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Apex Legends Asia Festival日本予選をモデレーターとして振り返る


1.はじめに


 2023年7月22日に、Apex Legends Asia Festival日本予選が開催された。予選上位3チームがマカオで行われる本戦に出場できるという、本格的な大会だ。
 例によって、🐧モデレーターとして意識していたことを綴ってみようと思う。大きな大会に挑む配信者のモデレーターとして、どういうことを意識するのか、というのは参考になるかもしれない。
 そして、これも毎度のことであるが、基本的な事項については配信者から方針を言い渡されており、またモデレーターの間でも共有はしているものの、具体的な対応は私個人の判断で行っている。この点はご承知おき頂きたい。

2.本格的な大会において意識すること


 本格的な大会配信のモデレーターを初めてする人は、おそらく相当緊張することだろう。
 私も、最初の頃は緊張していた。ただ、場数を踏むと、大体意識すべきポイントが分かるので、だいぶ楽になってくる。
 私が、本格的な大会において意識しているのは、以下の3点。

  1. 伝書鳩行為を注意する

  2. 同行者/他の参加者や運営への批判を注意する

  3. 大会に関する情報を視聴者(・配信者)にアナウンスする

 実は、意外と意識することは多くない。それに、3点目に関しては、私が勝手にやっていることなので、やる必要はない。なので、特に意識すべき点は最初の2点だけだということになる。
 では、それぞれについて、簡単に説明していこうと思う。

3.伝書鳩行為

(1)なぜ伝書鳩はいけないのか

 「伝書鳩」はそもそも複数の意味で用いられているのだが、「ある配信者が言っていた内容を、他の配信者に伝える」という意味で使う場合もあれば、「ある配信者の戦闘に関する情報を、他の配信者に伝える」という意味で使う場合もある。
 基本的には、配信界隈においていずれもNGとされているのが一般的だが、ここでは後者の戦況の伝達のことを取り上げる。
 なぜ戦況を伝えることがいけないかといえば、一方が有利になってしまい、不公平だからだ。
 たとえば、他の部隊がどこにいるか、どういう武器構成なのか、どういうレジェンド構成なのか、何人生きているのか、物資はどのくらいあるのか、全部伝えたら圧倒的に有利になるだろう。
 伝書鳩行為をする人も、特定の配信者を応援するべく、有利となる情報を伝達したいという動機に基づいているはずだ(何も考えずに、ただ知っている情報を書いているだけかもしれないが)。しかし、そういう行為は、大会を根幹から揺るがす行為であり、場合によっては失格などの処分を受けることにもなりかねない。だから、伝書鳩行為は禁じられている。
 さらに、伝書鳩コメントを放置すると、他の視聴者が攻撃的に反応し、コメント欄がどんどん荒れることになる。
 したがって、伝書鳩についてはまずさせないことが大事であり、伝書鳩行為がなされてしまったら、すぐに対応することが必要である。

(2)伝書鳩行為の未然防止

 🐧の配信では、実は余り伝書鳩行為が起きない。
 そもそも、伝書鳩がNG行動だということが配信界隈全体に浸透してきた、というのもあるだろう。それもあるけれども、2年ほど前にモデレーターの間で伝書鳩行為について話し合い、おおよその基準を統一して、視聴者に何度も周知したことが大きいと思う。
 🐧の配信では、伝書鳩の基準は基本的に割と厳しい。比較的ゆるいカジュアル大会などでは、ある程度大目に見ることもあるが、今回のように本格的な大会では割と厳格にチェックする。なぜそんなことをするかというと、そうしないと「じゃあこれもいいよね?」「なんでこれが良くてあれがダメなの?」となってしまうからだ。
 たとえば、「目の前の部隊、◯◯のところじゃない?」「目の前の部隊、2人しかいないよ」とかいうコメントはどうだろうか。考え方によっては、「推測だからいいのではないか」「キルログから推測される情報だからいいのではないか」というのもあるかもしれない。けれども、そうしたら、推測という形態を取ることによって潜脱的に伝書鳩行為をする人も出てくるだろうし、キルログ情報から推測される情報だったらなんでも書いていいという話にもなりかねない(たとえば、キルログ情報を全部チェックすれば、残り3部隊になったときの生存部隊が誰か、全部分かるだろうし、武器構成も分かるかもしれないけど、それを書いたらダメだろう)。ということで、本格的な大会ではかなり厳格に伝書鳩行為をNGとしている。
 そのようにかなり周知徹底したせいか、現在では伝書鳩コメントをする人はほとんどいない。
 まだ周知徹底ができていないのであれば、定期メッセージを定期的に流すと良いと思う。それによって、伝書鳩コメントを未然に防止することができるはずだ。

