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この地域では毎年、10月から6月初旬まではほとんど雨の降らない乾季となり、その分、6月半ばから9月いっぱいまでは一年分の雨が降る。降る、といっても一日中しとしとではなく、夕方から夜半にかけて土砂降りが1日おきぐらい。そのカレンダーはだいたい正確で、それを知っている私は「雨が来る前に天窓をどうにかしないと」と、いてもたってもいられなかった。
家の中央、7m ×14mの空洞。そこに、あの土砂降りが来たら大変なことになる。
業者2軒に見積もりを出してもらったが、個人経営のところだったので少し不安。というのも、先月作った窓枠とドアの業者も同じく個人経営だったのだが、そのドアの留め具が一つ、3週間で取れてしまったからだ。修理に来てもらう手筈だったのだがもちろん来ない。メキシコで、個人経営の行けないところは、やったらやりっぱなり。アフターケアとかあるわけなく、苦情の電話ももう受け取らないし、答えてくれたとしても直しになんて来ない。お金にならないことはやらない。酷えもんだ。
家と家財の安全に関わる大切な部分なので、ここはしっかりとしたところにやってもらいたい。と思っていたら、二軒隣のエクトルさんの甥っ子だか天窓やガレージの屋根の会社に勤めているという。これを渡に船、というのか。本格的な浮きが始まるまであと3週間。
そこの業者から1人、採寸に来て資材を見せてくれる。見積もりが送られてきて、この値段と会社の実績なら安心できるということで半額支払いに行く。
この大きな街で40年の実績のある天窓、屋根の専門業者。施工例の写真もたくさんあり、安心した。
だがしかし。
何処も考えることは同じなのか。雨季の直前になると、修理依頼が極端に増えて、順番待ちの私たちの天窓は7月中旬の施工になる、と。まじかよ。
もうこれは仕方ない。のんびりしているつもりはなかったけど、結果、そういうことなのだ。

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お願いだからまだ来ないで、雨季!

Arkadiaに帰ってきて、クマ夫がアイデアを出した。こういう時の彼の「アイデア」は、現実的で理想的なもの半分、突拍子もなく「なんでそういうこと考える?」というもの半分。今回は前者。
資材屋さんから厚手の黒いプラスティックシートを買い、屋根の空いた部分全てを覆うというもの。天窓設置部分を針金やらでぐるっと押さえつけ、ブロックを至る所に重しとして置く。
だがしかし。
雨は降る。降り始めた。まだ小雨程度だ。
けれど、その雨水の重みに耐えられずにシートは端から落ちてきてしまう。ちょうど水でたるんだあたりにしたから穴を開け、先日ショベルカーが破壊してしまった四角いポリタンクを半分に切って、水を受け止められるように置く。
数日、それで耐えてはいたが、ある晩、しかも私1人が当直の夜、それも耐えられずに四方から決壊。天窓下の部分は水浸しになってしまった。

 そこで、キッチンの流しように買っておいた排水溝の部材を取り出したクマ夫は「一か八かだ」とやけくそになって、天窓を覆っているプラスティックシートの真ん中に切れ目を入れ、その部材を差し込んだ。わざと雨水を集め、意図的に直接階下のポリタンクに集める作戦だ。作業を終えたクマ夫のやってやったぜ感のすごいこと。

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天窓を覆うシートに排水口をつけました。


だがしかし、その当日は雨が降らなかった。
 翌日、再び私が当直の時にそれはやってきた。
 日本で言うところの大型台風並みの雨風。降水量でいうと1時間に50mm以上の激しい雨だ。
シートにはあっという間に雨水が溜まり、水風船のように今にも破裂しそうだ。そこを、モップなどを逆さに持ってその排水口あたりまで押し上げ、水を落とす。1000L入りのポリタンク半分があっという間に水で満たされてしまうので、今度はバケツでそれを汲み出して、数メートル先のドアから家の外に水を出す。
体力に自信はある方だが、更年期の体で20Lバケツはきつい。7割程度しか入れられないが、それでも途中でこぼすよりはマシだ。

 真夜中。
 暴風雨に雷。
 時に、隣から借りている電気も切れたり。
 大雨と雷の爆音以外何も聞こえない。
 天井からは滝のように落ちる水と、どこまで耐えられるかわからないプラスティックシート、2階テラスから流れ込んでくる雨水(これはヘススたちの施行ミス。テラスの排水口つけず、テラスに傾斜もつけなかった)。
 テラスや一階部分のドア、窓、それらを雨から守る屋根はまだ一つもついていない。(くそ、なんでヘススたち、一言もアドバイスしてくれなかったんだ)風向きによっては窓枠の隙間や、ドアの下からどんどん水が入ってくる。
 階下でポリタンクから水を掻き出し、外に出す作業を小走りで休みなく20分、シートに溜まった水をモップで突いて下に落とし、その後テラスから入り込んできた水をちりとりでかき取って下のポリタンクに投げ入れる作業20分、その繰り返し。
雨自体は2時間も降らないのだが、やっと雨が止んでホッとした後も、水掻きは終わらない。

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 夜中に、まさにヘトヘトである。
 この時に身をもって覚えたのが「火事場の馬鹿力」。
 何一つ、壊れたわけではないのだが、その大雨の力と風の強さに呆然として、しばし何も考えられず何もできず立ち尽くすこと数回。
 その間、嵐の「Happiness」と「GUTS」を歌いながら、なんとか諦めずにやってこれた。

 天窓施工の7月中旬まで、よく自分たち頑張った、と思う。体力的にも精神的にも、もしかしたら人生で一番頑張った数週間だった。

 おかげで、この1ヶ月ちょっとの間に、なんと6kgも体重が落ちたことを考えると、どれだけハードだったか。ほんの2年前まで高い金払ってジムでヒーこらやってて1kgも落ちなかったのに、どうよ、この落ち加減!


 


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