フェミニズムと新型コロナウイルスと

先日読んだ、『上野先生、フェミニズムについてゼロから教えてください!』(大和書房)がすごくわかりやくて面白かった。
2人の著者、上野千鶴子さんは母の1つ年上、田房永子さんは私の3つ年下で妹と同じ年。2人の対談形式で進む女の葛藤にまつわる話は、私と母の時代の話そのものといってもいい。

大学に入学して私に彼氏ができたとき、母は「自分でちゃんと避妊しなさい」と、コンドームではなく、女性が自分でできる避妊方法について私の寝室で話してきた。
それは、母の体験というよりは、確か、上野千鶴子さんの著書『スカートの下の劇場』に出てきた内容そのままだったと思う。
身近なものではなくて、どうやって手に入れたらいいかもわからなかったし、その内容自体を役立てることはなかったけれど、母の複雑な想いは伝わってきた。

父はいつも母が娘に性的な話をするのをものすごく嫌がったけれど、母は大切なことだからと、いつだって譲らなかった。

さて、上記の本の中で、印象に残ったことの一つが、田房さんが話していた「社会にはA面とB面がある」ということ。

「政治経済とか、時間とか、雇用は社会のA面で、裏側のB面には生命とか、育児とか、介護とか、病気とか、障害とかがある」と、田房さんは説明する。

「A面は融通がきくけど、B面はかけがいのないもの、代えのきかないもの。A面には男たちがいて、女たちも最初はこっちで暮らしてるんだけど、出産や育児にぶち当たったとき、B面にぐーんって行かなきゃいけないんです。
男性も病気や怪我で変わるけど、基本的に A面にずっといられる。女はA面とB面を行ったりきたりしなきゃいけなくて、たとえばB面の病院で『流産しそうだから休んでください』って言われて、A面で会社と折り合いをつけるのに苦労したり」。

上野さんは、同様のことを、「市場」と「家族」という言葉で説明する。

フェミニズムが訴えてきたことの1つは、このA面とB面の風通しをもっとよくすること。男も女も、自由に両方を行ったり来たりできること、ではないだろうか。

震災や台風被害、そして、今回の新型コロナウィルスによる混乱。それでも会社優先なんていうA面優位な考え方ではもはやなりたたないということを、私たちは目の当たりにしているのかもしれない。

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