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91. 春の畑とトラクアチェ

クマ夫はコツコツと屋内の石膏ボードを取り付けている。

自分のペースで好きなT Vシリーズを聞きながら。まあ呑気なもんだわ、とも思いつつ、でもきっちりな出来栄えなので文句は言うまい。職人気質というかアーティスト気質な彼ならではの進め方。

 一階の食品庫の壁を作り終え、今度は2階。

 こちらも、床にはブロックを2段並べる。きっちりまっすぐ。

 どんどんアルミ製の枠を設置してボードを貼り付けていく。

 今まで東側のバスルーム窓から指していた朝日が、西側の部屋に新しくできたこの壁に当たる。そのうち、その光も入らなくなってくる。作業が進むに従って、それまで見ていた光景が変わっていく。当然っちゃ当然なんだけど、ちょっと感慨深い。



 ちょっと問題発生。

 リサイクル素材の緩衝材を漆喰ボードの内外の間に挟み込むことで防音防温ができる。たっぷり買ったはずのこの緩衝材が打ち止め終了!買い取ったリサイクル業者に電話するも返事なし、電話に出ない。少なくともあと200ピースは必要なのに。

 ということで、無理に推し進める前に少しこの作業は横に置いておこう、と。その間に緩衝材をどこかで見つけられるかもしれない。


 さて、畑はどうなったか。

 私は毎日少しずつ、犬達と一緒に裏手の空き地や牛の通り道に行き、フカフカの土を畑に運び込む。もちろん、先日の火事で燃えた草木の灰も混ぜ込んで。

 2月に脇芽を欠いたトマト。

 具合が良くない。


 葉っぱが内側に丸まっていく症状は歯止めがかからず、葉っぱの色も少しずつ黄色くなっていく。全体に勢いがないし、伸びよう身をつけよう、という覇気が感じられない。脇芽と一緒に色々落としすぎたか?


水や栄養は与えすぎてもいけないと言われているので少し加減しつつ。だがこれがいけなかった。

 ここの春は乾季の真っ只中。最後に雨が降ったのは一月、しかも地面を少し濡らす程度。植物達の渇きを癒すには全く足りない。毎日の平均湿度は20%ほど。こんな状態なので1日おきのトマト達への水やりではとんでもなく水が足りなかったのだわ。


 と気づいたのは時すでに遅し。

 一応なんとか身をつけたトマト、ミニトマト。毎日上から見ている鳥達との今日そうなんだけど、いくつかいただくことができた。でもやっぱりちょっと悲しいわ。これ以上伸びてみをつけることがないトマトさん達。このまま鳥さんたちにあげることにした。


 一度、体の大部分の葉っぱを落とされ、しかも水や肥料はギリギリまでというか全然足りないよな環境で受けたダメージが大きかったか、結局そこから盛り返すことはなかった。

 ごめんね、トマト。


 気休めに蒔いてみたニンジンは中指程度に育ったところで収穫。美味しくいただいた。でもやっぱりちょっとニンジン苦手。


 青梗菜やスイスチャードは相変わらずぐんぐん。炒め物にスープに。嬉しいもんだわ。


 ある日の夜。犬を連れて散歩に行ったクマ夫が私の名前を呼ぶ。

「猫の餌を水を持ってきて」

 なんだろう?と行ってみると、子供みたいに嬉しそうなクマ夫。

「トラクアチェがいたんだ!」はい?

メキシコに生息しているトラクアチェというオポッサムの種類で、大きさは雄猫ぐらい。とんがった長い鼻にネズミのようなしっぽ。

お散歩の途中で若が出くわして、その場でトラクアチェはころんと丸まって死んだふりをした、というのよ。なので、起きた時に食べられるように横に餌と水置いておこうよ、って。なんて可愛らしいの、クマ夫。

死んだふりして丸まってるけど、お口ヒクヒクしてる。


 そんなトラクアチェ遭遇が3週間に2回。

 おそらく先日来の火事で自分たちの縄張りに食べるものがなくなったので、Arkadia周辺に出てこざるを得なかったんだろう。かわいそうに。雨季になって植物が芽吹き、昆虫がたくさん出てくるまでもうひと辛抱。それまで何とか生き延びてほしい。

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