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J-RACE を攻略する

日本区域麻酔学会が主催する区域麻酔検定試験(通称:J-RACE)という試験があります。マニアックですが,麻酔関連ではすこし有名な試験です。このたび,非麻酔科医の私がこの試験に合格できたので,そのことについて書いてみます。


どんなひとが受けたのか(私について)

まずは私の背景を書こうとおもいます。どんなひとが受けたのかを知ってもらえれば幸いです。

私は救急科専門医として働いています。つまり,受験時点では麻酔科資格のない非麻酔科医でした。

救急には外傷患者がたくさん運ばれてきます。入院もたくさんいます。重症度もさまざまです。手術まで待機中の人もいます。救急医の仕事としては,それぞれの場面で侵襲的な治療をすることがあります。胸腔ドレーンの留置や脱臼・骨折の整復,気管挿管などです。これらに共通しているのは,すべて「痛み」を伴うということです。私はだんだんと,この「痛み」をどうにかできないかと思い始めました。救急医の鎮痛手段は創部への局所麻酔と,静注フェンタニル,あとはいくつかの内服薬しかありませんでした。侵襲的な手技や外傷自体の痛みが多種多様であるのに,鎮痛の手段が少なすぎると感じていました。それまで私は麻酔の専門的な修練は受けていませんでした。

そして救急科専門医としてしばらく働いてあと,麻酔科で痛みや鎮静の勉強をさせてもらえるように各所にお願いをしました。当初は「硬膜外鎮痛ができるようになる」という目標をたてました。麻酔を知らない自分としては,硬膜外ブロックが魔法のような技術に見えたので,とりあえずそこを目標にしました。

麻酔の研修は週 2 日をあてさせてもらいました。手術麻酔を通じてさまざまな手技にふれる機会がありました。そのなかでも区域麻酔は,自分の扱ったことのない新鮮な分野でした。そして「痛み」をなんとかしたい,という最初の動機に対するひとつの大きな答えでもあったように感じました。

受験の時点で,麻酔科標榜医をもすぐ取れそうなところで,麻酔科専門医は持っていませんでした。

なぜ受けようと思ったのか

ある程度,第三者にもわかる区域麻酔についてきちんと学んだ証明が必要だと感じていたからです。

麻酔研修をはじめると同時に,その技術を救急現場でも活かせないかとつねづね考えていました。すでに述べた通り,区域麻酔の技術は救急現場とものすごく相性の良い手技でした。

私が院内の救急の現場で区域麻酔の手技を行うということには,いくつかの問題がありました。1つは自分が未熟であること,2つ目はインシデントが起きたときのサポートをどうするのかということ,そして3つ目はそれらをどうやって解決したのかを,他者に対してどう説明するか(納得してもらうか)ということでした。

サポートについてはもっとも気を使ったことであり,もっとも重要であると考えていました。そしてそれには麻酔科の協力無しにはありえませんでしたし,麻酔科の先生と face to face の関係を築く必要を強く感じました。この関係は手術麻酔を研修させていただく過程で良好な関係が築いていけたと思っています。

問題は1つめをどうするかということでした。未熟を脱するためには勉強が必要であり,またそれを証明するには(3つ目の問題)第三者の評価がいちばん確実です。そこで見つけたのが,J-RACE でした。

いつから準備したのか

J-RACE を知ったのは受験する前年の秋前頃だったと思います。麻酔科の先生の資格欄に J-RACE の文字があり,それが区域麻酔の検定試験であることを教えてもらったのが最初でした。さっそく学会の要項を見てみると,年明けからの出願開始ということで,それまでは何もしませんでした。

出願開始日にそっこうで受験登録しました。この試験は会場のキャパの問題でいつも締切がめちゃくちゃ早いので,受験しようと思っている方は注意が必要です。

そしてそこから問題集を買い,ちょこちょこ勉強を始めていました。実質勉強期間は年明けからの数ヶ月です。

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