作品審査って誰がどうやってるの!? / よくある質問にお答えしてみます。
はい、こんにちは藤本です(@shofujimoto)。アーティストの皆さんからよくいただく質問の1つに「作品審査って誰がどうやってやってるの?」というのがあります。これ誰だって気になりますよね?ぼくも気になりますので事実をありのままに知ってもらいたいと思い筆を取りました。(筆ではない)
1 / 創業期は「自分が好きな作品」だけをお預かりしてました!
▲2017年夏ごろの作品撮影シーン
創業期の頃はそもそも作品審査という概念がなかった。誰からもお預かりすることがなかったし、お客さんも0人だった。Instagramから自分が「この作家さんいいな〜」と思う方にDMして預けて欲しいとお願いしてたけど、100人にアタックして2,3人くらいが“話聞いてもいいよ”って感じになり、1人が預かり契約書にサインしてくれる感じ。
だから創業期は必然的に「ぼくが好きな作品」しか預かることができず、最初のお客さんは自分の身内ばかり。ちなみに最初のお客さんはぼくのオカンです。
2 / 作品審査という概念が登場したキッカケはアーティストさんからの一言だった
▲ アーティストさんとお会いした青島にて
2017年の夏ごろから「作品預けてください!」と様々なアーティストさんを訪ね始めて、2018年の終わりには1,000作品ほどお預けいただけるようになってた。でも肝心のWebサービスリリースがまだだったのでお客さんは身内と飛び込み営業で導入してもらったの20名とか。。当時はWordPressで自作のWebカタログを作っててそれをiPadでお客さんに見てもらってた。このWebカタログをアーティストさんに見てもらった時にハッとさせられる言葉をもらった。
最初は、「えっ!?ドユコト?」と戸惑ったのですが、当時は作品審査そのものが正しく機能してなかったので預けてくれた作品全部を撮影してリストに掲載してた。(当たり前ですけど)
コンセプトも無ければ、トンマナも揃ってない、カテゴリーも存在しない。東京藝大を卒業した実力派の作家さんから、定年を迎えて先月から趣味で水彩画を始めた方が画用紙に描いた公園の風景画まで並んでいる状態。
ぼくの口からズバリ言いづらいですが、「このリストに自分の作品が並ぶのは嫌だ」という意味がわかりました。描く全てのアーティストに優劣をつけることが嫌だったので、作品審査という概念を正当化してこなかったのですが、これでは誰も幸せにならずに終わってしまうのではないか?という気づきと決断をこの時にしました。
3 / 作品を「お出かけ」させるという使命をつらぬけ!
▲2018年どっかの勉強会でβ版を説明してる
アーティストさんの指摘から、しばらく迷走した。ちょっとショックが大きかったというのが正直なところかな。自分で考えてても出口見つからないから、色んな人に聞いてみよう!と思考停止状態でとりあえず体だけ動かしてみた。
これ事実です。更にメンタル崩壊しそうになった・・・。でも「こんな人にサービス使ってもらいたい!」って未来のユーザーイメージに近い方々に意見を聞いたときに、30代の女性が大きなヒントをくれた。
マッチングアプリ・・・イケメン・・・・。。。なるほど!?これまで迷走してたのが晴れた気がした。探せば中には自分好みのイケメンもいるんだけど、アプリひらいた瞬間におじいちゃん、小学生、おばあちゃん?とか並んでたら使う気が失せてしまう。
ちょうどこの時、Casieサービスは世間に向けてリリースを迎える直前だった。このままの状態でリリースしてお客さんに使ってもらえなかったら作品を預かってるアーティストに顔向けできへんやん!
預かった作品を全国にお出かけさせることができなければ、Casieの存在なんて無意味だ。「アーティストエンパワーメント事業」なんて言ってるだけで結果出せなければ誰も幸せにならん。
そして満を辞して迎えたWebサービスリリース当日(2019年1月)結果は散々なものだった・・・。(今の流行りで言うところの「さざ波」でした)
4 / 作品審査の実装スタート
▲ アーティストさんの個展にて撮影
2019年の初めの頃から作品審査制度を実装させるようになった。しかしここで最初にことわっておきたいのがCasieが定義する作品審査は“お預かりした作品をお出かけさせることができるか”の視点が一番大きい。
具体的にユーザーイメージを作り、そのユーザー属性に近い方をお呼びして作品審査に関わってもらったりもした。「私ならこんな作品をお部屋に飾りたい!」と、声のする方に進化するように心がけた。当時はわざわざ作品写真を送って審査エントリーしてくれたのに、お断りするのが本当に辛かった。心臓が切り裂かれそうな思いだった。いつの日かたくさんの趣味嗜好をお持ちのお客様にご利用いただけるようにサービスを成長させて、あらゆるアーティストの作品を流通させるんだ!とその都度心に残すようにしてた。
当時の作品審査体制は色んなチャレンジの結果、結局のところぼくと宏輔(共同創業者)の2人でやってた。最初と違うのは自分の好きな作品という視点を完全に捨てて、「預かった作品をお出かけさせられるか」という一点をあらゆるインサイトから研ぎ澄ませていった。
最初の方に美大の先生とかギャラリーのディレクターさんに作品審査入ってもらったんだけど、「これは芸術とは呼べない」とか「略歴に実績がない」とかでたった1人も審査に通過しなかった。挙げ句の果てには有名ギャラリーに連れて行かれて、「これらを月額10〜30万円くらいでレンタルしなさい」と提案される始末。
こうした作品審査を実装しはじめると同時に、作品カテゴリーの切り方も最適化するようにした。これにより本当に徐々にではあるがオーガニックで新規のユーザーさんが作品を選んでくれるようになってきた。
アートって全く同じ作品でも、人によっては「めっちゃ好き!」の場合もあれば「全然興味なーい」の両極端に分かれる。それでこそアートなんだから面白いし好き。自分が好きな作品だけをコレクションして、自分と嗜好が合う人にだけ使ってもらうスモールなサービスを作るのはイージーなのかもしれないけど、ぼくのパーソナルミッションはそうじゃない。
作品審査で落選したアーティストの皆んなに伝えたいのは、今のCasieにはあなたの作品に惚れるお客様を持ち合わせていないだけ。サービスを拡大することで、あなたの作品もいつか預からせてもらいたい。それはもちろん、お出かけさせる自信をぼくらが持っているから。という状態にしようと思ってる。
5 / 現在の作品審査についてASグループマネージャーのAkioに聞いてみた!