(3)伝書鳩コメントへの対応

 それでも、伝書鳩コメントがなされることはありうる。
 そういう場合は、まずはすぐ削除することが必要だ。そうしないと、「伝書鳩やめろ」とかそういったコメントがどんどん出てきてしまうからだ。
 そして、伝書鳩コメントは、悪意がない場合が多いので、場合によっては説明した方がいいだろう。私の場合は、「削除されれば『なんかまずいのかな』と気づくだろう」と思って何も言わないことが多いが、伝書鳩コメントが散見されるような場合はアナウンスしたり説明したりする。

4.同行者/他の参加者や運営批判を注意する

(1)同行者批判への対応

 本格的な大会だと、大会参加者は真剣になる。そして、視聴者も配信者に勝って欲しいと思うから、どうしても熱が入る。熱が入って、それが応援へと転化されるならいいのだが、批判へと転化してしまうことも少なくない。
 たとえば、同行者の失敗が原因で負けてしまった場合、ヘイトが同行者に向かうことがある。特に、Apexなんかだと、強い人同士が組めないようになっているから、チームの中でどうしても実力差が生じる。そして、客観的には強くない人が戦犯であるかのように映ってしまうので、「こいつのせいで負けたんだ」となってしまうことが少なくない。そこで、「こいつ足引っ張りすぎ」「何度同じことやってるの?」というようなコメントが出てくることがある。
 当然、そういったコメントは削除すべきだし、余りにひどい暴言だったり何度も繰り返されるような場合は、タイムアウトや非表示といった対応も考えてよいだろう。
 そして、こういったコメントはとにかく早く消すべきだ。
 なぜかというと、視聴者というのは、実は大多数はコメントをしないのである。コメントをしている視聴者は、おそらく1割程度なのではないか。したがって、大多数の視聴者はコメントをせず見ているだけなのだ。
 そういった暴言コメントがあった場合、大多数の視聴者は何も反応せず、ただ画面の向こうで不快な思いをしている。けれども、素早く消せば視聴者の目に入らないかもしれない、入ったとしても「すぐ消してくれた」と幾分不快感は和らぐだろう。
 そういった、いわばサイレント・マジョリティの人たちがどう感じるか、ということも推し量らないといけない。「コメントで反応していない=何も感じていない」ではないのだ。

(2)他の参加者や運営批判への対応

 同行者批判を例に出したが、他の参加者に対する批判をする人も時々いる。たとえば、特定のチームが無双していると「おもんな」というような批判が出てくることもある。ハイドして不意打ちしてきたような場合は、「きっしょ」というようなコメントが出てくることもある。そういう感情が起きるのも分かるが、しかしそういうコメントをすれば、コメント欄は嫌な空気になるだけだ。だから、そういうコメントも削除するようにする。
 ただ、若干難しいのが、配信者がそういう反応をしてしまった場合だ。仮に🐧がそういう反応をしてしまったら、私はたぶん同調コメントはスルーする。そういう場合にどう対応するか、🐧と考えを共有していないからだ。そこで削除してしまうと、「🐧と同じ反応をしただけなのに、なんで消されるの?」となってしまうだろう。なので、その場合はたぶん私は何も対応しない。
 とはいえ、配信者が感情的にそういう反応をしてしまうからといって、それに同調するコメントが出てくるのがいいのか、という問題はある。別の配信者のモデレーターをやってたときは、私はあらかじめ配信者に「そういう場合、どうします?」と尋ね、「私を諌めてくれていいし、コメントも削除してくれていいです」と回答されたので、それを踏まえた対応をしていた。そのように、配信者に意向を確認して考えを共有することが望ましいとは思う。
 あと、運営に対する批判も基本的には同じだ。運営の手際が余りよくないことも、場合によってはある。そうすると、どうしても視聴者はフラストレーションを溜めてしまうものだ。ただ、ここでも同じ問題があって、配信者が運営に対する不満を漏らしてしまうこともありうる。この辺は難しいところだが、多少の運営に対する不満は目をつぶることにしているが、過度なものは削除したりする。

