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ニンジャスレイヤーTRPGソロシナリオ:「消えたヤクザと都市伝説」リプレイ【マーダー・ベンダー・アンド・ニンジャ 】 #前編

概要

コケシマートの未公開株券を強奪すべくヤクザの事務所に侵入した第1回、ミヤモト・マサシのマキモノを奪うべく、歴史のある寺院に侵入した第2回、消息を絶ったヘルカイトを探して謎の廃工場へ侵入した第3回、首領ラオモトの子息を救出すべくトーフ工場へ急行した第4回を経て我がサンシタニンジャ「ノーマーシー」の冒険も、なんと5回目の任務に挑むことになりました。今回は上述のリンク先にもある「消えたヤクザと都市伝説」に、ニンジャオンします。皆さんもニンジャオンしましょう。

マイ・ニンジャの能力値

本編

「ドーモ、ソニックブーム=サン。ノーマーシーです」ネオサイタマは今日も雨。ここはトコロザワ・ピラーのトレーニング・グラウンド。ビヨンボ・パーティションで区切られたフロアの片隅には直立不動の年若い労働者と、デスクに座って彼を見上げる疲労困憊のサラリマン風の男。両者ともにニンジャだ。

「……ドーモ、フマトニです。タイムイズマネー、単刀直入に言います。君に任せたいミッションが発生しました……」ソニックブームと呼ばれた上位ニンジャは、今はフマトニと名乗っている。彼に消耗を強いているのはニンジャのイクサではない。終わりの見えない❝にわかニンジャ❞の大量発生であった。

(まるで「雨の後のタケノコ」だぜ……)ネオサイタマで暴れる野良ニンジャを大人しくさせ、組織的に管理するのが彼のビズだ。しかしネオサイタマの雨が今日も止まないように、ニンジャソウル憑依者の発生は今日も止まらない。むしろ増加傾向にあることがスカウト部門の調査で明らかとなっている……。

「概要を説明します。アー、下請けの営業が……ンンーッ!我が社の主力商品の在庫を抱えたまま失踪しました。詳細は君の端末に送信するので……」「その人を探して、連れ戻せばいいのですか」この男にヤクザの仕事を説明するのは骨が折れる。ミカジメ取り立てさえ出来るかどうか疑わしいところだった。

ノーマーシーはソウカイヤを漠然と「ニンジャ営利組織」としか捉えていないし、その過程で暴力と暴力が衝突することにも特に疑問を感じてはいない。ここはネオサイタマだからだ。(ガーゴイル=サンよォ、気まぐれに野良ニンジャを拾って育てるのは結構だがなァ。肝心なのは教育だろうが、教育……!)

「……事実関係を突き止める必要があります。構成員……ではなく、営業が担当していたエリアに向かいなさい。最低でも何かの手がかりを発見すること」「ヨロコンデー!」そう言ってノーマーシーは此処へ来た時と同じようにして、回転跳躍で強化窓ガラスを突き破って真夜中のネオサイタマへと躍り出た。

【マーダー・ベンダー・アンド・ニンジャ】

小さな相棒「モーターロクメンタイ」の案内に従ってノーマーシーが訪れたのは地下駐車場の入口であった。(何というか、治安の良くない区画だな……)率直に言ってスラム街の一角である。(こんな場所に愛車を預けようとする連中の気が知れない……)閉ざされたシャッターの前に、何者かが屯している。

服装、髪型、そして喋り方、ついでに刺青で「私は堅気の人間ではありません」と全身全霊で主張している敵性クリーチャーが、約10匹。そのどれもが、思い思いに自由な時間を過ごしている。一見して非ニンジャ。装備も貧弱で、何らかの組織のバックアップがあるようにも思えない。「とりあえず殺すか」

まずはクナイを投げて数を減らすとして、後は如何に料理するか。敵は慌てて逃げ出すか、それとも徹底抗戦するだろうか。様々な可能性を吟味しながらクナイを構えた、その瞬間。輝く何かが視界の端を横切った。振り向くと、そこには月光を浴びて輝くキツネが佇んでいた。いつの間にか、雨は止んでいた。

此処は自然公園ではない。中国地方でも、ましてや極北のドサンコ・ウェイストランドでもない。(ネオサイタマのスラム街に、野生のキツネ?)神々しささえ感じさせる美しい毛並みだった。カネモチのペットが逃げ出したか?いずれにせよ仕事の邪魔だ。追い払おうと試みるが、キツネは微動だにしない。

ノーマーシーの脳裏に、ブラックマーケットで出会ったキツネめいた女の姿が映し出される。謎のマキモノと引き換えに、彼から大枚15万円を巻き上げた恐るべき女。その押し付けられたマキモノは今も大事に懐にしまってある。……そしてキツネの視線は、彼の懐に固定されて動かない。動こうとはしない。

(続く)


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