33. キッチンの歴史も2ヶ月で辿る旅
トイレの次はキッチン。キッチンと言っても、薪ストーブ。
これまでは、地面にレンガを置き、そこを簡易かまどとしてお鍋を置いて使っていた。まさに「おうちキャンプ」。2020年6月、世界が初めて経験するロックダウンで生活のあれこれが制限され、人々は家に閉じこもる中、もともとキャンプ好きだった人たちが「山に行けば良いんだ」とひっそり山に向かう頃、私たちも家で「おうちキャンプ」を始める。とはいえ、別にここでキャンプご飯を真剣に作るのがこの「当直(一人ずつ交代で毎晩泊まり込む)」の目的ではない。この当直時の食事は必要最低限のもので、保存食やクッキー、ヨーグルトにグラノーラと、何もしないで食べられる物を中心にしていた。冷蔵庫すらないんだから、毎日、自宅からArkadiaに来る人が5kg入り100円の氷をクーラーボックスに入れてくるだけで、なんとか凌いでいた。
エビカニの向こうにあるのがレンガの簡易かまど。毎日だとこれは辛い。
庭に置いたレンガのかまどは、夜のうちにあの滝のような大雨が降ると、地面もレンガもたっぷりと水を吸い込み、薪は乾いていても流石に火をつけるのに苦労する。20分ぐらい格闘することもしばしば。それも不便でならないので、クマ夫が小さいかまど(ストーブ)を作ってくれることに。幸い、家には型枠を作る廃材もセメントも、裏の空き地には古いがそれなりにしっかり形が残っているブロックもある。ネットの情報を拾ってきたクマ夫は、コリコリと設計を始めた。
流し込んだセメントが固まったら、型枠からスルッと取り出せるようにラップで型枠を覆い、そこにハンドクリームなどを塗りたくっておくらしい。普段使っている物より全然安価で構わないから買ってきて、と外出中に頼まれる。ハンドクリームを買ってArkadiaに戻りしばらく作業をしていると、クマ夫が型枠にセメントを流し込んでいる。で、これはいつ使うの?クマ夫の表情が一瞬で変わる。買ってきてと頼んだのに、それを待っている間に作業を続け、結果、ハンドクリームを塗るのを忘れてしまったのだ。あははは。あるある。
ということで、第一号機は当然型枠から綺麗に取り出せずに失敗。写真は日の目を見られなかった第一号機。
続く第二号機。前より少し改良した形でクマ夫も自信あり。ちゃんとハンドクリームも塗って、乾かすと、あれまぁ不思議、スルッと型枠から綺麗に外れる。
これを家の前2.5mのところに設置。
裏の空き地に放置されていた古いブロックを積み、空洞になった土台部分にはちょうど良い大きさの石を入れれば資材の節約にもなる。
出来上がったかまどをじっくり見ると、よく計算されていて、あちらこちらに熱流が無駄なく上るための傾斜や段差がつけられている。省スペース省薪でも火力を弱めることなくしっかり熱が上に上がっていく仕組み。登り窯式、とでも呼べるのだろうか。後ろにはちゃんと煙突もついているので煙もスムーズに上に行ってくれる。
近所の鉄工所から買ってきた鉄板を加工すれば、ちゃんとストーブとして使える。この鉄板加工は、この集落の入り口に住むセサールに依頼した。彼は溶接加工ができる。その鉄板が出来上がるまでの数日は、BBQグリルの網でしのごう。
火を起こす。
大きな鍋の水があっという間に沸く。
この日は二人してArkadiaでの当直だったので、早速夕飯を作る。
クマ夫がこのArkadiaに初めて作ったものがかまど。記念すべき?仕事第一号。それで火を起こして作った夕飯は、インスタントラーメン(メキシコで日本製のインスタントラーメンは超貴重な家宝といっても良いほどのもの)。
後日、出来上がった鉄板。快適です。
レンガを積んだかまど。
ブロックを積み、セメントで作った登り窯式煙突付きのかまど。
室内のキッチンが出来上がるのは数ヶ月後になるのだが、これでなんとか快適に朝のコーヒーが飲めるようになった。それだけでも気分が上がり、ここが自分たちの家(になる)との思いが少しずつ膨らんでいく。
こんな素敵な朝ごはんがぱぱっとできるの、最高!
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