5.大会情報のアナウンス

(1)大会情報アナウンスの必要性

 ここまで書いてきてなんだが、伝書鳩対応も他者批判も、今回は特に起きなかったので、具体的なアクションはしていない。🐧視聴者の皆さんのマナーが良い、ということに尽きるのだが、この辺は配信によってまちまちだろうから、一般的にはやはり注意した方が良いポイントであろう。
 さて、大会情報のアナウンスに関しては、これは特にモデレーターの義務でもなんでもない。私が勝手にやっていることだ。ただ、大会情報のアナウンスは、いわばサービスとして行っている。
 大会情報のアナウンスというのは、要するに視聴者が知りたい情報だ。これも経験を積むと、視聴者から寄せられる質問のパターンが大体把握できるので、あらかじめ対応することが容易となる。
 質問される具体的な事項は、

  1. どういった大会か(大会名、主催者、コンセプト、賞品、試合数・MAP等)

  2. 他の参加者

  3. 本配信URL

  4. 遅延の有無

  5. リザルト

 といったあたりだ。
 この辺は、頻繁に質問される事項であるし、回答があれば視聴者の満足度も高まるだろう。
 なので、それぞれについて簡単に敷衍していく。

(2)大会概要

 大会概要は、あらかじめ大会HPなどを見て確認しておく。
 大会HPを見ても、色々な情報が載っているので、最初はどこを確認すればいいかわからないだろうが、上記のカッコ内の項目がよく聞かれる項目だ。なので、そこを取り敢えず抑えれば良いと思う。
 今回に関しては、私は以下のような定期メッセージをあらかじめ作成した。

【定期】Apex Legends Asia Festival日本予選(6試合)です。チームRu(w/z LEON代表さん・6面さん) 日本からは、予選上位3チーム+招待枠2チーム=5チームが、決勝(@マカオ・8/19-20)に進出できます。なお、5分遅延で配信しております📺

 このようなメッセージがないと、視聴者は「これ何の大会?」「何試合やるんだろう?」「何位までに入ればいいんだろう?」「予選ってことは決勝があるの?」「チーム名は何?」等々の疑問が沸く。けれども、これを定期的に流せば、そういった疑問はすぐに氷解するはずだ。
 先に述べたことの繰り返しになるが、視聴者の大多数はコメントしない。だから、尋ねる人がいないからといって、疑問に思う人がいないとは限らない。もちろん、「誰も疑問に思ってないことを勝手に説明し始める」というのは愚策であるし、そうならないように気をつけるべきである。ただ、毎回のように来る質問の内容に関しては、疑問に思う人は必ずいるといっていい。なので、そういった内容は定期的に流すと良いと思う。
 もちろん、戦闘が盛り上がっている場面だと邪魔になるので、なるべく戦況が落ち着いているときに流そう。

 また、今回に関しては、以下のような定期メッセージも流している。

【タイムテーブル/定期】最終第6試合開始が19:30から、日本代表決定が20:15と長丁場の大会となっておりますので、時間にはお気をつけ下さい🐧

 大会開始が16時だったのだが、4時間の長丁場だ。
 「18時くらいに終わるだろう」と思っている視聴者がいると、「こんな長丁場になるなら、晩ごはん食べながらみればよかった…」などとなる人もいるかもしれない。そういった事態を避けるため、いわば視聴者が行動しやすくするために、長丁場になる場合はあらかじめ伝えるようにしている。
 お節介といわれればそれまでかもしれないが、有益な情報かなと思っている。

(3)他の参加者

 「他には誰が参加してますか?」という質問が来ることも多い。以前は、その質問にも回答したりしていたのだが、途中からは回答していない。
 参加者は60人もいるので、じゃあ誰の名前を挙げるべきかという問題が起きてしまうからだ。
 私が知っている有名人の名前を挙げるとしても、私が知らないだけで実は超有名人という人もいるだろうし、「なんであの人の名前は挙げないの?」みたいな話になってきてしまう。
 なので、他の参加者に関しては、今は私は特に回答していない。そもそも待機画面で、他の参加者のIDは見れるので、特に困ることもないだろう。

