145.マティアス&マキシム(2020)
カナダの天才グザヴィエ・ドランが『トム・アット・ザ・ファーム』以来,6年ぶりに監督と主演を務めている。友人たちと撮影しただけあって,リラックスしたムードに包まれているが,内容はセンシティヴである。成り行きでキスした男性二人がその関係をちょっとだけ変化させるこの映画は,ホモソーシャルの中にある愛の機微を儚く掬い取っている。ドランが顔に痣のあるキャラクターとして登場するが,それはお互いの気持ちを確認しつつあった二人が和解するシーンのシニフィエとして必要だったのだろう。たかが映画であるが,良作は私たちに痕跡を残す。時に,目に見えない「痣」として。
監督*グザヴィエ・ドラン
主演*ガブリエル・ダルメイダ・フレイタス
2022年
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