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コロナ療養中にて「カビリアの夜」
初めて観たのは20歳くらいの時にフェリーニの存在を知らずに観ました。 当時も、はっきりとした瞳のジュリエッタ・マッシーニに惹かれ、話も面白くて、でも裏切られたラストが悲しくて悲しくてすごく泣いてしまいました。
フェリーニ監督が『道』に続いて再びジュリエッタ・マシーナを主演にした数々の映画賞を受賞した名作。
◆フェリーニとマシーナは1943年に結婚し、『道』(54)本作の他、『魂のジュリエッタ』(64)、『ジンジャーとフレッド』(85)で監督と主演のコンビを組んだ。 ◆本作は1966年にニール・サイモンの台本でブロードウェイ・ミュージカル「スウィート・チャリティ」となり、68年に同題でシャーリー・マクレーン主演の映画にもなった。
【ストーリー】 娼婦カビリアは、恋人に川に突き落とされても、仲間に夢を語って明るく生きていた。 ある晩、彼女の夢が実現し、有名な映画スターが彼女を車に乗せて、ナイトクラブから豪邸に連れて行った。 だがスターの昔の愛人が突然そこに現れて…。
監督:フェデリコ・フェリーニ/脚本:フェデリコ・フェリーニ、エンニオ・フライアーノ、トゥリオ・ピネッツ/撮影:アルド・トンティ/音楽:ニーノ・ロータ/制作:ディノ・デ・ラウレンティス ジュリエッタ・マシーナ/フランソワ・ペリエ/アメデオ・ナザーリ/アルド・シルヴァーニ/ドリアン・グレイ
それまで裏切られる映画なんて沢山観てたし、娼婦達に群がる最低な男達そして騙される女達というパターンもたくさん観てたと思う。
でもなぜだろう、どうしてカビリアの笑顔だけはこんなに悲しいの??と自分でも理解出来ない感情で止まらない涙に動揺した事を覚えています。
そしてDVDで持っていたけれどずっと観ていなくて、今日、20年ぶりに観ましたが、あの時の答えにすぐに気がつきました。 どうしてカビリアがこんなに魅力的で悲しいのか。
それは彼女が誰よりも「素直」だったからだと強く感じました。むき出しの心のまま生きるカビリア。
川に突き落とされるまで男を信じる素直さ、バカにされたら怒れる素直さ、俳優と出会ったら嬉しくて、でも仲間に信じてもらえないと悔しいからと泣いてサインをお願いできる素直さ、そして音楽が流れたら楽しくて踊ってしまう素直さ。クラブでのマンボもキュートなダンスでもっと見たかった!清々しいくらいの正直な心。ピュアな魂。
だから催眠術にかけられるシーンは、すぐ暗示にかかっちゃうんだから(;o;)と不安で怖くてドキドキしました。 催眠術師に促され少女に戻ってワルツを踊るカビリアはとても可愛らしかったけれど、やっぱりそこでオスカーに目をつけられてしまったんだから、催眠術師の罪も重いぞ、と恨みましたが。
素直なカビリア、大好きな親友ワンダに一目でも会わせる暇もなく一途に飛びこんだのに、本当にひどい男、クソヤロー。
俳優の豪華な家での出来事がカビリアの貧しさから抜け出したいと願うきっかけになったのでしょうか。聖母マリア様に生活を変えたいと切に願うようになったカビリアに観る人はみな、幸せになってほしいと願わずにはいられないのです。
しかし家を売り払いついていこうと信じたオスカーにまで裏切られたと悟った時、「生きていたくない、もう生きていたくない!!」と叫ぶ彼女の姿に胸がちぎれるかと思いました。
それでも立ち上がって道を歩いていくカビリアを包むように流れてくる音楽と優しげなお嬢さんから「こんにちは」と声をかけられ、微笑み答える彼女の笑顔の美しさ、その眼差しにまた泣かずにはいられませんでした。
カビリアにはワンダがいる。音楽がある。それしかないのかもしれないけど、その二つがあればカビリアは生きていけるかもしれない。そのくらいワンダも音楽もカビリアの事を愛してくれてるのだから。
「道」を観たときも感じましたがフェリーニは人の気持ちをまっすぐにそして分かりやすく画面に映してくれるんだなと思いました。
あんまり有名じゃないのが不思議だけど本当に名作だと思います。
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