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103. 村の人たちとの関わり

Casa Arkadiaのある地域は、メキシコ第二の都市グアダラハラ都市圏の外れ、小さな村のそのまた外れ。長い間、一家族が所有していた広い敷地が40年ほど前に分譲された。そのちょうど東西真ん中のあたりに、私たちの土地がある。分譲された土地は数百の持ち主に分けられているが、実際ここに定住しているのは私たちを含めて10家族ほどしかいない。

 上下水道は通っていない代わりに、西の外れにある農場から汲み出される井戸水を、ホースを地中に埋めて近隣住民と分け合って使っている(そうしないと、メキシコの法律上、占有禁止となり農場も井戸水を使えなくなってしまうから)。農場の持ち主と私たちとの間に直接的な金銭のやり取りはないのだが、交換条件として毎月各家庭から少しのお金を維持管理費として徴収している。ホースの修繕、それと農場から私たちの前を通って村に続く道の整備。

 道の整備ってそれ、市の税金でやるものじゃないの?と思っているのだが、財政難もあるしこんな住民の少ないところを舗装するなんてこの国はやらない。なので自分たちで少しずつやろう、というわけ。

 その、徴収の履歴や会計管理が、今年6月まではひどいものだった。

 手書きのノート数冊に、色んな人の字、書き方で適当にまとめられていた。

 

たった200件の出納履歴がこんな量のノートに。。。

 それじゃ今後どんどん利用者が増えていった場合ダメでしょ、ということで、6月に私が引き継いだ。全ての出納履歴をエクセルに落とし込み、日付順、利用者ごとに並べ替え、誰がいつ、どこまで支払ったかがわかるように。

 私たちよりも若い世代も住んで入るが、事務仕事、コンピューターを使った仕事をしたことがない彼らにはとても無理な話だったけど、むしろ私たちにはこうしないと今後大変なことになるのが目に見えているため、少し面倒だったけどやることにした。

 まぁまぁ大変よ。

 領収書の書き方も知らない人ばかりなので日付もない、書かれた字が読めない、支払いの宛名目的がわからない、などなど。

これはまだマシな方 


宛名がないとか番号振ってないとかやめて〜

 でも一つ一つ片付けていった。

 結果、大した量ではないけれど1週間ほどで片付いた。エクセルにまとめてスッキリ。ほっとしたわ。

 4月に前地区長が不正をしていると証拠もなしに声高にギャンギャン言っていたエフラおじさんが新地区長に名乗り出て、まあだったらやってみろよ、ということで選出はされたものの、結局エフラおじさんはたった2ヶ月で雲隠れ。年明けに大金叩いて道路整備したのだが、本来やる必要のない農場には続かない道(そしてエフラおじさんの家の前)をむしろ時間をかけて整備してしまったことをみんなから突かれたためだ。しかも整備したのは義理の弟。あ〜あ、こんな小さい地域、誰がどこに住んでいるかみんな知ってる集落の中でそういう流用というか実質横領をするかね。エフラおじさん、3ヶ月ほど雲隠れしていて、今はたまにすれ違うけど挨拶もしない。残念な人でした。今後どうするんだろうね。

 なので現在、この集落は「地区長不在」のまま。


 この集落のことを一番よく知っている前地区長のクラウディア(セサールの奥さん)は、色々なコネクションを持っており、また、市役所担当者との掛け合いも上手にやっている。先日、地区から村に続く道の整備を市役所の土木課に依頼に行ったときも、前任者から(もちろん)引き継ぎされていないことから事情を説明。どうやら近いうちに何か動きがありそうだ。

 実際、彼女の話し振りを横で見ていたが、話の進め方がうまい。担当者の男性とうまく和やかに、でも要求はしっかり言っている。男同士の話し合い、陳情だったらちょっとこうはいかない気がする。

向こうが市役所の担当者。みんな大体こんな感じ

 そういう場にも駆り出されるわけなのだが、いい勉強といえばいい勉強だ。日本の地方もこういうふうにやるのかしら、とか考えながら見ていた。

その週末、クラウディアからセサールの誕生日だから農場に夕ご飯を食べにおいで、と誘われた。

 日が暮れる頃行ってみると、いつでも降ってくる可能性のある雨を避けて、農場の小さな小屋の中にガスコンロを置き、クラウディアの義母リタが大きな鍋でカルニータを作っていた。

即席コンロでカルニータを作るリタおばさん、器用です
じっくりじっくり揚げ煮にします

 カルニータとは、豚肉の塊を塩とオレンジと一緒にラードでゆっくり時間をかけて揚げ煮したもの。メキシコ全土でも食べられるがやはり本場は隣のミチョアカン州。じっくり揚げ煮された豚肉はホロホロだしジューシーだし、1/4頭分の肉が大家族みんなの胃袋に消えていく。


 めいめい、好きな部位の肉を切り取ってトルティージャに乗せる。サルサメヒカーナ(トマト、玉ねぎ、パクチー、青唐辛子を細かく刻んで塩で和えたもの)もバケツみたいな大きなボウルにたっぷりある。フリホーレスも用意されていたり、子供たちはあばら骨についた肉をしゃぶり尽くしているし。

お肉は適当に刻んでおいてくれます
ハラペーニョまでガッツリ入ってるじゃん


次回は私もこれ食べる!


巻いてタコスにしてもいいし、トルティージャと分けて食べてもいいし


 それぞれが食べ終わると外のテントに集まり、おしゃべりやら歌がはじまる。

わちゃわちゃ

 クラウディアとセサールの農場にはほぼ毎週末こうして彼らの家族が集まり、食事とおしゃべりを楽しんでいる。全員集合すると大人が17~8人、子供が12人ほど。わちゃわちゃだし、誰が誰の子供かを覚えるのに一苦労。そして困るのが、お母さんの名前を娘の一人が継ぎ、そのまた娘の一人が名前を継ぎ、男親も然り。なので、上記の集まりの中にはリタが3人、ヴァネッサが二人、アルフレドが3人、という次第。でもこれ、メキシコではよくあること。慣れるしかない。

お誕生日なのでクラウディアにほっぺチューしてもらって照れまくるセサール兄

 この夏も、ほぼ2週間おきに私たちは彼らを訪れ、あれやこれやと美味しく楽しいひと時を過ごすことができた。

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