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暗闇の冒険

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映画を見ても忘れちゃうので記録。ただのひとりごとです。
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2023年3月の記事一覧

146.ラストナイト・イン・ソーホー(2021)

146.ラストナイト・イン・ソーホー(2021)

トーマシン・マッケンジーがかわいらしく踊るファーストシーンから心をぐっと掴まれる。後ろで流れるピーター&ゴードンの“A World Without Love”をイントロに,観客は60年代のソーホーへ誘われていく。シックス・センスを持つ少女が,亡霊と幻影を見るうちに,現実と夢の境界を見失っていくという筋書きである。パートナーには美しいアニャ=テイラー・ジョイ。クラブ歌手を目指して都会に出たが,娼婦に

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145.マティアス&マキシム(2020)

145.マティアス&マキシム(2020)

カナダの天才グザヴィエ・ドランが『トム・アット・ザ・ファーム』以来,6年ぶりに監督と主演を務めている。友人たちと撮影しただけあって,リラックスしたムードに包まれているが,内容はセンシティヴである。成り行きでキスした男性二人がその関係をちょっとだけ変化させるこの映画は,ホモソーシャルの中にある愛の機微を儚く掬い取っている。ドランが顔に痣のあるキャラクターとして登場するが,それはお互いの気持ちを確認し

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144.レジェンド・オブ・フォール 果てしなき想い(1994)

144.レジェンド・オブ・フォール 果てしなき想い(1994)

ロッキー山脈北部のモンタナに暮らす3兄弟のお話である。三男が連れてきた婚約者(ジュリア・オーモンド)のことを兄二人も一目で好きになってしまうのがかわいい。物語上の要請というべきか,戦場で三男は死んでしまい,残された婚約者を巡って,兄弟二人の関係が崩れる。美しい女性はホモソーシャルな秩序を脅かすものである。長髪のブラッド・ピットが美しく,広大な自然を背景に馬を駆っていく姿は神話みたいだ。ブラピを好き

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143.クーリエ 最高機密の運び屋(2021)

143.クーリエ 最高機密の運び屋(2021)

実話ベースでなかったら,設定の甘さやリアリティの欠如を指摘してしまう人もいるかもしれない。キューバ危機を解決すべくCIAが目をつけたのは東欧諸国に工業製品を卸すセールスマンだったのだから。なにも知らないセールスマンがソ連からの機密情報を西側へ運び,核戦争を未然に防ぐという筋書きは荒唐無稽に感じるが「事実は小説より奇なり」である。寺山修司の言うように歴史(History)はストーリー(Story)で

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