見た時から気になる存在となった。
「惚れた」というより、全貌が見えない奥深さへの興味が湧いた。
(これが現時点での私の表現力の限界…)
それから毎週一回、ただ注文とお会計のやり取りをすることが楽しみになった。
突然、冬を感じた。
12月頃だったと思う。いつものようにコーヒーを注文するとその女性が「少し待っててください、」と言いレジ裏へ入って行った。
戻ってきその女性は、私に小袋に入ったクッキーを差し出した。
「もし良かったら、息抜きにどうぞ。」
そのクッキーが何を意味していたのか、私だけにくれたのかは分からないけれど、浪人生活で唯一浪人生であることを忘れた瞬間だった。
自然と春になった。
大学生となってからは新宿へ行く機会もなくなった。
夏休みの手前、ふとあの女性のことを思い出し、再び同じスタバに行ってみたが、あの女性はいなかった。
あの出来事は、私の浪人中しか発生しないレアイベントだったのかもしれない。
結局、第一志望の大学には届かなかったし、浪人した1年間は総体的にしんどかったし、今は思い描いていた仕事とは随分かけ離れたことをやっている。
それでも、今の自分に至るまでに、あの女性に影響を受けていることは間違いない。
(当然ながら私は影響を1ミリも与えてないでしょうけど。)
今何をしてるのかな?
スタバの新宿野村ビル店にいたあの女性は今頃何をしているのでしょうか?元気であればいいな。
もし会えたら、あのクッキーは手作りだったか聞こうかな。
皆さんにはまたいつか会いたい人、いますか?
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