(4)本配信URL

 本配信URLについて尋ねられることも多い。なので、これも私の方であらかじめ確認しておいて、URLをすぐに貼れるようにしている。

(5)遅延の有無

 大会によっては、遅延を入れることが義務付けられる。
 ALGSなどでは7分くらいの遅延が入るし、今回も5分の遅延が入った。遅延を入れる場合は、3分遅延のことが多いが、今回は5分と少し長めだった。
 先に「本格的な大会」というような表現をしているが、遅延の有無・長さと本格度合いは比例するので、「これは本格的な大会かどうか」は、遅延の有無・長さで判断するといい。
 遅延の有無は、視聴者からよく聞かれることであるけれども、遅延があることに気づかない視聴者が「もう試合始まりますよ!」というようなコメントをすることもある。
 たとえば、17:20開始なのに、17:20の時点で配信者が射撃訓練場にいる、というような場合だ。ただ、5分遅延が入っているので、我々が見ている配信は5分前を映したものだ。つまり、17:15の映像を我々は見ているのであり、17:20には配信者は別の行動をとっているかもしれない(17:20に何をしていたかは17:25になって判明する)。
 そういうこともあるので、遅延の有無は把握しておき、聞かれたら適宜答えるといいだろう。
 ちなみに、遅延を入れたとしても、チャットは即座に反映されるので、そこは注意が必要だ。たとえば、17:20に配信者がチャット欄に自らコメントした場合、そのコメントは17:20に反映される。つまり、映像は5分後に映し出されるが、コメント自体は即座に反映されるのだ。ここが若干分かりづらいので、モデレーターは注意しておくとよいと思う。

(6)リザルト

 配信を最初から最後までずっと見ている視聴者は多くない。途中で一旦離席したり、途中から見る視聴者もいる。というより、恐らくほとんどはそうだ。
 なので、状況が把握できない視聴者も出てくる。そういった視聴者のために、リザルトを随時確認し、聞かれたら答えるなり、定期的に流すと良いだろう。場合によっては、配信者も現時点の順位等を把握していないこともあるので、配信者に伝達するという意味でも、コメントに書いておくと良いと思う。現に今回も、マッチごとのリザルトが出るのは配信者が次の試合に入ってからだった(=配信者は試合をする前に現在の順位を把握していない)ので、適宜コメントするようにした。
 リザルトに関しては、基本的には本配信で流すことが多い。
 私の場合は、iPadを横に置いて本配信を流しっぱにし、適宜画面を止めてPCのメモ帳に書き写している。
 具体的には、以下のような定期メッセージを作っていた。

【リザルト】(暫定)総合13位(1位まさのり△40pt, 3位へしこ△26pt)/①7位3kill, ②5位4kill, ③15位2kill, ④6位3kill, ⑤17位2kill

 これによって、現在の総合順位と各試合のリザルトが分かるだけでなく、決勝進出までのポイント差などが分かるようになっている。

(7)定期メッセージを作るコツ

 この定期メッセージに限らないが、定期メッセージにおいて重要なのは、必要な情報を過不足なく記すこと、一義的に明快であること、見やすいことだ。
 たとえば、試合ごとのリザルトを載せるとき、「1試合目7位3kill, 2試合目5位4kill…」などと書くと、少し長くなる。なので、①②といった表記を用いることで「◯試合目」という表記を削った。
 そして、全部読点で区切ると、だらだらした印象を受けるし、見やすくない。なので、総合順位と試合ごとのリザルトを分けるために、スラッシュを使っている。
 必要な情報を漏らさず、一義的に明確であり、しかも見やすいように書くというのは、実は至難の業だ。必要な情報を書いていくと、どんどん長くなってしまう。なので、重要な情報を重要でない情報の切り分けも大事だ。
 そして、多義的な解釈を要求される定期メッセージは良くない。解釈の余地がないように、一義的に書く必要がある。
 さらに、ただ情報を羅列させるだけでは、見やすくはならない。しかも、色を変えたり太字にしたりといった工夫さえできないので、記号や符号だけで情報を整理しなければならない。
 私自身、定期メッセージは綺麗に一発で完成形を作っているわけではなく、配信中に適宜情報を削ぎ落としたり追加したり、順序を入れ替えたり記号を変えたりして改善している。この辺は、経験も大事だし、随時改善する姿勢も必要だと思う。
 リザルトに関しても、最初は1位のリザルトだけ書いていたのだが、よく考えたら3位までが決勝進出なのだから、3位とのポイント差こそが最も重要だと途中で気づき、3位のリザルトも載せるようにした。
 何事も、慢心せずに研鑽する気持ちが大事だ。

6.終わりに

 今回は、残念ながら予選敗退となってしまい、またALGSのLCQとかぶったこともあって、視聴者が分散してしまったように思う。
 そういう意味で、残念なところはあったものの、コメント欄の管理という点では割とうまくいったかな、と思う。
 ただ、それはそもそも荒れるような事態が起きたりせず、マナーよく視聴してくれる視聴者が多かったからだ。常々書いているけれども、視聴者とモデレーター、配信者とモデレーター、あるいはモデレーター相互の信頼関係があってこそ、成り立つものだと思う。そこは気を留めていなければならない。

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