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かるた展望第78号 名勝負を振り返る第4回 印象的なコメント

 先日、かるた展望第78号が発行されました。新メンバーが加わり、非常に内容が充実したものになっております。ページ数も150を超え、盛りだくさんです。私の方も、今号でも名勝負を振り返るを執筆しました。今回は、松川永世名人と種村永世名人が対決した、第31期・第36期名人位決定戦を取り上げています。後の永世名人同士の唯一の対決となり、特に第36期は名勝負中の名勝負です。詳細は記事を読んで頂ければと思いますが、今回の記事はより一層取材の段階から興味深かったです。永世名人と永世名人が語る勝負論がぶつかり合う機会は滅多になく、その勝負論は今でも通用することが多々あり、だからこそお二人が永世名人たるゆえんと感じました。ここでは、かるた展望の本編の対談の記事の中から、特に印象的なコメントを抜粋していきます。かるた展望を入手していない方も、この抜粋からお二人の勝負師としてのエッセンスを感じてもらえればと思います。

やはりこの駆け引きが、最終的な勝負のあやになります。かるたの札を取る速さだけを追求している人ではこうした駆け引きは出来ないと思います。これはかるたに限らず、どの世界でも同じかもしれませんが、相手をある方向に誘い込んだり、 こっちの方に向かせたりするということは、自分自身でその勝負の全体構成を作り上げないといけないのです。そして、その中で相手を追い込んでいく、こういう感覚がないと本当の勝負師の気概までには至らないのだと思います。

かるた展望第78号p58 松川

結果論から物事を判断するのは誰でもできます。取り上げるべきなのは、「みよ」を送った自分がどういう精神状態で、どのような効果を狙っていったのか。そのことに対しての自分の勝負心を大事にしないといけないと思います。 やはり勝負だから、勝ちと負けがあって、勝ちばかりを信じてやるわけではないのです。これをやることによって、負ける可能性が十分高いこともあります。でも、あえてこの勝負をかけることの肝はそこにあるのです。

かるた展望第78号p59 松川

61歳の時の、名人戦に対する、私の思いというのは、初めて名人を取った21歳の時の思いと、 そう大きくは変わりません。やはり、そういう情熱を持っていたことが、私にとって、一番の財産だと思います。

かるた展望第78号p60-61 松川

勝ちに行くときは、心に何か芯がないとやっていけないと思います。その中で、私は自分の型を崩したら勝負にならないので、自信を持って行き切るしかありませんでした。松川さんが僕らに教えてくれたことの一つとして、名人たるもの負けてもいいからとにかく顔を出していろんなとこに行けというものがありました。だから、各地の大会ではいっぱい負けたりはしているのです (笑)。でも逆に、そうした場所で負けることがあった方が、本番のここでは集中したらまだ勝てるかもしれないというふしはありました。

かるた展望第78号p61 種村

誰だって負けることは嫌ですが、負けることを恐れてはいけないのです。負けて初めて勝つことの喜びを知ると同時に、負けることによって自分の良いところも悪いところも全部見えてくるのです。 勝ってばっかりいる人の中には、実は自分がよく見えてない方が結構多いです。

かるた展望第78号p61 松川

今回の私と松川さんの勝負が、名勝負になったとしたら、両者の心の中にあった何かが発揮されて堂々と試合をしていたからだと思います。だから今映像を見ても、そうした印象を受けるのでしょう。

かるた展望第78号p61 種村


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