兄とおかんと心霊写真

日に日に気温が高くなってきて迫り来る夏に怯える毎日。超嫌。

本格的な夏が来る前に、幼少期に体験したちょっと怖い話をしようと思う。夏は嫌いだけど夏を先取りしよう。

私が小学校3〜4年生くらいの初夏の話。

私には2歳上の兄が1人いる。
その日家では母と私と兄がそれぞれテレビを見たりゲームをしたりと別々のことをして過ごしていた。

夕方 日も暮れ出したころ、兄の友人であるK本君から「借りていたゲームを返しに家の下まできた」と兄宛に連絡があった。
母は家の下とはいえ何かあったらいけないからと当時使っていたガラケーを兄に渡す。
兄はガラケーを受け取りK本君の元へと向かった。

当時住んでいたビルは一階の駐輪場が広く、キックボードやローラースケートなどを練習出来るような空間があった。小学生であれば立派な遊び場に出来る。

数十分ほどしてから、ドタバタと焦りながら兄が帰ってきた。

兄「心霊写真が撮れてしまった……!!」

ガラケーを握りしめながら訴える兄の顔は不安に曇っている。

どれ、見せてみなさいと手を伸ばす母に
「これなんじゃけど…」と渡す兄。
私は兄のただならぬ様子にビビりながら一緒に画面を覗いた。

見慣れた家の下の駐輪場で、カメラに向かってピースする笑顔のK本が写っている。
そんなK本君の真後ろに、大人の、男性のようなシルエットの白い影があった。
K本君を見下ろすような体勢をとっており、手はだらんと下に垂らしている。

やばい。

10歳の私ですらこれはヤバいやつだと変な汗をかいたのを覚えている。

当時のガラケーはカメラ機能が搭載されてそこまで年数が経っておらず、画質もあまり良く無かった。
そんな画質でさえも、しっかりと捉えたそのシルエットは偶然とは言い難いものだった。

これは一体何なんだ。

K本君は兄と同い年で12歳。謎のシルエットと12歳の少年の体格差がより不気味さを引き立てている。

なによりも覗き込んでいるような、見下ろすようなその体勢が気になった。

兄も私もひたすらに黙り込む。
母も「ふむ」と考えこんでおり、少しの沈黙が流れた。

母「ちょっと一緒にやろうか。」

なにを?と思いながらも母についていく。
母はおもむろにパソコンを起動させ、ガラケーから先程の写真のデータを取り込んだ。
プリンターの電源をつけた時点でまさかと思った。
心霊写真を印刷しだしたのだ。

A4サイズでカラー印刷される心霊写真。

ただでさえ荒い画質。
サイズが大きくなりK本くんの笑顔はモザイク画のようになっていた。
そんなA4サイズになった心霊写真。謎のシルエットも引き伸ばされてしまった。

一体何が始まったんだ。

兄も私も只々母を信じて見守るしかなかった。

母は印刷した心霊写真を片手に、キッチンの換気扇を最大風力でオンにした。
そしてシンクからでかめの中華鍋を取り出した。
当時我が家には本格的な中華鍋があり、母はよくそれでチャーハンを作ってくれていた。

そんなお世話になっていた中華鍋に、心霊写真が投入された。

まじかと思ったのも束の間、ライターで心霊写真を燃やしだす母。
火はそこまで大きくないものの、ちょっとづつ端から墨を形成しながら燃えていった。

メラメラと揺らめく炎を、母と、兄と、私は無言で眺めていた。
正直意味が分からなすぎてこの瞬間が一番怖かった。

見事な消し炭となったそれに、母はアジシオをふった。たぶん塩なら何でも良かったんだと思う。アジシオ、瓶だし使いやすいし。

母「これでもう大丈夫やから。」

なんか大丈夫な気がした。なんか知らんけど大丈夫な気がしてきた。
あまりにもダイナミックな除霊に、さっきまでの恐怖まで全て持っていかれたような感覚があった。

そういえばこの記事書いてて思い出したんだけどあの日K本くんどうしたんだっけ。写真見せずに別れたんかな。

ちょっと心配だったけどその後K本君に何か不幸があったとかいうことはなく、めっちゃ普通に平和な日々を送ってたっぽい。良かった。除霊が効いたんやわ。てかその後も私ら普通にチャーハン食べたと思うんだが。

このくらいの季節になるとふと思い出すダイナミック除霊の話でした。

うちの母は強い。

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