さてあらゆる試行錯誤を経て、時を2年ほど未来に移した今日現在。作品審査を担当するASグループを牽引するAkihiro(@akio165)に現在の作品審査について聞いてみた。
現在では作品審査にぼくが直接的に関与することはなく、全てASグループが行っている。ASとはArtist Success(アーティストサクセス)という意味であり、Casieが創業して実質一番最初にできたグループだ。
ぼく「ちょっと、Akihiroくん。こっち来てくれ!」
ぼく「作品審査の基準とか体勢とかについて疑問に思うアーティストさんのためにnote書いてみたいねん。だからインタビューに応えてくれ」
ぼく「作品審査って今どんな体制でやってるの?」
ぼく「おーなるほど!(知ってるけど)嘘みたいなホントの話だけど言語化できないアート作品をある程度データに基づいた言語管理みたいなことができてるってことだな?」
ぼく「うん。じゃあ残り半分の感覚?アナログ?なASグループの目による審査ってどんな基準でやってるの?」
ぼく「いいやん!その3つ是非こっそり教えてや。」
ぼく「よしよし、1個づつ詳しく教えてくれ。まず最初の画力についてはどう見てるの?」
ぼく「ふむふむ。じゃあ次の作品コンセプトってどゆこと?」
ぼく「アーティストさんによっては作品そのものだけでコンセプトまで見えないケースあるやんか?その場合はどうしてるの?」
ぼく「それ自分が審査エントリーするアーティストやったら結構嬉しい事実やわ。全員のSNSとかブログまで見てるの?
ぼく「なんかサラリと嬉しいこと言うてるやん。Akihiroっていい奴やな〜。」
ぼく「会話成立してへんやん。まぁいいけど。確かに例えばグロテスクな作品だったり、宗教的な要素が強い作品はせっかくお預かりしてもお出かけさせてあげることができないもんな。。。つまりその要素ってCasieサービスを利用してくれるお客さんが増えるほど範囲が広がるってこと?」
ぼく「なるほどな〜ほんま頑張らなあかんな!新しいお客様との出会いでご一緒できるアーティストさんの幅も広がるってことや。最後にAkihiroが作品審査において大切にしてることとか、重要視してること教えて。」
ぼく「そのイメージわかる!以前あった事例で美術界で著名な賞を受賞されたアーティストさんの作品エントリーをお断りした時に怒られたもん。その作品自体は凄かったけど、うちでお預かりしてもお出かけ実績作れそうになかったんだよな。」
6 / まとめ
▲ 滝とぼく
6,000字を超えましたので、ここまで読んでくれたあなたは多分変わり者です。(ぼくと一緒ですね!)
もしかしたらAkioが言う通り「作品審査」って言葉がしっくり来てないのかもしれません。あくまでぼくたちCasieがあなたの作品をお預かりして、責任持ってお出かけさせることができるかどうかということが基準です。この基準の範囲が新しいお客様との出会いで広がると思ってます。
だから作品審査に落選したからといって、あなたのアーティスト人生を否定しているわけでは決してないということをご理解いただければ嬉しいな。全てはぼくらの力不足なわけです。
アート作品の流通を作るのは本当に難しい。先日とある方から「Casieさん凄いな〜順風満帆ですやん!」と嬉しい言葉をいただきましたが、現実は悪戦苦闘の毎日であり、決して順風満帆ではないです。現状、まだお預かりさせていただく作品に限りがあって、苦渋の決断でお断りせざるを得ない素晴らしい作品がたくさんある。正直言って悔しいです。
でもね、少しづつではありますがアートをお部屋に飾ることで新しい出会いや発見を手にしてくれているお客様が増えています。これまでに知らなかった世界を知る瞬間ってすごく楽しいし、自分が成長した感じがするんですよね。こうした言葉をお客様からいただけるようになってきました。これは全て、描くアーティストの皆んなが作品を作り続けてくれるから成し遂げられているムーブメントです。
時間はかかっていますが、アーティストとユーザーの皆さんが直接的に高い熱量でコミュニケーションを取っていただける場を目指して。少数精鋭ではありますが、毎日がんばります。それだけはお約束します。
最後までお付き合いいただき、本当にありがとうございました。
おしまい
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?